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2005年12月 9日 (金)

判例の積み重ね(米国のお話)

 12月3日に行われた日弁連、近弁連、大弁連主催の「河川管理と住民参加」のシンポは圧巻でした。2つの日本の最新の訴訟に関連づけて、まずは、米国から来日したディビッド・L・ウェグナー氏(以前は内務省開墾局のエンジニアだった方)に聞いた話などを続けてレポートできればと思います。「アメリカにおける環境法の進化とその日本への適用」という題目での特別報告でしたが、ここでは米環境法史についてはすっ飛ばし、私が学んだポイントを3つ整理します。
 以下、太字はウェグナー氏の論点、それ以外は私の意見・解釈です。

1.米国では、環境訴訟は二つ面から行われるようになった
 プロセス違反(手順や手続)
 テクニカル違反(適切な科学にもとづいているかどうか)

日本では、「プロセス違反」については、川辺川利水訴訟や永源寺第二2ダムのように当然の判決が出始めた。が、テクニカルな違法性という側面からは、常に「政策判断の範囲」などとして門前払いを食ってきた歴史が長く、小田急線連続立体交差事業のような「テクニカル違反」の範疇に入るもので勝てたのは、ほとんど初めてではないでしょうか?

2.米国の環境訴訟にとっても重要な意味を持つ法律が2つできた
・NEPA(National Environmental Policy Act 1969)とそれを補足する州法
・種の保存法(Endangered Species Act 1973)

 NEPA(国家環境政策法)は、日本で言えば約30年遅れてできた環境アセスメント法を含む法律ですが、大きく違うのは、日本は事業を前提として行うものであるのに対し、米国のNEPAでは、事業をやらない選択肢も入れた環境影響評価が行われます。

 「以前は政府だけが、事業の決定に関わることができた。しかし、1969年のNEPAの成立によって、誰もが参加することができるようになった」とウェグナー氏は言いました。
 
 日本でも、環境、社会、経済的な側面も考慮に入れた選択肢を評価できる制度に改正していかねばなりませんね。大きな課題です。

3.次々と成立し、進化した環境法を使って、今次々とLegal Review(法的な精査=つまり環境訴訟)を行っている。例えば、グレンキャニオン保護法ができ、1996年に、それに加えてNEPA、種の保存法によって精査して裁判に持ち込み、政府の意に反して、グレンキャニオンダム撤去につながった。

グレンキャニオン他3つの事例を上げてこのことを説明されました。Legal Review(法的な精査)というのが、イマイチ、講演では理解できなかったので、休憩時間に、さささっと近寄っていって、「法的な精査って誰がどうやってやっているんですか?」と聞きました。

ウェグナー「環境弁護士だよ。彼らが法廷に持ち込むんだ」
まさの「でもどうやったら、彼らは原告適格を得るの?」
ウェグナー「まず、弁護士資格を取る」
まさの「(うっ、と思いつつ)はいはい。それから?原告適格が必要でしょう?どうやって原告適格を確立するの?」
ウェグナー「種の保存法やNEPAとにらめっこ(詳しく読む)するんだよ。何が適用できるかと」
まさの「はぁ。でも、古いプロジェクトに対して、新しい法律が適用されるの?」
ウェグナー「イェース!」
まさの「日本じゃ考えられない!」
ウェグナー「今日も講演した通り、米国だって長い歴史があったのさ。一晩でできたわけじゃないって言ったでしょう?」
まさの「日本では、原告適格を確保したつもりで、裁判に持ち込むことができても、すぐに棄却されたりするけど、米国ではどう?」
ウェグナー「米国でも最初はそうだったよ。判例を重ねて重ねてここまで来たのさ」
まさの「今日は4つの事例を挙げられていたけど、それで全部ですか?」
ウェグナー「もっともっとやっているよ。今日挙げたのは日本の人が関心を持つかと思ったほんの一部さ」

ということで、海外の事例報告は、制度があまりに違い過ぎるので、普通はあまり期待せず、この報告に対しても内心、最初はまったく期待していませんでした。でも、ウェグナー氏が講演した中で、この3つが自分の頭の中で整理できたことによって、日本で今後、こと「環境法」を考えた場合に、何をしなければならないかということが、すっきりと見えてきたので、たいへん、たいへん、有意義でした。

これは、このシンポジウムのほんのさわりです。
さて、本日から週末にかけて時間が取れないので、この続きは来週になるかもしれません。

まさのあつこ atsukom@mrj.biglobe.ne.jp
ViVa!(ビバ!)はこちら

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コメント

こんにちは。関連の読み物です。

■「ダム撤去」国際シンポ@八代市に参加してきました・その1(2004年04月12日)
http://www.viva.ne.jp/library/scramble/archives/2004/04/post_4.html

■「ダム撤去」国際シンポ@八代市に参加してきました・その2(2004年04月28日)
http://www.viva.ne.jp/library/scramble/archives/2004/04/post_3.html

投稿: ごとう | 2005年12月11日 (日) 22時43分

後藤様 ありがとうございます

投稿: まさの | 2005年12月14日 (水) 00時17分

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