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2004年9月 6日 (月)

行政手続法

たっぷり遊ぶと、天から降りてくるように色々なことが脳みそに押し寄せる。

8月23日で締め切ってしまったが、総務省が「行政手続法」を改正するためのパブリックコメントを求めていた。「行政手続法」は1993年にできた法律で、行政が行うこと(=行政手続)のやり方を定めたもの。欧米に比べ20年近く遅れてできた上に、「計画策定手続」と「行政立法手続」のやり方についてはボッコリと抜け落ちた。いわばザル状態で成立した法律だ。そしてまた、情けないよくある話だが、これは、「日本政府のやり方がわからん」という「外圧」によってできたとも言える法律なのである。

私が参考書にしている『行政手続法』(兼子仁著、岩波新書)によれば、「ギョーセイシドー」があまりに不透明で参入できない、「貿易障壁」だとされて、ついに、1989年から始まった日米構造協議で、日本政府は「透明性及び公正性を確保」しろと報告書が出て、それに従った形だ。尻を叩かれて「行政指導」と「行政処分」という二分野をとにかく定めた。それが1993年。

【国民の参加】
本来、それと同等もしくはそれ以上に重要なのは、行政がやることへの「国民の参加」のための手続だったはずだった。なんせ、他の民主主義国家では、当然のように、ここ40年ほどすでに行われてきている。「参加なくして民主主義なし」なのだ。

ボッコリ抜け落ちた一つの「計画策定手続」とは、行政が何かを計画するときに、早い段階で、国民に知らせ、意見を募り、その意見を反映した上で、計画を決定する手続。まさしく、すべての公共事業に求められているもの。

もう一つ抜け落ちたのが「行政立法手続」。国会が作る法律(本当の「立法」)とは違い、行政が行政の裁量で細かいルール(政令とか省令などその他多数)を定める手続だ。定める時に、行政の密室で一方的に作って国民に押しつけるのではなく、国民に案を示して意見を募り、反映した上で策定するというやり方。(簡単にいえば、行政の独裁を許さないための手続。)

【ここまでの「計画策定手続」と「行政立法手続」】
「計画策定手続」は、1983年に学者グループ研究会が作った法律案の「一次要綱案」には盛り込まれていたのに、それをバッサリ取り外して成立した。そして、いわんこっちゃない、住民などの意見を踏みにじって進む公共事業に、総スカンを食うようになってきた。

一方、「行政立法手続」については、法律には定められなかったが、ついに、1999年(平成11年)3月23日の閣議決定で一部、形式的には行われるようになった。「パブコメ(パブリック・コメント)」と言われているのがそれだ。

これらを法律に入れて改正させることは、当然の流れなのだ。しかし…・

【そして2004年】
来年の通常国会での「行政手続法」改正を目的に開催されている検討会やその検討会の論点として公開され、パブリックコメントを総務省が求めているのは、「行政立法手続」の方がどうも中心になっている。

なぜかと思って、この動きの出所を探ってみると、外圧ではないのだが、「産業界」という内圧だった。「規制改革・民間開放推進3か年計画(平成16年3月19日閣議決定)」 で「行政手続法施行後10年間の運用状況を踏まえ、速やかに行政立法手続等を含めた行政手続法の見直しを行う」とされたから、検討会を開いて考えましょうという流れだ。2004年4月7日に第一回が開催され、11月までの予定。

【パブコメのパブコメ】
その結果、整理された検討会の論点を整理して、「行政立法手続」にパブコメを求めていた。パブコメのパブコメだ。

担当の総務省窓口に聞いてみると、締め切りまでに寄せられた「パブコメのパブコメ」は100件弱。その中には、本来、総務省に来るべきではない他の省庁が行っているパブコメに関する意見が3割ほど含まれているそうだ。これらを整理して、次回9月22日に開催される「検討会」で、すべて報告するとのこと。ただし非公開。議事録公開に代えるそうだ。(公開してもそんなに人は押し寄せないと思うからオープンにしちゃえばいいのにね)

「計画策定手続」の方は、検討会ではどうも重視されていない。
これは、良心の行政法学者や、市民団体の働きかけがなかった、もしくは、弱かったことを意味する。マスコミも勉強不足で、1993年以来、つついてこなかった。「政府を監視する力」が弱い国民性がもろに出てしまったのだなぁ、と自分を含め反省。

唐突だが、「行政監視能力」は小中学生の段階から身につけるべき能力かもしれない。小中学校で、「行政手続法」はどうあるべきなのか、議論(教育)して欲しいくらい。思考力が凝り固まってしまった大人たちに、キツキツの生活の中で「関心を持って」と声を涸らして叫ぶよりも、その方が早いような気がするから。今の教育改革で最も大切なことって、そんなことではないか。「税金の使われ方をしっかりと監視できる大人になるように」と。

