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2004年9月20日 (月)

行政計画学会

行政計画学会なるものに行ってきました。10分間づつ話題提供をして1時間討論という形のシンポジウムに出ました。「都市と環境の合意形成―市民参加の新展開」というテーマで、司会の朝倉暁生・江戸川大学教授から「参加の保障」というキーワードでお話をと注文あり。

この学会で、「合意形成手法研究専門部会長」をしている原科幸彦・東京工業大学教授から、参加のレベルは5段階ある、というお話など。(5段階とは、1)情報提供、2)意見聴取、3)形だけの応答、4)意味ある応答、5)パートナーシップ。)

小泉秀樹・東京大学助教授から、都市計画・まちつくりという分野での市民参加の話。「フォーラム、アリーナ、コート」での市民参加がなされなければならないという話です。「フォーラム」とは住民が直接参加できる場。「アリーナ」とは議会(たとえば都市計画の場合、「都市計画審議会」が決定するが、審議会とは、専門家なのか、住民なのか、行政なのかウヤムヤ。決定の場は「議会」であるべきではないかという提起)。「コート」とは司法によるチェック。

この話は、後々、フロアとの討論の中で、司法が機能しないから、住民参加をおざなりにして計画が進むのが日本。だが司法が機能すれば、参加や合意が不十分であとで訴えられてコストや時間がかかって事業が止まるより、最初に情報とお金と時間をしっかり出して住民を参加させ、できるだけ合意レベルをあげて事業を進める方が経済的という話へと集約されていきました。

私からは、河川法改正で、「住民の意見を反映」させなければならないと、遅い段階(二段階目)ではあるが「参加の保障」がなされたはずが、問題あり、という話。1)一段階目での「参加の保障」がされるべく河川法を改正すべき。2)計画の基本となる「河川砂防技術基準」を、行政手続法の改正により官僚の裁量だけで決定されている現状を改善しなければならない。3)法はできたが、裁量の範囲で住民参加をさせないという「脱法行為」もある。例が木曽川水系。新河川法に基づく(環境と住民参加という視点をいれた)新しい計画づくりの前に、ダムが3つ消滅するような変更があった。「脱ダム」をしたければ情報を明らかにして民主的手続を踏むべき。

最後に行われた1時間の討論で、フロアからでた「情報の非対称」というキーワードなどから、参加の「場」が保障された後の話へと移っていきました。

参加のための「情報」と「コスト」の話です。小泉氏からは、例えば圏央道の例。「圏央道の是非をめぐり訴訟がありましたが、一般に交通関係のデータは市民が入手困難で、対案を提示したりすることも難しい」など情報提供不足の実態の話。

私は川辺川の例。熊本県の呼びかけで始まった県民討論集会では、住民が国交省の資料を開示させるのにわざわざ何十万ものおカネを払わなければ必要な情報が得られなかったという話。情報は最初から提供すべきもの、情報なしに参加はできないという話。

たとえば環境アセスでも、行政とは意見が対立する住民側がコンサルタントを雇うお金を、行政が出すくらいまでやらなければならないなど、情報とコストの非対称を埋める手だてが必要という話に自然とまとまっていきました。

会場には100人くらい学者の方々がいらっしゃったと思います。分かり切った話を単に整理しただけだったような気もして、帰り道で一緒になった初対面の参加者に「釈迦に説法だったと思うんですけど」と言うと、「大学の先生たちは現場を知らないから良かったですよ」と言われ、なるほどそうなのか、と思いました。

私は情報の「媒介者」でしかありません。百聞は一見に如かずで、ドンドン地域を飛び歩いて、理想と現実のギャップを知る学者さん達が増えて欲しい。(もし、まだそうでないならば)「それじゃぁ、おかしい」という健全な第三者の声をいっしょに太くしていって欲しい。「学会としても何ができるか」を考えているという声も聞かれ、今後に多いに期待したい!と思った日曜日の午後でした。

下記は、私が出したA4一枚のレジメです。(オマケ)


河川法での住民参加における課題
Issues of Public Participation prescribed in the River Law

ジャーナリスト 政野淳子

【住民意見反映の規定】 
 1997年河川法改正により、旧法では国土交通省(建設省)が決定していた「工事実施基本計画」を二段階に分け、1)河川管理者が「河川整備基本方針」を定める、2)河川管理者が河川整備基本方針に沿つて「河川整備計画」を定めるとなった。後者の河川整備計画では、「必要があると認めるときは、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない」(第16条の2)とされた。「必要があると認める」かどうかは、国土交通省の裁量や世論に委ねられることなどをはじめ、解決しなければならない課題がある。

【住民参加前に実質決定】
 第一の問題は、ダム建設や河川改修工事の根拠である「基本高水」「計画高水」などの事項が、河川整備基本方針の段階で、河川法施行令に基づいて決まってしまうことである。これにより、第二段階目で住民が意見を言えたとしても、あらゆる選択肢が有効で、住民意見の反映が実質的に可能かつ効果的な段階での住民参加を行うことは不可能である。

【経過措置】
 第二の問題は、新法に設けられた「経過措置」が続行している(新法で河川整備基本方針と河川整備計画が定められるまでは、工事実施基本計画をそれと見なす)ことである。一級河川だけをとっても、全109水系のうち新法によって改訂された河川はたった27水系(20003年11月)にとどまる。つまり、1997年以来、現在(2004年)に至るまで、未だに旧法に基づく河川事業が延々と行われ、新法で新たに加わった河川法の目的である「環境」保全の視点が抜け落ちている。同様に、ほとんどの河川で、住民意見の反映の機会が到来していないことを意味する。

【流域委員会の位置づけ】
 「河川整備基本方針」が未策定な段階で、各地の河川で、「流域委員会」が設置されているが、これは国土交通省によれば「河川法で規定されているものではございませんが、河川に関し学識経験を有する者の意見を聴く方法として○○流域委員会などの名称を用いて委員会形式により、効果的・効率的に意見を聴く場を設けている河川があります」(2004年7月参議院議員中村敦夫(当時)への提出資料)というものだ。
 実際には住民が参加している場合があるにも関わらず、それらが「住民の意見反映」の場でないとするならば、住民意見の反映とは何か、確固たる形が未だないことになる。一方で、こうした場で、本来、河川整備基本方針の段階で国交省が定める「基本高水」などの事項が議論されているケースもある。これは、ダム事業や河川改修事業などについて、事業の根幹に関わるデータに基づいた議論や、そこでの住民意見の反映が必要とされていることを証明するものである。

【課題】
 河川法の再改正により、河川整備基本方針策定の際、根拠データ・計算方法を検証可能な形で公開し、住民参加の上、その意見を反映させた上で決定していくことが必要である。

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