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2006年4月16日 (日)

隠された意見書

(前々々回からの続き)「届いている」と国交省の担当者が言ったにも関わらず、委員たちに配布されなかった意見書も転載します。

配布されなかった意見書(二つあります)の一つは、治水上最大の恩恵を受けるとされている八代市の住民団体からで、要は、「基本方針の公明性・公平性に資するため、広く地元の意見を聞き取るための公聴会を開催して欲しい」こと。

なぜなら、ダム建設の目的の一つだった利水計画が白紙状態となっている。過去の水害で54名死者が出たのは1名をのぞき、ダム予定地より上流の土砂崩れなどが原因だった。治水上最大の恩恵を受けるとされている八代市では250年以上、破堤しておらず、ダムが必要な根拠はないなどです。以下、全文の転載です。

平成18410

社会資本整備審議会河川分科会 会 長 西谷 剛様

河川整備基本方針検討小委員会 委員長 近藤 徹様

同       委 員 各位

美しい球磨川を守る市民の会 代表 出水 晃

住所 () 電話 ()

球磨川水系の河川整備基本方針策定にあたって

公聴会開催を求める要望書

 

 当団体は、球磨川上流に建設が予定されている川辺川ダムにより治水上最大の恩恵を受けるとされている八代市の住民団体です。

 4月13日、国土交通省では、球磨川水系の河川整備基本方針策定に関する小委員会が開催されます。

 小委員会では国土交通省が作成した球磨川水系の治水に関する資料等が配布され、国土交通省による説明がなされることになりますが、委員の皆様には、直接の影響を受ける地元の事情について、その知悉度において程度差があることは否めません。このような事態をそのままにして河川整備基本方針の策定作業が進められることは決してあってはならないことです。

 私たちは、基本方針の公明性・公平性に資するため、広く地元の意見を聞き取るための公聴会を開催していただきますよう強く要望するものです。

 以下、私たちから見た、これまでの川辺川ダム事業の経緯と現状について簡単にご報告致します。

1) 球磨川水系の川辺川ダム問題について

 40年前に計画された川辺川ダム事業は、球磨川漁協の同意が得られず、国土交通省は土地収用法による強制収用の手続きを申請しました。しかしダムの目的のひとつである利水事業で農水省は平成15年5月16日福岡高裁で敗訴し、その結果として平成17年9月15日国土交通省は収用裁決申請を取り下げ、事業認定は失効しており、現在、ダム計画は白紙状態となっています。利水事業については、目下農水省、県、地元で協議が重ねられ、調整中ですが、事業の目処は全くたっていません。

 40年を経て、治水、利水を取り巻く状況は大きく変わり、今日では、さまざまな世論調査でも熊本県民の多数がダム事業に反対するところとなっています。その間ダムを前提にしたために流域の堤防強化などの治水対策が遅れ、結果として、いまだに水害常襲地となっているところもあります(水害常襲地となっている地区は、ほとんどがダム以外の治水対策で対応できます)。

 国土交通省は、川辺川ダム建設の大義名分として、昭和38~40年の水害を挙げ、住民に対して、この3年間に54名もの死者が出たことを繰り返し説明してきました。しかし、私たちが調査した結果、これらの死者は1名を除くすべてが、ダム建設予定地より上流に発生した土砂崩れなどや、他水系で死亡したものでした。計画がなされた時代の情報伝達の事情を考えると、「大勢の死者が出た」と説明があれば、流域自治体が反対できなかったことは、容易に想像がつきます。

2) 八代市にとって、ダムが必要な根拠はない

 球磨川最下流に位置する八代市には、流域人口の約7割の人口・資産が集中しています。この八代市では、1755年以来250年以上、球磨川堤防の決壊による甚大な洪水被害は発生していません。国土交通省が川辺川ダム建設の根拠にする昭和40年7月の水害も、八代市においては、堤防代わりになっていた旅館の土台が、それまでになかった急激な増水によって崩れたために、家屋が流出した被害であり、八代で7,000トン/秒流れたというこのときの出水でさえ、堤防の越流は起こっていません。現在では、当時より、堤防は高くなり、川幅は3倍にもなっていて、水の流下可能量が多くなっていることは誰の目にも明らかです。また、250年前の水害も、球磨川中流域で両岸に山崩れが発生しその崩れた土砂が自然のダムとなってそれが決壊したことによって惹き起こされたものでした。この事実からも川辺川ダムが80年に一度の洪水を前提に計画されているということが、全く根拠のないものであることは明白です。

