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2004年11月 6日 (土)

ダム問題ダイジェスト

 全国各地から小豆島に集まった人々の報告から、ダイジェストを作ってみました。

茂吉さん.jpg

●川辺川ダム事業(熊本県)
 03年5月、川辺川利水訴訟で農家が農水省に勝訴。違法事業であると裁きが下された農水省は、現在、新・利水計画を模索中。「ダム案」と「非ダム案」で農家にアンケートを取ろううとしている。ところが、農水省は「ダム案」については市町村補助で農家の負担を軽くしようとしている。原告側は「非ダム案」を推進し、「どちらの案でも農家の負担は同じにすべきだ」と原告副団長の茂吉隆典さん(ピンぼけすいません)。詳しくは例えばココ

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● 山鳥坂ダム事業(愛媛県)
 04年3月に閉じた肱川流域委員会で、国交省は住民参加を認めなかった。5月、山鳥坂ダム建設を含む新しい河川整備計画を、河川基本方針の決定からわずか半年でスピード決定。その後も、市民グループは住民討論会を求め、出前講座や説明会などが実現した。しかし「国交省は質問にまともに答えない」と有友正本さん。焦点は基本高水。詳しくは、山鳥坂ダム建設の中止を求めるHP ヒジカワドットコム 

★解説★97年の河川法改正で、建設省(当時)は、「ダム事業など大規模な事業を伴う場合は、河川整備計画策定時(第16条の2)に、住民参加をさせる」と繰り返していました。それすら徹底されていない。国交省の時計は、反時計回りしていました。

● 内海(うちのみ)ダム事業(香川県)
「3年前に7人で運動を始め、全国集会を開催できるほど盛り上がってきた」と報告をしたのは、85歳になられる「内海ダム再開発事業と国立公園寒霞渓の自然を考える会」の櫛本いとヱさん。(前々号をご参照ください)

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● 苫田(とまた)ダム事業(岡山県)
 ダムそのものは完成し、来年から本格運用の予定だが、前倒しで年内に完成式が行われるという。土地収用を巡る裁判がいまだ展開中。「これからも理不尽さを訴えていく闘いをやっていく」と橋本省吾さん。(水没予定地に生まれ育った友人がいるため、私(まさの)にとっても個人的な思い入れがある。)

田村.jpg

● 細川内(ほそごうち)ダム事業(徳島県)
 「細川内ダムは、前木頭村長・藤田恵氏を先頭に、完全中止になりましたが油断ができない。というのも、五ヵ町村合併により、『ダム建設阻止条例』を破棄することになりかねない。だが、なんとしてもこれだけは確保しておかねばならない」と、「条例」という村の財産を訴えたのは、木頭村の田村好さん。木頭村の公式ウェブサイトはもちろんあるのですが、村長が変わってから、だんだん寂しいサイトに…。頑張れ、脱ダム日本一の村!

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● 徳山ダム事業(岐阜県)
 木曽川水系は水余り状態で長良川河口堰が建設・運用され、さらに徳山ダムも建設。03年、1010億円増額を水資源機構が打ち出したところ、自治体がさすがに反発。フルプラン改定に至る。しかし、新河川法による河川基本方針も整備計画策定の手続も飛ばして、利水ダムが治水ダムに化けた。「脱法行為だ」と訴えたのは近藤ゆり子さん(ピンぼけ失礼!)。

太田川.jpg

● 太田川ダム事業(静岡県)
 「知らぬ間に流域委員会がつくられた」とグループ太田川水未来の岡本尚さん。参加したいと申し入れたが、委員長からは「固まっている各種の計画の当否を検討する会ではない」「ダムは存在しているものと仮定」して太田川の河川整備計画案について意見をもらう会だと断られてしまったという。17名の委員のうち、河川についての学識経験者は2名、川に関する市民団体の代表が2名。その他の住民参加はなし。
 (感想:あえて詳細しませんが、強いエネルギーを感じる報告でした。)

