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2004年10月29日 (金)

湖山水庫(ダム)

台北車窓.jpg

台湾二日目の10月16日(土)、宿泊先の華僑会館からバスでRWESAメンバーと共に南へ出発。写真は車窓から見える台北。
 
 
チョイ.jpg

途中の休憩で、韓国から参加したチョイさんに写真を撮らせてもらう。チョイさんはガンウォン県の県会議員。ダム反対運動が生んだ議員で、国が公開した過大な治水計画のウソを徹底的に叩き、下方修正させた実力派だ。彼の韓国語のTシャツには「ダムを壊そう!川を生かそう!」と書いてある。

【石門水庫(中国語ではダムは「水庫」と書く)】
台北から約1時間半、桃園にある石門ダムに到着。9月26日発行の台北タイムズによれば、石門ダムは、台湾北部の主要なダムの一つで、全国で三番目に大きい。9月から10月にかけて吹き荒れた台風Aereによる豪雨で2000万立米の土砂がダムに流入した。(おびただしい量だ!東京ドームの16杯分だ!)通常の年間堆砂量の14倍、過去41年で堆積した土砂の35.8%に相当するそうだ。 
 
水利署看板.jpg取水口がふさがり、桃園の都市用水は断水に見舞われた。洪水なのに断水という皮肉な現実がここにもある。台湾政府の経済部水利署(日本で言えば国土交通省河川局のようなものだろう)の最優先課題は、このダムの堆砂を取り除き、寿命を延ばすことだそうだ。現在は、ダム上流から水をくみ上げ大きなパイプで水を運んでいる。さらに上流にダムを造り直す計画も持ち上がっているとMPAメンバーから聞かされた。

15日に台北で会議が行われた時には、経済部水利署の陳伸賢署長も出席し、「部下がペーパーを用意してくれたが、今日は私の言葉で話します」と、ここ10年における台湾でのダムに対する人々の意識の変化、そして政府としてもダムを作ることによる環境への影響、つまりは「将来の結果」を無視してきたことを自己批判していた。

アビバ.jpg

ダムの写真は世界全国どこでも同じで退屈なので、石門ダムを背景に、インターナショナル・リバーズ・ネットワーク(IRN)のアビバに登場してもらおう。IRNはアメリカのサンフランシスコに本部を持つNPOで、彼女とは97年に一度会っている。オーストラリア出身で、その時にあったオーストラリア・アクセントが「ほとんど消えちゃってる!IRNはもう何年になる?」と聞くと「7年半。ほんの1年のつもりだったのに。終身刑になるとは思っていなかったわ」と冗談を飛ばしていた。

蒋介石.jpg

その対面、蒋介石の像がダムを見下ろす。国民党政権を民進党が取って代わってから、台湾は劇的な変化の真っ最中だ。
 
 
 
 
【湖山水庫】
呉さん.jpgお腹が減り、無言になり、皆がウトウトし始めた頃、到着したのが緑に囲まれたレストランだった。予期せず、雲林(ユンリン)野鳥の会や湖山ダム反対全国連盟の人々たちが拍手で迎えてくれた。迎えられた側は皆、寝ぼけ眼でビックリ。お腹が満たされた後、野鳥の会の呉世郷さんが、ダム計画、目的、影響などをパワーポイントで説明してくれた。

「では次に、学生たちが劇をお見せしますので外へ!」と呉さん(呉さんは環球技術學院の先生だ)が言うのを聞いて、聞き間違えたかと思ったらそうではなかった。学生たちは、海外から訪れた私たちのために、八色鳥を主役にした劇を準備してくれていたのだ。

どうしようかと.jpg

湖山ダムの予定地は、八色鳥(Fairy Pitta)の生息地だ。台湾に夏、南から渡ってくる渡り鳥で、野生生物保護法で絶滅危惧種に指定されている。それだけではない。台湾政府の農業委員会が雲林野鳥の会に委託して行った調査により、湖山ダム予定地は、世界で最も八色鳥の生息密度の高い地域だと分かったというのだ。

劇は中国語で行われたので、最初はワケが分からなかったのだが、どうやら、ダム計画が持ち上がって、大変だ、大変だ、と騒ぎになり、森の動物たちが集まって、「どうしたものか?」と相談するという筋だ。

公約.jpg

やがて、相談かまとまって、八色鳥が、12月の国会議員選挙に立候補することになる(実際に12月には台湾の国会議員選挙があるのだ)。八色鳥は大声で選挙運動を展開する。「私が議員になったら、湖山ダム建設を中止して、ダムに代わる代替案を提案します!」公約を読み上げる八色鳥、「え~い」と回りで盛り上がる動物たち。

投票用紙.jpg

最後に「八色鳥に清き一票を!」と呼びかける。台湾の選挙では実際に文字が読めない人でも投票しやすいようにと、写真が投票表紙に載るのだそうで、ちゃんと八色鳥の写真が載っている。おしまい。拍手。

あとでだんだんに分かっていったのだが、台湾の先生たちは、小学校から大学まで、実に、自分の信じるところを生徒たちも巻き込んで、社会運動をするのですね。いや、スゴイ。これぞ、教育です。

トラックがいい.jpg

「さぁ、じゃあ、ダム予定地へ出発!トラックと車を数台用意しています。女性は優先で乗用車へどうぞ!」と呉さんは叫んだのだが、外国から来た私たちはちょっとした冒険気分で「わ~い!」と男も女も皆、雪崩れをうって、我先にとトラックの荷台へダッシュ。写真を撮ったあと、私も(笑)。

まだ動かない.jpg

後で、イーティンが、ボソっとつぶやきました。「乗用車の方がいいと思ったのに、誰も乗らず、皆がトラックに乗ったので、『なぜ~???』と台湾人はショックを受けてイマス。」爆笑。

「さぁ、出発~」と皆はトラックが動き出すのを待ちますが…、「ん?動かない?」皆で、エンジンの押しがけを始めました。「それ~!」動かない。「それ~!」まだ動かない。どんどん遠くへ行ってしまいます。ところが諦めた途端。ブブ~ンとエンジン音が。

伏流.jpg

そんなワケで、山の中へと入っていきました。着いてびっくり、どんな川かと思ったら、足でまたいで渡れる程度です。伏流しているところは見ての通り、水がほとんどありません(左写真参照:皆は河床の上に立っている)。乾期だとはいえ、歩いて二歩で渡れる川にダムを作ることの非効率を考えると、八色鳥でなくたって首を傾げます。草の生え具合から見ても、雨期でも大して水がないことを物語っています。

経済部水利署長が「台湾の降雨は四季を通じて平均していない」と言ってはいたが、それなら、ダム以外の手段で水資源を確保した方がより経済的ではないかと、一見して思わざるを得ませんでした。

水が少ない.jpg

呉さんからは地盤が悪いという説明がありました。海外から来た面々は皆、それぞれ、自国でどんな場所がダムに狙われるのかを思い出して息混じりです。しかし、だからこそ、「国境を越えて知恵を集めていっしょに連携しよう」とRWESAのファシリテーターのジョアンが呉さんにエールを送り、

ダムにNO.jpg

最後は皆で、「ダムにNO~」と腕をバッテンのポーズで決めました。
 
 
報告は続きます(To be contitued)
 
 
まさのあつこ atsukom@mrj.biglobe.ne.jp

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