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2007年1月29日 (月)

利根川・江戸川パブコメ

国土交通省関東地方整備局が、利根川・江戸川河川整備計画の原案を作成する前(本当か?)の意見募集を行っています。私もたった今、出しました。社会資本重点計画、フルプランなど、彼らの「計画」倒れを指摘しながらの意見にしました。皆さんもいかがですか?締め切りは29日!

それから、流域の1都5県(東京都、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、埼玉県)の住民には公述の募集もあります。締め切りは1月31日!

【参考】

利根川・江戸川河川整備計画の策定に係る意見の募集について

参考資料「利根川・江戸川の現状と課題」(PDF)

社会資本整備重点計画(PDF)

以下、私が出した意見です===

河川事業の上位計画である社会資本重点計画に基づいて、利根川水系における河川整備計画の策定に係る意見(川づくりに期待すること、取り組んでほしいこと)を述べます。

第一に、環境についてです。

同計画では事業分野別の取り組みとして治水事業が明確に位置づけられており、美しい国土づくりの具体的な事業として「失われた自然の水辺のうち、回復可能な自然の水辺の中で再生した水辺の割合」として「平成19年までに約2割再生」、また、「失われた湿地や干潟のうち、回復可能な湿地や干潟の中で再生したものの割合」として「平成19年度までに約3割再生」としています。

利根川水系の流域面積全体においても、少なくともこの二つの数値の達成が期限までに可能な具体的計画を立てるべきです。またもしも数値を達成できないとすれば、それは何故か、原因と対策を明らかにし、住民の意見を反映しながら、この遅れを取り戻すための河川整備計画づくりをすべきだと思います。

第二に、利水についてです。

水需給の抜本的な見直しを行った上で整備計画を作るべきです。利根川荒川フルプランには、平成14年以来、計画の見直しの議論すら止まっています。目標期限が過ぎたフルプランに依拠する利水事業を背景に整備計画が作られることは適正ではありません。社会資本重点計画でうたわれる「より低コストで質の高い事業」に反しています。「より低コストで質の高い事業」を河川整備計画によって実現するためには、水需給の抜本的な見直しを、自治体のみならず住民誰もが検証可能な方法で行うことが必要だと考えます。

第三に、治水についてです。

社会資本重点計画では、「想定している計画を超えるような降雨等による被害を最小化するための危機管理施策を推進する」ことになっていますが、その方向性が明確になるよう整備計画を定めるべきです。昨今の異常気象を考慮することなく、旧来の工事実施計画をほぼ踏襲する治水計画を新規の河川整備計画として継続することはやめるべきです。堤防の点検結果などを元に、治水安全度を公開し、流域に住む住民の参加を促しながら実効性のある治水計画を策定していくべきだと思います。利根川水系河川整備基本方針に遡っての議論が必要ではないでしょうか。

以上、環境、治水、利水の3つを総合的に勘案し、「より低コストで質の高い事業」を可能にする河川整備計画を策定すべきであると考えています。

まさのあつこ

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須藤久仁恵★特派員の川辺川レポート!その5

お待たせしました。

須藤久仁恵★特派員の川辺川レポート!第五弾です! 

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須藤久仁恵★特派員の川辺川レポート!

《第四期――ダム案と非ダム案の提示と収用申請取り下げに伴う混乱期》

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 下書きまでしていたダム日記の五回目の原稿が進まない(!) 年末、正月明けと法事や講義の教材つくりなどがあって‥‥とあれこれ理由をつけますが、話は簡単。要は「後回しにしていた」だけでありました。本当に申し訳ありません。厚かましくも好意的にご配慮いただければ、先に先にと進む現地の状況を見失わないようにするだけで精一杯だった、ということでどうかご勘弁ください。投稿再開の前触れでありました。

 

