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2006年6月 6日 (火)

ズレた追体験(森林の保水力)

66日、球磨川水系の河川整備基本方針を検討する小委員会の3回目。熊本県において川辺川ダム反対の住民と熊本県が共同で行った「森林の保水力」の共同検証についての追体験の続きのはずだった。しかし・・・・

前提

         これまで川辺川ダム反対派は「基本高水流量は過大である。昔(戦後の禿山)に比べれば保水力が上がってきているはずだが、それすら考慮されていない。考慮すれば基本高水は下がるのではないか」とは言っているが、「森林で洪水は防げる」とは一言も言っていない。

         現在の河川行政では、森林の保水力を考慮した基本高水流量を求める計算方法を使っていない。

         研究が「現実」に追いついておらず、河川行政は古い「河川工学」の範囲で、仕事をしてきた(基本高水流量を求めてきた)に過ぎない。

         そこで、熊本では住民の意見に真摯に耳を傾け、研究者たちすらまだやったことのなかった「実験」に挑んだ。しかし、その実験はまだ道半ばで「何か」結論を導き出せるところまでには至っていない。

ところが、その追体験をするといった委員たちの議論の結論は、こうした経緯をすっとばして、「森林は、中小の洪水はともかく大洪水には効果がない」という捻じ曲がったものになってしまった。誰も「森林が大洪水対策に効果がある」とは言っていないのに、である。(急転直下ではあるが、まぁ、こんなもんだろうという感じ)

河川整備基本方針検討小委員会の結論+熊本県知事の提起

小委員会の結論は、審議の最初から以下のようなものになることが早くも見え始めた。

     森林保水力はゼロではない。

     しかし、森林保水力を基本高水流量に算入する数式が学説として確立しているわけではない。その学説が出てくるのを待つわけにはいかない。

熊本県知事は、「だからといって(森林の保水力を)無視してもいいのか、気になるところであります」と第一のクサビを打った。

なぜなら、「森林の保水力を考慮して基本高水流量を何トン下げることができるのかということを川辺川ダム反対派は示していない。しかし、推進側もまた、基本高水流量を下げることができない根拠を示すことができていない。」

知事のクサビ

それでも、委員長(元河川局長)が、中小の洪水にはともかく大洪水には森林保水力は役に立たないというところへ意見を集約しようと強引に持っていく中で、知事はさらに2本のクサビを打ち込んだ。

1.「球磨川流域では、大面積皆伐後は、表層の土壌の一部も流出した。山津波、山腹崩壊を起こして25名の犠牲者が出た。実際に表土が流出している。現状の中の地質だけでなく、現実に表土がどうなっているのかを考えなくていいのか。(ダム賛成派反対派)どちらが根拠性をもっているのか、もっと分かりやすく理解の方法を出していただかなければと思う。また、共同検証の目的は、人工林と自然林に(ホートン)地表流が発生するかどうかを検証するもの。土壌の森林保水力を研究するものではない。」

これに対し、委員長は「この委員会の役割はどちらかの学説の正しさをジャッジすることではない」と話をそらした。

2.「森林保水力(の効果)については、小池委員、森田委員が言ったように、長期的な視点、現状という点では知見が集まっている。しかし、治水の安全性に反映させていくことの難しさがあったと思う。最近の森林水文学の研究の中では、新しい研究が次々と行われている。ただ、現在はまだ明確に数量化ができていないと理解した。さりとて、長期的な河川整備計画を考える中で、反対派の意見を無視した形で、今後の基本高水流量が議論されていくのは釈然としない。もし、基本高水流量の中で森林の保水力の論拠が明確になったとなれば、見直しをすることがあるのか、将来展望の中で森林の保水力を位置づけていくのか」

これに対し、委員長は「当然、見直しをするが」と明言。(言質を取られたことをごまかしたいとでもいうスピードで)そして結論へと急いだ。

まさのまとめ:

         今日の審議は、“専門家”と自称する人々とそうでない人(実際には、経歴から見て、森林水文学の“専門家”は一人もいないというのが事実なのだ)が、「森林の保水力は大洪水に対応できない」という結論をめがけてのもの(“森林の保水という観点からのみ議論されるべきではない”という意見が1件あり)だった。

         しかし、知事によれば、今日、さんざん審議の対象となった熊本でダム反対派と県が共同で行った「森林の保水力」の共同検証は、「人工林と自然林に(ホートン)地表流が発生するかどうかを検証するもの」であり、「森林の保水力は大洪水に対応できるかできないか」などということからはかけ離れたものだった。知事の指摘によってこのことに改めて気づかされ、愕然とした。なんて乱暴な委員会だ!実験の内容と委員会での議論がズレていたのだ。

        そして、委員長は、二言目には、森林の保水力と基本高水の関係の議論は、学界の方でやって欲しい(と愛想笑いをしながら言う)というのが目立った(前回からすでに)。じゃぁ、なんのための学識経験者なのか???

        森林の保水力と基本高水の関係の議論は、学界の方で進んでこなかった。だからこそ、住民も県も、悩みながら「共同検証」から始めた。それを「専門家」だと胸を張る人が、「学界の方でやってくれ」では、素人以下ではないか?

        「ジャッジはしない」と言いながら、結局、現在の河川行政のやり方に限界がある(基本高水に“ゼロではない”森林の保水力をダイレクトには反映できていない)ことを認識しながら、それを変えずに放置するという結論を出した。

         森林の保水力の論拠が明確になれば、基本高水の「見直しは当然」と委員長に言わせた知事はスゴイ。普通なら「事務局(国土交通省)」に振って判断させる種類のことなのに、あと一歩で落としどころに落とせると油断をしたか、思わず、コーナーに追い詰めたと思った知事から、逆にいつの間にかコーナーに追い詰められてしまったことに気づき「見直しは当然」と言いぬけるしかなかった元河川局長の内心の動揺が、表情にモロに出ていたのが、面白かった。

         球磨川水系の審議になり、傍聴者が多いので、あぶれて別室で大画面で傍聴をするので表情までクッキリ見えるのだが、若干、今日は、委員たちの名札が、ピンボケで見えなかったよ、河川局河川計画課総務係君!次はよろしくしっかり頼む!(前回は途中で音量調整がうまく行かずに、全然聞こえないよ~と、ブーイングの嵐が吹き荒れた)

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