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2005年10月23日 (日)

利根川・淀川・吉野川と、河川整備基本方針

 昨年7月~12月にかけ何カ所かで、たとえば、「青の革命と水のガバナンス」研究会で、「いま何故、河川法再改正か」 (パワーポイントファイル)などを発表してから1年が過ぎた。97年の改正以来、いまだに109水系のうち29水系(04年9月時点)しか、新河川法に基づいた河川整備基本方針が策定されていないなどの批判を行った。どちらの会場にも国交省の方が現れ、議論もしたので、この批判はやがて担当者のところへ届くだろうとは思った。

 周辺取材で、今年になって国土交通大臣が「早く策定せよ」という命令を出したことが分かった。一定の成果が出たと考えたいところだった。しかし、「質」が悪すぎた。

 たとえば、徳島県の吉野川。
 住民投票、徳島市長や徳島県知事の意思表明などをはじめとして、川に対する考え方が、この地域ではこの10年でまったく変わったことが明らかであるにもかかわらず、その「質」の変化をまったく反映しない形で、河川整備基本方針の策定手続が進んでいるのだ。

 オソマツな手続がうまく説明されている報告を見つけたので、以下、水源開発問題全国連絡会の共同代表嶋津暉之さんの許可をいただき転載します。

利根川水系や淀川水系などの
河川整備基本方針を急ピッチで策定する動き
                        

水源開発問題全国連絡会事務局

社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会

 全国の一級水系109水系のうち、今までに策定された河川整備基本方針は10月14日現在で32水系ですが、国土交通省は2007年度までに基本的にすべての水系について河川整備基本方針を策定する方針を打ち出し、利根川水系や淀川水系などの河川整備基本方針を急ピッチで策定する動きをはじめました。

 といっても、河川整備基本方針の内容は旧河川法時代につくられた工事実施基本計画をほとんどそのまま踏襲するものですから、大変なエネルギーをかけないと出来上がらないというような代物ではありません。社会資本整備審議会にかけるという手続きを経なければならないだけのことです。本来は新河川法の理念に基づいて、すなわち、環境のことにも配慮して治水計画などを根本から再構築することに河川整備基本方針策定の意義があったはずですが、そのような意義などはどこかに飛んでいってしまいました。

 各水系の河川整備基本方針を審議するのは、長ったらしい名の「社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会」です。

 10月3日、12日には利根川水系と淀川水系についての小委員会が開かれました。その前の9月26日に開かれた小委員会は吉野川水系と常願寺川水系(富山)が議題で、基本方針案をそのまま了承しました。吉野川と常願寺川の委員会はたった2回開かれただけでした。利根川水系と淀川水系も似たようなもので、10月3日は治水、12日は利水と環境をテーマとし、あと1~2回で終わるような雰囲気で進んでいます。

 10月3日、12日の小委員会は利根川、淀川についてそれぞれ1時間、計2時間という委員会でした。3日、12日とも、40分程度、事務局(布村河川計画課長)が説明し、残りの時間は委員のうち、地元委員(知事代理や一部の市長等)が要望のような意見を述べ、あとは専門家としての委員数人が意見を述べて終わりでした。意見に対する事務局の答えは3回目にまとめて行うということでした。とくかく急ピッチの委員会であって、利根川と淀川という日本で有数の大河川を本当に短い時間で、おそらく全部で3~4回の委員会で審議したことにしてしまおうというのですから、無茶苦茶なやり方です。

 この委員会は一応傍聴可能となっているのですが、そのスペースが確保されていないので、3日の委員会では6人の傍聴を強引に認めさせたものの、そのうち、3人は立ち見となりました。

従前の数字と変わらない、河川整備基本方針の基本高水流量

 河川整備基本方針において最も重要な点は、基本高水流量(○○○年に1回の最大洪水流量)の設定にあります。工事実施基本計画では基本高水流量を現実性のない過大な値に設定し、それによってダム建設の必要性をつくりあげてきました。工事実施基本計画の多くは30~40年前に策定されたもので、観測データ数が少なく、計算手法として相応しくないものも含まれていました。その後、観測データがかなり蓄積されてきたのですから、河川整備基本方針の策定にあたっては科学的に基本高水流量を計算し直すことが期待されていました。そうすれば、多くの河川では基本高水流量はぐっと小さな値になるはずです。

 ところが、国土交通省は、30~40年前に決めた工事実施基本計画の基本高水流量をそのまま踏襲するという方針をひそかにきめ、従前の基本高水流量は妥当であるという一応の根拠を出して、基本高水問題を終わらせるようになりました。国土交通省が示した根拠とは、流量確率法と既往最大流量による検証です。