《第四期――ダム案と非ダム案の提示と収用申請取り下げに伴う混乱期》

056月、第五回目の意見交換会(集落座談会)が始まった。市町村での説明会の後、市町村が主体となりそれぞれの集落単位で農家同士の座談会を開催、その後アンケートに答えてもらい、最終的に利水計画の概要素案を絞り込む目的で実施された。説明会では、川辺川ダム案とダム以外の案(相良六藤に堰をつくり、そこから取水する:以後相良六藤堰案と呼ばれた)のそれぞれについて、対象農地、総事業費、水代、農家の負担金、工期などが地元関係農家に提示された。529日に農水省の出してきたダム案と相良六藤堰案は、維持管理費などダム案有利のものだった。しかし、調整役の熊本県は「ダム案とダム以外案、双方の案が遜色ない形で農家に提示する」方針を貫き、農家負担を同額にするため、年間維持管理費の差額4000万円を熊本県が補助することを言明した。

集落座談会を欠席した農家へは、市町村職員が戸別に訪問して資料が手渡された。そして、事業への参加と水源をどちらにするかを問うアンケートが実施された。新利水計画の策定に際し、このアンケート結果が重要な意味を持つことを関係者全員が認識しており、結果の公表が待たれた。

05年秋、農政局からアンケート調査の結果概要が直接マスコミを通して公表された。対象農家数は4240戸、回答農家数は3735戸、回収率88㌫。それによると、【国営利水事業に参加する? 参加しない?】という問いに対して、対象農家(4240戸)の約40%が利水事業に参加すると回答した。1378haの概定地域内では約72%が事業に参加すると回答した。更に、概定地域内で事業に参加すると回答した農家に【水源はダムから? ダム以外から?】と尋ねたところ、約74%が川辺川ダムからの水を望んだ。この回答を見る限り、概定地域内の農家約72%が事業に参加、かつ大多数がダムからの水を望むと答えており、川辺川ダム案が地元で承認されたかに見えた。

しかし結果を詳細に見ていけば、更に大きな問題が隠れていたのであった。設問の最後で、【国営事業からの除外の同意】が農家に問われた。土地改良法によれば、土地改良事業を行うためには対象農地面積を確定させなければならない。1994年の変更計画では、対象農地面積は3010haと確定していたが、新たな計画を作り上げるためには、対象農地を確定させることが不可欠なのであった。変更計画時点の対象農地から外れる農家には、「除外の同意」の同意書をとらねばならない。こういう意味合いを込めた「除外の同意」の設問である。すると、アンケートに回答した農家の約91%の人が「国営事業からの地区除外に同意する」と答えたのである。つまり、「私は国営利水事業の対象外となってもいいですよ」という意思表示をほとんどの人がしたのであり、国営事業でなければならないと確たる意思を示した人々は9パーセントしかいない、という事実がアンケートから導きだされたのであった。

(注:正式なアンケート結果発表は同年12月26日に開催された第63回事前協議の席)

03年、三回実施された意見交換会と農家への意向調査、04年夏の第四回目の意見交換会と意向調査、05年7月の第五回目の意見交換会(集落座談会)とアンケート調査。合計5回にわたって、地元の意向把握が行政によってなされた。新利水計画策定は、農家が納得できるような案を作ること、それがそもそもの出発点であった。粘り強く、時間をかけた働きかけを経て、漸く表に出てきた農家の声は、巨大な国営利水事業を推し進めようとしてきた国の政策と全く反するものだった。水需要の少なさ。国営事業への参加意欲の少なさ、個々の農家経営への不安、日本の農業政策への不安などの声は、意見交換会への参加者の少なさとあわせて、農家の実情を伝えていた。これを見ると、国営利水事業計画(当初計画と変更計画)が如何に過大な見込みで策定されたか、農家の実情とはかけ離れたものであったかがよくわかる。更に問題は、ダム案、六藤堰案双方とも、事業に必要な三分の二以上の同意は取れないという農家の現実がそこにあったのだった。

一方、収用委員会は531日に国交省へ取り下げを勧告するかどうかを話し合う「裁決会議」に入ることを表明、829日には国交省へ申請の取り下げ勧告を行った。「変更が生じる事態となった場合、収用委員会の判断の前に、まず起業者(国交省)がこれを是正すべき」であり、「(利水計画の策定を含めた)ダム事業計画を確定させてから必要な手続き(土地収用法に基づいた収用裁決申請手続き)をすべきである」というのが、その理由であった。この勧告をうけて、国交省は915日に収用申請を自ら取り下げた。