 40年水害を契機に、八代市における球磨川の湾曲部であり、治水対策上最も重要な箇所と言われる萩原堤防は改修されました。国土交通省も平成13年12月の第一回住民討論集会において、治水対策で現在の萩原堤防に言及し、「確かに、八代地区だけをみれば、仮称掘削をすることで、川辺川ダムが防ぐという80年に1度の洪水に対して安全に暮らせるかもしれません」と、八代にとってダムが必要でないことを認めています。

また、国土交通省がさらに萩原堤防を強化しようとフロンティア堤防事業を計画化するにあたって作成した「球磨川萩原堤防補強効果検討業務報告書」(平成11年3月)には、「現況河道においても計画流量に対して余裕がある」こと、及び、計画河道が完成した時点では、200年に一度の可能最大24時間雨量に対する評価対象流量9,950?/秒でも、計画堤防天端には達しないことが明記してあります。また,これを受けて、予算化するために更に検討した「平成12年度萩原地区実施設計業務報告書」には、超過洪水時においても、パイピング破壊の可能性がないとの記述があります。更に、予算がついた際に、国土交通省が公表した「主要箇所調書」には、このフロンティア堤防事業の事業効果として、氾濫面積は対策後0平方キロメートル、被災世帯数は0戸、被害額は0兆円となり、一方、事業費の総額は3,172百万円であることが明記されています。

 以上のことから、現時点でも八代市にとって、川辺川ダムが必要でないこと、更にフロンティア堤防事業が実施されれば、川辺川ダムでは防げない超過洪水時にも対応できることは明らかであります。私たちは、それにも拘わらず、球磨川水系河川基本方針にダム前提の方針が出ることは、断じて容認することはできません。

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もう一つが「やつしろ川漁師組合」からの意見書です。

重要な部分を抜粋します。

「国土交通省は前例のない漁業権の収用という手続きを強引に取り、熊本県収用委員会の審理が開始されました。しかし、(略)国土交通省は収用裁決申請を取り下げ、ダム事業計画そのものが白紙状態となっています。」

「流域住民は、40年前当初、ダムがこれ程環境に影響を与えるという認識がなかったことと合わせ、頻繁に起こる水害を予防できるならば多少の犠牲は仕方がないという思いから、ダムを黙認している部分もありました。しかし、この流域においては水害体験者すらダムに反対をしている事実が明らかになってきました。」

「球磨川流域の治水対策にとって、本当にダムしかないのであれば、私たち漁民も、自分たちの漁業という営みを放棄しても、ダム建設に同意するかも知れません。しかし、球磨川の河川改修や堤防強化、嵩上げなどの対策をまず講じ、それでもダムが必要な場合にのみ、ダムという選択肢が浮上してくるのではないでしょうか。」

そして以下を要望されています。

「私たちは、球磨川水系の特性や治水対策が資料の検証をもってのみ判断され、河川整備基本方針が策定されることに大いに疑問をもっています。委員会においては、是非現場に足を運んで頂き、現地を検証すること及び現地において、住民の意見を広く徴収するための公聴会の開催を求めます。」

「球磨川水系の基本高水流量や河道への配分等に関する事項については、住民討論集会において、議論中であることを踏まえ、小委員会の場において決定しないこと。」

「委員の皆様におかれましては、平成9年の改正法に何故環境の視点が盛り込まれたのか、どうして住民の意見を聴かなければならないかという条文が盛り込まれたのか、考えていただき、河川整備基本方針の策定に当たっていただけますよう重ねてお願い申しあげます」

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以上、駆け足で、4月13日、午前中の出来事でした。

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