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2006年4月28日 (金)

社会をつつむ意識

日本という国は、なんだろうな、と思うときがある。国を良い方向へ動かすにはいろいろな方法があるので、いろいろな方法を試してみている。河川のことに限らず、ご縁あっていろいろなことをこの10年、あの手この手でやってみた。そして人を見てきた。

個人として伝える→ジャーナリストとして伝える→行政に訴える→国会を通じて訴えると一通り全部試し(やったことがないのは司法を使うことだけ)、最も効果があると確信したのは、「個人として腰をすえて訴え続ける」ということだった。

確かに、マスコミが取り上げるインパクトはデカイ、国会が行政を監視する力もデカイ。だが、この国が法治国家としてその法を運営し、本当のところ、現状で、内閣や内閣法を動かす力を持つ行政を動かす力としては、一時的にマスコミや国会が盛り上がることでは不十分だった。

短期的な効果を狙って「盛り上げること」(これは大事なことではあるが、小手先の効果は小手先の持続性しかない)だけではダメで、あくまでそこに「個人として腰をすえて訴え続ける」人がいるかいないかで、本当に本質的に、この国の「社会」や「文化」、「社会文化」が動くかどうかが決まってくる。長い時間がかかる。

「個人として腰をすえて訴える」効果は、しかし、自分が成し遂げたことにはなりえない。問題を感じている人々がつながっていって、ものの考え方に影響しあい、その中にマスコミも行政も国会も司法もが、結果として「個人個人の感覚」に巻き込まれていき、全部がすっぽりとその雰囲気に収まっていったときに、社会が変わる。

だから、正しいと信じることを言っていればいい。世の中には、自分が生きている間に間に合わない変化は沢山ある。時々、間に合う変化が起きる。最近、その一つに遭遇した。「日本で不妊治療を受けるということ」(岩波書店)を書いたとき、不妊治療そのものに目を向けてもらいたくて、自分の中では大きかった事件はサラリと書いた。

体外受精のために採卵をしてもらったあとで、「事実婚」では卵を戻せない、戻して欲しくば、「法律婚」をしてこいといわれた。人質ならぬ卵質だった。命の方が紙の記録よりも重要なので、争うこともなく「法律婚」をし、命が絶えたときに「事実婚」の事実と理屈を自分に取り戻した。

その後で、なぜ、「事実婚」ではいけなかったのかを、そのルールを規定する者に問い、その「理屈」はおかしいと本の中で訴えた。しかし、新聞や雑誌などで本の紹介をされる上では、このことに焦点をあてないで欲しいとお願いをした。本の中ですら「事実婚」を取り戻したことには触れなかったぐらいだ。

不妊に悩む人と、事実婚の実践で苦労をする人の数を比べたとき、不妊に悩む人の数の方が圧倒的に多いと思った。

「事実婚」という観点から騒ぎ過ぎれば、そちらに人の目がいって、「不妊治療」を受ける女性のはかない気持ち(他から見れば取るに足らない些細な気持ち)に光があたらなくなると思った。でも、書いておきさえすれば、きっと伝わると願っていた。すぐに変えられるとは思わなかった。

でも、変わった。2006418日の日本産婦人科学会の理事会を経て、22日の総会で、事実上、事実婚カップルでも体外受精ができることになった。「誰か」が変えたわけではない。問題を感じている人々がつながって、社会がその中に収まったのだ。

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コメント

まさのさま、こんにちは。 「たんぽぽ」です。
わたしのウェブログにコメント、ありがとうございます。

塩尻の記事のご紹介、どうもありがとうございます。
(事実婚夫婦からの問い合わせはなくても、
適用範囲を広げておく、というのが、先見的ですねえ...)

住民票の「未届け」もそうだったし、不妊治療助成をする自治体も、
きっとどんどん、広がっていくことと思います。
(わたしに言わせれば、わざわざ治療を受けてでも、
子どもを持とうというのですから、生半可な気持ちのはずはなく、
助成を拒むことは、まったくないと思いますが。)

投稿: たんぽぽ | 2006年6月20日 (火) 23時19分

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これも、4月24日のニュースなので、 思いっきり時期を過ぎたお話で、とても恐縮なんだけど、 民法改正の関連としては、大きなニュースなので... 「事実婚カップルへの体外受精を日本産科婦人科学会が容認」 これまでは、体外受精のような高度な不妊治療は、 戸籍上の夫婦..... [続きを読む]

受信: 2006年6月15日 (木) 13時27分

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産科婦人科学会は、かなり法律婚主義が強いもののようです。 前にもお話したように、法的権利の不安定さなどから、 「婚外子の誕生を公式に容認するわけにはいかない」として、 事実婚夫婦の体外受精を、お断わりする理由にしてきたのでした。 今回の改訂後も「事実婚を認め..... [続きを読む]

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