川辺川ダム建設事業には公共性・公益性があるとして行った土地・漁業権の収用裁決申請を、国交省自らが取り下げざるを得なかったことは、ダム建設の先行きが不透明になったことを意味した。新利水計画策定のダム案の前提が崩れたこととなる。事前協議は1226日まで4ヵ月間中断した。

中断されていた事前協議が1226日再開された。九州農政局は7月のアンケート結果を受けて見直しを行ったダム案と非ダム案(相良六藤堰案)を協議の場で関係者に提示し、新利水計画策定のスケジュールを明らかにした。それによると、06年春に二つの案の最終的な絞込みを行い、07年度の概算要求が固まる068月までに新利水計画を策定することを表明した。対象農地面積は双方とも1263haであった。いよいよ新利水計画策定作業は最終局面に入ったかに思えた。

(まさのより)須藤さんのこのレポートをもとに質問項目を作り、農水省に取材に行きました。その直後にこれが起きてこの原稿の中の「時代と共に地域に寄り添った見直しを~川辺川ダムからの教訓」を書きました。須藤さんに感謝します。これから先も楽しみにしています。皆さんもどうぞお楽しみに!全部をまとめて読みたい方は、カテゴリーから「須藤★特派員の川辺川レポート!」をクリックしてください。

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2007年1月21日 (日)

サンロケダムは誰のための事業になったか

続いて「グローバルネット」」((財)地球・人間環境フォーラム発行)の連載2回目の掲載記事です。編集部のご了解をもらって転載します。

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「グローバルネット」200612月号より全文転載

「川、開発、ひと――日本の経験、アジアの経験」 第二回

サンロケダムは誰のための事業になったか

大規模な公共事業は、時間の経過に伴う社会や経済の変化に対応できずに進められる場合がある。1970年代に円借款が検討されたフィリピンのサンロケ多目的ダム事業はその一つだ。発電、灌漑、治水を目的としたこのダムは、80年代にマルコス文書で中曽根元総理や丸紅の名と浮上し、マルコス政権崩壊と共に一度は消えた。その後、ラモス政権下で復活したときには、丸紅が92.5%、残りを関西電力が出資した海外進出事業に生まれ変わっていた。フィリピン電力公社(NPC)が日本輸出入銀行(国際協力銀行の前身)に建設資金の融資を受け、総事業費約12億ドルで高さ200メートル、幅1km強のアジア最大級のダムを完成させた。2003年だ。

その発電事業の優遇ぶりは著しい。丸紅と関西電力の出資によるサンロケパワー社は、第一に発電施設のみを所有し、NPCから設備容量に応じた料金が支払われるため発電の多寡によらず収益が出る。第二に放水ゲートの操作はNPCの指示で行うため、操作に伴うリスクがない。第三にダム完成後25年で発電施設をNPCに譲渡するため、堆砂でダムが埋まっても憂いがない。第四に移転補償や生活再建事業はNPCの責任である。富はサンロケパワー社が、リスクは融資を受けたNPCが負う仕組みだ。

事業者の約束不履行

サンロケパワー社が着々と利潤を上げる一方、NPCが行うはずの住民への移転補償や生活再建事業は、現在に至るまで完了していない。

サンロケパワー社のCSR(企業の社会的責任)室長および丸紅から出向中の日本人副社長によれば、水没地の補償はいまだ15%が未払いだ。必要書類が揃わない場合や、NPCが買う予定で使わなかった土地の損失補てんが未確定な場合などだという。660世帯が移転したが、例えばカマンガアン村へ移転した187世帯中51世帯は、暮らしが立たずに転出していた(写真参照)。02年に策定された「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」では、移転住民の生活は「改善または少なくとも回復」するよう事業者などが努めなければならないが、現実は異なっていた。

砂金採取者への生活再建事業も未完了だ。生計手段の損失には金銭補償がない。融資のみだが、3000人の申請すら660世帯に絞り込まれた。CSR部長は「本人の希望に応じ、養豚、養鶏など持続可能で包括的な事業に必要なだけの予算を確保していく」と言うが、ダム完成後3年も経過した今、「約束とは違う」と不信が高まっている地域がある。水没をしなかったダム上流でも堆砂が始まりなおさらである。

