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2006年5月29日 (月)

基本高水が過大と言われるようになった背景のひとつ

やっと本質論の入り口です。お待たせしました(懺悔)

数学、いや数字が大の苦手な私にとって、もっとも触れたくない問題が「基本高水流量」である。「ムズカシイ物事をヤサシク表現する極限への挑戦」と言っても過言ではない。これを見て間違いやより適切な言い方を発見した方は、ぜひ、お知らせください(atsukom@mrj.biglobe.ne.jp)。

基本高水流量とは、あらゆる必要な言葉も含めてさっぴいて言うと、「降った雨が川に流れていく最大の量」(ダムなしの場合の)。それをある基準地点について考える。しかも、80年に1度とか100年に一度とか150年に一度の大きな雨が降ったときにどれくらい流れるだろうか考える。そういう数字である。

 正確に知りたい人は例えばこちら→http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/Jiten/Jiten_02.html#河道計画上の流量

(ここですでに、何十年に1回なら洪水に見舞われても仕方がないかと思えるかによって、基本高水流量が違うということを頭に入れておいて下さい。それからこのことについて流域住民が参加して決める仕組みがないことも覚えておいて下さい。)

この数字を巡り、「過大」だとか「妥当」だとかがダムの「反対」「賛成」という議論の際、どこの水系でも言われるようになってきた。

なぜ基本高水流量が過大とか妥当だとか言われるか?

1.11通りある推定の仕方(確率分布モデル)

降雨量や流量のデータは十分にないので、少ないデータを統計的に処理して「基本高水」を「推定」していくわけだけど、「国内で適用性が確認されている」と国交省が言う確率分布モデルは11通りある。そのモデルに当てはめて、例えば球磨川水系の場合、80年に1度の規模である「基本高水流量」が出てくるわけです。なんども繰り返しますが、あくまで統計的に求める(机上の計算で出てくる)「推定」です。

2.適合度の高い推定の仕方を選定するはずが・・・

11通りの中で、現実とかけ離れてしまうものがあるので、現実によく当てはまる推定の仕方を選ぶための方法が開発されている。ひとつは適合度を見るSLSCという方法。もうひとつはジャックナイフ法という方法。ところがです。

3.SLSCは小さいほどよく、0.03以下であれば適合度が良いはずが・・・

SLSCの方は、この方法を開発した本人が「適合度の指標であるSLSC(standard least-squares criterion)は,0.03 以下の場合、標本と理論値との適合度が良いことが知られている」(宝馨、京都大学防災研究所年報)といい、他の研究者によるさまざまな文献でも、小さければ小さいほどよく、0.03以下となれば適合度が高いと学会ではすでに定説とも言える指標であるにもかかわらず、国交省な何故か、「0.04以下」という学会の常識とは異なった指標で、学説的に言えば「適合度が低い」モデルも採用してしまっています。

そして、「適合度が低いモデルを使っています」と正直に言うのならまだしも、「ウソ」と指を指されてもおかしくない説明を審議会でも行っているのだ。

●たとえば●平成1827日の河川整備基本方針検討小委員会(那賀川水系の審議)で布村・河川計画課長は、「全国の実流量のデータから求められましたSLSCの最小値というものを、お調べになった論文を見ますと、大体最小値というのはSLSCが0.04以下ぐらいのところにほとんどのものがございます。ということで、ほかでこういうふうに分析をいたしましたものを、0.04以下のものというものを手法として採用しています。」

議事録はこちら→http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai/shakai/060207/060207-2.html

この説明は前述した通り、学界の常識やこのSLSCを開発した本人の説明とはことなっている。

●たとえば●(これから審議される)球磨川の場合でも、11通りのやり方の中で、常識はずれな0.04以下という適合度の低いでもOKにしているので7000トンを越える基本高水でも「ふさわしい」とされてしまい、それで「過大」だという批判につながてってきた。学界の常識通り、0.03以下に当てはまるモデルを採用すれば、7000トン以上の数値が出ているモデルはすべてはじかれるのだ。

もうひとつ、ジャックナイフ法といって、推定誤差によって使えるモデルかどうかを見る指標がある。これも小さければ小さいほどいい、という指標だ。

ところが国はこの指標を内部資料として持っていても、採用していないなどということがある。

学問の世界では確立されているこうした指標をクリアしていないモデルで算定されたものが、結局のところ、「基本高水流量」として採用されている。だから、「過大」であると批判されるようになった。

う~む。少しだけ、基本高水が過大、と言われる背景の雰囲気だけでも分かる人が増えてくれただろうか。

何か、上記で間違っている説明を発見された方は、どうぞ、ご連絡ください。

まさのあつこ atsukom@mrj.biglobe.ne.jp

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