 流量確率法とは、毎年の最大実績流量から統計手法で直接、○○○年に1回の最大洪水流量を求める方法です。それに対して、従来の手法は、まず○○○年に1回の最大雨量を求めてその雨量から流出モデルを使って○○○年に1回洪水流量を求めるやり方で、雨量確率法といわれているものですが、この計算手法は計算者の判断要素がいくつも入るところがあるため、恣意的に数字を大きくすることが可能でした。それに対して、流量確率法はもっぱら統計計算ですから、本来は客観性のあるものです。しかし、国土交通省の○○知恵というべきでしょうが、実績流量として観測流量を使わずに、別の数字を使って流量確率計算を行うというテクニックを弄するようになりました。すなわち、観測流量には氾濫流量やダム調節量が入っていないということで、それらを加算したものなどを使うようになったのです。氾濫流量などは適当に膨らませることができますから、実績流量を大きくすることができます。その他に統計手法として大きな値が算出されることが最初から分かっている、相応しくない手法もわざわざ入れるようにしています。また、既往最大流量の方は随分昔のことですから、適当に数字を膨らませることができます。

 利根川と淀川については基本方針の案そのものはまだ提案されていませんが、3日の会議資料には次の計算結果が示されていました。

 利根川の八斗島地点の基本高水流量 22,000m3/秒について
   流量確率法による検証 20,200~30,300m3/秒
   既往洪水による検証 1947年洪水 22,000m3/秒     
   検証の結果 基本高水流量は妥当
 淀川の枚方地点の基本高水流量 17,000m3/秒について
   流量確率法による検証 13,200~17,600m3/秒
   既往洪水による検証 1885年洪水 17,000m3/秒  1802年洪水 22,000m3/秒     
   検証の結果 基本高水流量は妥当

 流量確率法と既往最大流量による検証を行った結果、従前の基本高水流量は妥当だという結論です。しかし。利根川については八ッ場ダム裁判の関係で住民側は同様な検証を行っていて、22,000m3/秒が非常に過大であることを明らかにしてきています。ところが、国土交通省の検証では同様の手法を使いながら、22,000m3/秒が妥当だということになってしまうのです。数字の操作によるものです。

セレモニーとしての社会資本整備審議会の小委員会

 基本的な数字は工事実施基本計画とほとんど何も変わらないのですから、河川整備基本方針を策定するといっても、従前の工事実施基本計画のうち、河川整備計画に書くべきことを抜いて、その表紙を取り替え、「河川整備基本方針」という表紙をあらたにつけるだけのものです。

 そして、たいそうに社会資本整備審議会の小委員会で審議するといっても、短時間の会議を数回開いておしまいというものです。小委員会の構成は、専門家としての委員が約20名、地元代表的な委員(市長等)が数名、あとは各都道府県知事ということで合わせて30名強というところですが、専門家の意見は理解の浅いものが多く、科学的な審議など、とても期待できるような構成ではありません。セレモニーとしての委員会なのです。
 
 河川整備の基本となるべきものが全く形式的な手続きを踏むだけで、セレモニーとしての委員会を通過するだけで、決定されていくのは本当に腹立たしい限りです。

 セレモニーだけの審議に終わらせないようにするためには、大勢の市民が押しかけて審議の様子を監視するとともに、市民からの意見書を委員会にどしどし出していく必要があります。現実の委員会は傍聴可能になっているとはいえ、傍聴席がほんの少ししか用意されておらず、また、意見書を出しても受け付けるかどうかも分からない状況です。そのような状況に風穴をあけるためにも、委員会の傍聴に大勢の市民が押しかけて、真に開かれた委員会にすることを求め続けていくことが必要です。是非、皆様も委員会の傍聴にご参加ください。

 また、上述のように、国土交通省は数字の操作で「従前の基本高水流量は妥当である」という根拠を出してきています。その計算のカラクリが明らかにするため、事務局では情報公開法により、各地方整備局に対して計算の元データの開示を求めました。

 なお、河川整備基本方針は長期的な方向を示すものであって、ダム等の具体的なものに踏み込むものではありません。ダム等の具体的な内容を記す河川整備計画の段階で私たちは何としてもダム等の記載に対抗していかなければなりませんが、その前哨戦として、河川整備基本方針の策定に対しても私たちはできるだけの対抗措置をとっていかなければなりません。

以上、水源連だより(2005年10月20日発行)から転載終わり。

まさのあつこ atsukom@mrj.biglobe.ne.jp

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