農民リーダーの遺言となった要請

 こうした未解決問題に新たな問題も迫る。サンロケダムの灌漑事業にあたる「アグノ川統合灌漑事業」だ。フィリピン灌漑庁が2000年から円借款を要請している。問題が指摘され続けてきたサンロケダムと一体であるため、日本政府は円借款を見送ってきた。

これについては062月には、灌漑で恩恵を受けるはずの農民の団体TIMMAWA(アグノ川の自由な流れを取り戻す農民運動)等が日本政府と国際協力銀行へ要請を行った。サンロケダムによる未解決の問題、既存の地域共同灌漑システムの改良などの代替案、灌漑施設に必要な土地取得における小作農家の権利保護、新しい環境影響評価の必要性などの多くの課題があり、それらが満たされるまでは円借款を供与しないで欲しいとする内容だった。

ところが要請からわずか3ヶ月後、TIMMAWA代表で小作農民の一人だったホセ・ドトン氏が暗殺される不幸に見舞われた(本誌191号参照)。フィリピンではアロヨ政権誕生の01年以来、政治、宗教、報道、農民、労働団体など各界で政権に批判的な人物が殺害される「政治的殺害」と呼ばれる事件が相次いでいる。ドトン氏は紛れもなくその一人だった。

遺言となってしまった要請は、「ODAによる恩恵を受けるのは誰か、影響を受ける住民にフィリピン政府がどう対応しているのか、今を見極めずして供与するなかれ」と訴えているのではないか。1127日、参議院の政府開発援助等に関する特別委員会で、「日本のODA現場で殺害が起きている」と指摘された麻生外務大臣は、「日本のODA現場だけで殺人が起きているわけではないが頻繁に起きることは我々としては遺憾。ODAを供与する上で検討の対象にしたい」と答弁した。この言葉の履行が日比両国で見守られることになる。

写真キャプション:

カマンガアン村に暮らす人々に移転前後の生活について尋ねると「以前はすべてを買わなくて済んだが、今は水も電気も薪もすべてを買わなくてはならない」「以前は現金がなくなると砂金採りに行ってその日の内にお金を得ることができたけど今はできない」と語った。

「サンロケダムは誰のための事業になったか」内コラム

時代と共に地域に寄り添った見直しを

~川辺川ダムからの教訓

1960年代以来の川辺川ダム計画(熊本県)も、治水・利水・発電が目的のダム計画だ。ところが、利水を含む土地改良事業は94年に当初の3590haから3010haへ変更される際、異議を唱える受益農家から提訴されることとなった。同意書から死者の捺印や偽造が発見され、035月、福岡高裁で農家が勝訴した。

そこで、新たな利水計画を農家の意向を踏まえて作るべく、036月から原告を含む農家、川辺川総合土地改良事業組合、関係6市町村、県、農水省による協議が始まったが、対象は1300haと縮小し、参加希望農家はさらにその7割程度にとどまった。水源については063月までに「ダム案」「ダム以外案」「既設の発電用導水路を活用する案」の3つが出されたが、結論は出ないまま、次の局面を迎えた。

067月、関係市町村のうち、ダムサイト予定地である相良村の矢上雅義村長が利水事業への不参加を表明し、11月には同村議会が地方自治法に基づき「巨額の事業費をかけ採算の取れない川辺川利水事業を行うことは経済的に農家を苦境に追い込む」とダム反対の意見書を可決したのである。この村は1960年代から食糧増産を目的に新田開発のためにダムを要望し、1994年になおダム建設の早期実現を求める意見書を出していた。しかし、054月の村議会選挙でダム反対の新人議員が12人中、9人を占めたこと背景に、ついに180度の転換を図った形だ。121日、村長と意見書を携えた7人の村議および村の行政改革委員長が、国交省、農水省、財務省を訪れ、ダムによらない治水および利水事業をと訴えた。誰のための事業かを見直す姿勢が、どんな事業にも必要とされている。