★ 解説★河川法において「住民参加」と言えるものは、その16条の2で、「河川管理者は、(略)必要があると認めるときは、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない」とされているところのみです。その書き方は漠然としています。ただし、「公聴会の開催等」の「等」には無限大の可能性があり、「関係住民」もまた、岡本さんたちのように関心がある住民すべてを含めることも、行政の裁量の範囲、という意味では無限の可能性を秘めています。太田川の流域委員会の委員長は、法律が読めない人、もしくは読んだことのない人、もしくは、その理念や意味を理解できなかった人、もしくは自分の頭で「民主主義」の意味を考えることができず、行政事務局に従うだけの人だったのでしょう。この意味で、現時点において、法が定めた理念に「最も近い」とされているのは、淀川水系流域委員会の例(問題、課題はありつつも。ここも全国からの注目が必要な、あやうい正念場を迎えています)です。しかし、全国で、「等」や「関係住民」の幅は、「狭く狭く」解釈されているのが実態です。

★ 解説★この日記は河川法を「改正しようヨ」と訴えてはいますが、それ以前に現行法が適切に運用されていないという点にも気に留めておいてください。それこそが現行法の限界であり、だからこそ、97年に(今よりももっと無知なりに私も含め)コツコツと作業をして、市民団体として改正対案骨子を作り、野党から議員立法で国会に提出してもらった所以です(野党案も理想からは少し離れてしまったのですが)。
 「やっぱりね」と言いたくはないですが、1,河川管理者(国や都道府県)が基本方針を定め、2,二段階目で、必要だと河川管理者が思えば、住民参加をさせて整備計画を策定、という中途半端な、曖昧な住民参加条項では、ダメでしたね。「解釈」の幅が広すぎて、行政の思いのままになされる河川行政では、以前と何も変わりません。

★感想★ 
 台湾の国際会議に、日本の国土交通大臣か事務次官かという立場の政府高官トップが呼ばれて出席したように、こうした集会に、せめて河川局長が顔を出す力を、日本の市民団体がつけていかなければと思います。

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● 辰巳ダム事業(石川県)
「犀川の基本方針と整備計画は、御用学者によってつくられた」とナギの会の渡辺寛さん。「基本高水を下げさせたり、規模を縮小させたり、辰巳用水取水口を守ったり、成果は上げてきた。だが、一連の豪雨をきっかけに、犀川の堤防・河道整備を行政が40年に渡り怠ってきたことが判明した」と報告。

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● 奥胎内ダム事業(新潟県)
 「新潟では大水害があったが、ダムを造ってくれという話には結びついていません。逆に、ダムがあったのに大水害が起きたことで、ダムに責任を帰する声が大きい」と「奥胎内ダムを考える会」代表の三橋允子さん(またまたピンぼけごめんなさい)。「奥胎内ダムについては、基本高水が過大に設定されています。ダムの代わりとして、堤防・河道整備を訴えていきたい」と。

八ッ場03.jpg

● 八ッ場(やんば)ダム事業(群馬県)
 「昨年の今ごろまでダムのことを知らなかった」と話す「八ッ場ダムをストップさせる東京の会」の田中清子さんは、「東京都は、事業費の倍増を真っ先に受入れました。住民監査請求を進めてきたが、東京都監査委員会はこれを門前払いし、多くの市民が怒っている。これからも輪を広げてストップさせたい」。
 一方、八ッ場ダムのご当地である群馬県から来た「八ッ場ダムを考える会」の真下淑恵さんは、「市民の関心を高めるため、多くの人々に水没地を見てもらう活動や集会などを実施しています。利根川下流の人々とも連携していきたい」と。
 04年12月5日は、八ッ場ダム住民訴訟スタート集会pdf形式)です。

 総会では、この3分間報告の後に、マイク奪い合いの、ケンケンガクガクの討議が行われ、その論点は、おおよそ次のように集約されました。

1.想定規模を超えた豪雨に対して、ダムは無力どころか、大きな災害をもたらした。
2.台風や集中豪雨による災害は、ダムに依存し、河道整備を遅らせたことに起因する。
3.森林の荒廃は、保水力の低下をもたらし、流木による被害を拡大した。
4.欠陥のある堤防が各地に存在し、それが破堤を引き起こし、甚大な被害をもたらした。

 一見、各地で起きた水害ショックの直後ならではの討論のように見えます。しかし、これらは皆、これまでの河川・森林行政のツケであり、過去の河川・森林行政の結果なのだとも言えるのではないかと思いました。「治山治水」(山を治めるものが水を治める)という先人達の言葉が、妙に重く感じる年ではなかったでしょうか。

 次回は、一端、台湾報告に戻りたいと思います。

まさのあつこ atsukom@mrj.biglobe.ne.jp

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