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2006年5月29日 (月)

不確かな基本高水と再現性の追及

 前項で書いたSLSCという指標を開発した京都大学防災研究所の寶馨氏の話を聞く機会があると教えてもらったので、52日行ってきた。帝国ホテルで行われた「京都大学防災研究所フォーラムin東京」 だ。

題目は 『「実務者向け:極値水文データの頻度解析」--- 大標本時代の水文頻度解析 ---

もちろん私は、実務者でもなんでもないので、行ってもチンプンカンプンかもしれないと思いつつ、“門前の小僧”という言葉もあることだし、と出かけていった。

 前項に絡めて、頭をひねりつつ、京都大学防災研究所の寶馨氏の概略をまとめて言えば、

現状:

いままでは基本高水流量(寶氏は、「確率水文量」という言葉を使われている)を求めるために、さまざまな確率分布を用いてきた。それは、これまではデータの蓄積がなかったからだ。しかし、これには問題があった。

問題点・留意点:

「小標本」30個未満

     データの蓄積量を考慮せずに、それらの確率分布が用いられてきたこと(たとえば10年、20年のデータしかなければ、せいぜい簡易推定ができると割り切るべきで、正確な推定はムリ。一時近似的な推定に過ぎないことを解析者もそれを利用するものも理解しておかねばならない)

「中標本」30個以上100未満

     たとえば、60年分のデータしかないのに100年確率を推定するのであれば、外挿推定(既知の資料から未知のことを推測・予測すること)になる。その際は、その標本に複数の確率分布モデルを当てはめて、良く適合する分布を選択しなければならない。(ここでSLSCが出てくる)

     しかしデータが蓄積して基本高水流量が大きく変わるようでは計画の変更や見直しが要請されかねない。

     そこで1)データ収集、2)モデルの候補を選ぶ、3)データにモデルを当てはめる、4)適合度を評価する(SLSC)、5)適合度のよいものを選ぶ、という5つのステップに、さらに新たに6)、ジャックナイフ法を適用して推定誤差の小さいモデルを選ぶことを推奨してきた

新しい提案

「大標本」100個以上

 ・ データ蓄積が100年を超えるところも出始め、これからも蓄積は進む。そこで、これまでのように解析的な方法(確率分布モデル)に依存し、どのモデルでやろうかと悩む必要はない。大標本データを直接プロットして、ブーストトラップ法で推定の精度を補正するという方法が取れるようになる。

以上が、実務者ではない私の理解の範囲です。

私なりのまとめ

つまり、推定は推定であることを前提に、いかに再現性を高めるか、ということを研究し、提案し続けてきた研究者が、それでも批判の多い確率分布モデルに対して、こんな方法も可能になってきたではないかというまた新しい提案を行ったフォーラムだったのだな、ということが、今、復習していてやっと頭の中に入った。

 翻って(ここからは寶氏の講座とは関係なく私の思考)、国交省は、基本高水を提案するとき、いかにそれが妥当かということは言うのだが(SLSC0.04以下とか適合度を低めた上で)、たとえば、基本高水を求める上で、その算定を行う「確率分布」モデルの中に入れることができていない要素がいっぱいあることについては、説明しない。

たとえば、森林の保水力や森に降った雨が川にどう流れてくるかが計算式になっていないから(科学がそこまで追いついていないから)入っていないだけの話。人間が知らないメカニズムなんて沢山ある。地形だって地質だって違えば当然色々違ってくる。こんなふうに、確率分布モデルは万全ではないのだということがスタート地点になっていない基本高水の出し方は、信頼性を自ら貶めることになっていると思う。

 

 上記、何か間違いに気づいた方は、ご教示ください。

まさのあつこ atsukom@mrj.biglobe.ne.jp

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