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2005年3月 6日 (日)

脱ダム後の処理

 昨年末、「自治創造研究会」代表の横田昌三さんから、「ダムが中止された後、どのようなことになっているのか、会で発行しているニュースレター「地域と政策」に書いてくれないか」と依頼がありました。
 「地域と政策」の宣伝を兼ね、サンプルとしてその原稿を載せさせて欲しいと頼んだところ、了解をいただきました。連絡先など文末に掲載します。

 以下、自治創研レター「地域と政策」(2005.1)掲載の原稿まるごとです。

脱ダムを考える-中止後の処理
            まさのあつこ/ジャーナリスト

 長良川河口堰が閉まった1995年以後、自然破壊と税金のムダ遣いへの批判は燃えさかった。これが97年、環境保全や住民参加という概念を取り入れた河川法改正やダム事業を含めた公共事業見直しにつながった。ダム等事業審議委員会(95年)、ダム総点検 (97年)、公共事業の再評価制度(99年)、与党三党の中止勧告(00年)と見直しは進み、年間予算も97年に6590億円だったダム予算が04年には3800億円と4割減少した。ダム中止はもはや珍事でない(表1参照)。
 ところが、中止後について定めた制度を国は持たない。そのため、各自治体が独自に試行錯誤を重ねている。以下に多くの事例の中から大分、長野、鳥取の例を挙げてみる。

表1 中止ダム事業の数
1997年  3 事業
1999年  4 事業
2001年 32 事業
2002年  3 事業
2003年 12 事業
2004年  6 事業
計 64 事業
生活貯水池(総貯水容量 100万m3未満)を含めると中止は94事業

大野町が主導した大分(矢田ダム)
 00年11月、大分県大野町に予定されていた矢田ダムが中止。その際、大野町は、水没予定地域から上がった県道の拡幅など68項目を、県と国に要望した。総務課によれば、その後、国からは行政事業費として72年の計画以来にダム対策に費やした職員などの給与分2億6千万円が、県からは「矢田ダム対策費」として2億1千万円が支払われた。前者と後者の1億円を足し、3億6千万円の基金で、町が主体で68項目達成を目指している。

ハードランディングの長野(下諏訪ダム、浅川ダム)
 政争の具になってしまったケースが長野だ。脱ダム宣言に伴う下諏訪ダムの中止に際し、知事はダムを止めても予定通りに土地買収を行うことを一人の地権者に確約し、その約9600万円の予算案を議会に提出。ところが議会は、予算案からその全額を削除。地権者は、買収費で買う予定だった代替地の購入契約の違約金(約680万円)と手付け金分を県に損害賠償。県がそれに応じて決着した。一方、議会は浅川ダムの請負業者への損害賠償費は、00年度に約3300万円、01年度に約1400万円を認めた。

リーディングケースの鳥取(中部ダム)
  「ダム建設140億円、河川改修147億円、だからダムの方がお得」と説明した県職員に「今正直に言えば過去は問わない」と迫り、結局、河川改修78億円という本音を吐かせて中部ダムを中止した鳥取県知事。この止めっぷりにも増して見事なのは、ダム中止後の影響住民への配慮だ。自らを会長として「旧中部ダム予定地域振興協議会」を00年8月から現在まで11回にわたり開催。三朝町長、県土整備部長、三朝町助役をメンバーとしたトップ会談だが、職員が県と当該地域を行き来しながら、住民の意見を吸い上げ振興計画を作成。注目を集めたのは、186億円を投入した振興計画に、住宅の新改築に上限300万円、バリアフリー化に80万円、新築時の利子補給に60万円など(06年までに40戸が利用の予定)、日本で初めての個人に対する補償も含まれていたことだ。

補助金返還を巡るデマ 
 県営事業については、国への補助金返還で県財政がつぶれるとデマが飛んだ自治体もある。03年4月に国交省が「公共事業再評価など手続を踏んで中断した場合は返還を求めることはない」と通知してこの問題は決着。しかし、影響住民への補償や迷惑料、生活再建については、地域の実状に合わせ、自治体(及び議会)が主導で動かなければ対応が不可能だ。ダムは止まっても見返りなど要らないとする地域や住民もいる。また、「ダム計画中止後の生活再建支援法案」(PDFファイル)が市民立法の形で、市民団体「水源開発問題全国連絡会」からは提案されている。
 ダムに限らず、大型公共事業の見直しの時代、自治体と国の補助金返還を巡るルールしかないのはなんとも心許ない。地域インフラから個人生活に及んだ犠牲に対し、後処理をどうするか、議論を活発化させ、早急に政策判断を行わねばならないのが、これからの自治体であり国であり、議会である。

参照:鳥取県「旧中部ダム予定地域振興課ホームページ」
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 この記事の後、「参考」として、文中に出てくる水源開発問題全国連絡会の「ダム計画中止後の生活再建支援法案」(PDFファイル)が編集部により紹介されています。
 というわけで、ニューズレター「地域と政策」(年間購読料1000円(送料込))は、自治体関係者を対象としたニューズレターです。お問い合せは、03-3592-8345社民党政策審議会気付、自治創研、横田昌三さんへ。
 ちなみに、上記の市民立法案は、清津川ダム計画(すでに中止決定済み)の水没予定地だった住民により参考にされ、自治体への要望として提出されています。

まさのあつこ atsukom@mrj.biglobe.ne.jp

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