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2004年10月29日 (金)

破堤

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 地震や台風のたびに台湾の人々から「無事?」とメールが届くようになった。高雄市でプレゼンをやったときに、日本の山や川での台風被害を写真で見てもらったのだが、「台湾かと思った」という感想をもらったほど、その被害が似ているらしい。(写真は上から、植林が山崩れを起こした徳島県木沢村の山、豪雨で徳島県那賀川に流入し、川面を埋め尽くす木々、那賀川にかかる長安口ダムに流入した木 撮影は木頭村の田村好さん) 人間同じようなことを考えるもので、姫野雅義さんも、やはり講演の中で、同様に台風の写真を見せていた。そうそう、姫野さんも姫野雅義の吉野川日記を始めたので、ぜひ、ご覧あれ。

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 兵庫県の豊岡市がまるで熱帯の国が見舞われる洪水のようなコーヒー色の一面の水に被われているのを見て、気になっていたことがある。9月に国と都道府県とで行った堤防点検を行って「要対策箇所」とされた場所と、今回の破堤場所は、一致しているのかということだ。そろそろ、パニックを脱したころかと思い、問い合わせてみた。

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 すると、近畿地方整備局河川管理課は、今回破堤したのは2箇所で、それは9月に点検で「要対策箇所」とした14箇所とは別のところだったという。ただし、県が管理している区間については把握していないと言う。
 
 そこで、兵庫県の県土整備部土木局河川整備課にも聞いてみた。県が9月の時点で「要対策箇所」としたのは24箇所。それらは「従来から弱かったところ」だそうで、今回の破堤箇所とはやはりずれている。破堤は豊岡の地域だけで9箇所。うち8箇所は全く別の場所、1箇所は区間名は一致しているが同じ箇所かどうかは未確認だという。 

 9月の点検は、7月に新潟と福島で豪雨によって破堤して「甚大な被害」が発生したから『これから本格的な台風期を迎えるにあたり、堤防等の河川管理施設の状態を再度確認する』と指示を出して行ったものだ。それが意味をなさなかったことになる。(他の都道府県も、再点検が必要だ、ということも言えるだろう)
 
 「基本高水(洪水が起きたときの最大流量)」という数字をはじいて上流にダムを作ることで「治水対策」だと胸を張るのがこれまでの国のやり方だった。しかし、それとは別に、堤防がもたないというオソマツな結果を、残念ながら私たちは目にしている。

 新潟大学の大熊孝教授は以前からよく言っていた。「溢れさせる」「切れない堤防を作ることがもっと大事なのだ」と。実は、私がこの言葉を理解できるようになったのは、つい最近のことだ。破堤すると被害が一極集中するから、堤防を補強してジワジワと広範囲に溢れさせてリスクと被害を分散させるという考え方だ。その代わり、何十年かに一度、地域全体が床下浸水ぐらいを覚悟する住民側の意識改革も必要だと。破堤で一極集中被害が出たのを見て、「溢れさせる」の意味が分かってきた。

 「ダム神話」は崩れ去った。「堤防神話」も捨てなければならない。人工物で自然を押し込めることの限界、という欧米が経験したことを、犠牲を払って日本も学んだということになるのだろうか。

 大熊先生の言うように、「溢れても切れない堤防」による治水方法も、今よりはずっといい。でも、長い目で見れば、現在、めちゃくちゃなことになっている都市計画を、今後100年かけて見直していかなければならないのだと思う。何をすればそうなるのだろうか。少なくとも、住民の参加、なしにはこれもできない。

まさのあつこ atsukom@mrj.biglobe.ne.jp

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