とは言え、気づいた自分が何もしないで、そんなことばかりを言っていても、仕方がないので、私もギリギリ、締め切り日に以下のような意見を書いて、総務省に送った。

【参加のネックは時間?】
寝る前に、えいやっと書いた。意見を書くに要した時間は30分ほどだが、そのために総務省がサイトに出していた論点を読み込んだり参考書を読み返したりするのには、少なくとも5時間はかかっている。約6時間という時間が、法改正に対して意見を言うためにとれるかどうか。「参加」とは「時間」との闘いだ。

私は仕事や市民運動の一貫として、行政資料を読むことに慣れているし、現行法の問題にも遭遇しているから、読めばそれなりに分かるけれど、「一般の人が、さ~っと読んでも、こりゃ、分からないよな」と思う。エネルギーがあった、ある若い頃(苦笑)、ある法案について、こんな法改正がある、と市民団体のリーダー格やマスコミの論説クラス、一人ひとりに説明と喚起に回ったものだが、一生のうちに何度もあんなことできない。疲れが1、2年残ってしまう。。。NGO、行政法学者およびマスコミの方々の間で、来年の法改正までに、関心が広がっていくといいな、と思う。

★さて、自分の意見で締めくくる前に一言。なぜこの「行政手続法」の改正が、「ダム」と関係あるかは、次回以降に書きたいと思います。

【私が総務省に提出した意見】
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行政手続法の見直しについて意見

A.中身について

1行政手続法の「目的」について
行政手続への「国民の参加」を加えるべきだと思います。

2行政計画について

1) 行政が策定する計画について、国民の生命、財産、環境、および生態系など、現代社会および未来にわたって影響を及ぼす可能性のあるすべての計画を、国民参加で策定すべきであり、行政手続法の中に新たに、計画策定への国民参加手続を加えるべきです。

2) その際、最低でも、計画に関係するすべての情報、根拠データ、検討材料、代替案などを、早期に公開することが重要でしょう。

3) また、十分な期間(必要に応じて3ヶ月必要な場合もあるでしょう)を取り、意見募集を行い、応答し、反映し、意見対立などが激しい場合は、急いで計画を決定せず、さらに公聴会なども行い、関心をさらに掘り起こして、国民意見を出しきる、という決意が必要でしょう。なぜならば、後になって反対が噴出し、それでもゴリ押しをして進めるような、過去・現在にわたって行われている「ムダな公共事業」と言われるものを二度と繰り返してはならないからです。

4) また、行政計画の決定を行政処分とし、司法による行政計画の事前チェックを可能にすべきです。

3. 行政立法について
1) 法律の施行令、政令、省令、および、それらの中あるいはそれに関連して定められる、基準、審査基準など、現在、行政が裁量によって内部で策定しているものすべてを行政立法と見なし、行政手続への国民参加を行うべきです。

2) その際、それらの根拠となる、もしくは関連するすべての資料、データを公開すべきです。

3) 行政立法その策定過程で、国民の意見を募集し、反映し、応答し、意見対立の多いものについては、上記、行政計画について述べたように公聴会や説明会を行うべきです。いずれも、行政による応答義務を伴ったものとすべきです。

B.意見募集の仕方についての意見

・ 実際の意見募集は、「行政手続法の見直し」を目途にしているにもかかわらず、報道向けに書かれた意見募集のタイトルは「行政立法手続に関する意見募集」としており、報道関係者、そしてその先にいる一般国民をミスリードする(=意見の範囲を狭める)ことになりかねず、不適切です。本来であれば、1980年代に検討された際に「要綱案」で検討され、現在の行政手続法には定められなかった行政計画への国民的参加についても、検討材料として、もしくは、情報として掲載をすべきだったと思います。

・ 「事務の効率化」のためとして、「論点項目番号」に対応した形で意見を求めていますが、これもまた、行政側で用意した「論点」に沿った形で意見を述べさせることを誘導し、意見の対象範囲を狭めることになりかねず、意見募集の仕方として不適切です。

・ 行政改革への関心が、これまでに高まっている中、意見募集期間が、たった1ヶ月間というのは、短すぎると思います。

・ 今回の不十分な意見提出機会を補うためにも、説明会、公聴会を行うべきだと思います。

以上、最低限の意見の概略を述べさせていただきました。検討会の皆様にぜひ、ご配布ください。また、機会をいただければ、検討会の皆様に、お話をさせていただきたく思います。

よろしくお願い致します。

2004年8月23日
(住所:ここでは略)
政野淳子

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