@@@ @@@ (以上、無断転載禁)@@@ @@@

まさのあつこ

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利根川で住民参加は実現するか

昨年「グローバルネット」」((財)地球・人間環境フォーラム発行)で始まった連載「川 開発 ひと 日本の経験 アジアの経験」での掲載記事を編集部のご了解をもらって転載します。

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「グローバルネット」200611月号より全文転載

「川、開発、ひと――日本の経験、アジアの経験」 第一回

今、アジアは河川開発ラッシュのただ中にいる。ダム開発は先進国による政府開発援助(ODA)や国際金融機関が介在する企業進出などによって進められてきたが、環境社会面での問題が絶えない。新連載「川、開発、ひと」では日本とアジアの河川開発の事例を取り上げ、日本が学んできた堤体経験を活かし、アジアにおける真の意味で望ましい川と人の関係を探る。

利根川で住民参加は実現するか

1997年の河川法改正で河川事業を決める手続に「住民意見の反映」が盛り込こまれた。来年で改正10年を迎えるが、住民参加の手法が今日までに確立したかと言えば、そうではない。日本最大の流域面積を持つ利根川では、現在、住民側から「住民意見の反映」の枠組みを提案されているが、国土交通省はそれにどう応えるのだろうか。

利根川流域市民委員会の発足

2006922日、「利根川流域市民委員会(以下、市民委員会)」は、国交省河川局長と関東地方整備局長あてに、「地域住民参加の流域委員会の設置について」と題する要望を行った。利根川流域市民委員会とは、今年4月に天然アユの復活を目標に活動する「利根川・江戸川流域ネットワーク」(代表:佐野郷美)の呼びかけで、下流は三番瀬の環境保全から上流は八ツ場ダム反対運動まで流域32団体(10月現在)が参加した住民組織だ。

河川事業を決める手続きは、1997年の法改正以来、河川整備基本方針(以下、基本方針)と河川整備計画(以下、整備計画)の二段階に分けられた。基本方針では治水計画の基本となる洪水流量の想定などが審議会の意見を聴いた上で定められ、整備計画では必要とあらば、「関係住民の意見の反映をさせるために必要な措置を講じなければならない」とされている。以前は国交省が審議会だけに意見を聴いて河川事業を行ったことを思えば、大きな変化ではある。市民委員会は、今年1月に利根川水系の基本方針が策定されたのを受け、この機を逃すまいと、河川整備計画への住民意見の反映を共通目的に生まれたのである。

整備計画の関与の意味

実は住民による整備計画へ関与は、基本方針にも関与するチャンスでもある。その根拠は過去の国会答弁の中にある。975月の衆議院での河川法改正審議の際、一人の自民党衆議院議員が、「住民の意見聴取手続を義務づけたのは河川整備計画のみ」だが、「基本方針にも地域の意向が十分反映されていかなければならない」のではないかと批判的に質問をしたときのことだ。当時の河川局長が「基本方針で定めた中ではこの整備計画がどうしてもできないということになれば、またこの基本方針のあり方についても再度検討をする、そういう仕組みを考えておるわけでございまして、この河川整備基本方針に住民意見の反映の手続がないということをもって住民意見の反映がされていないという御批判は当たらない」と答えた。

市民委員会は、今年719日に国交省から利根川の基本方針について説明を受けた席で、布村明彦河川計画課長(当時)にこの答弁が現在も踏襲されていることをあえて確認している。住民意見を反映して策定する整備計画の段階で、問題があれば基本方針まで遡って再検討するという政策は、流域住民にとっては意義深いからだ。

環境や地域への影響

利根川の基本方針を根拠に、整備計画に盛り込まれるであろう大規模事業は多数ある。たとえば旧河川法の下で計画された「幻の利根川放水路」と呼ばれた事業は、予定地への人口流入で現実性を失って忽然と消え、代わりに下流の印旛沼(千葉県)を洪水調整地として活用する新たな計画が浮上した。しかし、それは現在の印旛沼が持つ排水能力の10倍を要する計画であり、環境や地域への影響が計り知れない大規模掘削事業が行われるのではないかと早くも懸念の声があがっている。

その他にも、八ッ場ダム、思川開発事業、湯西川ダム、渡良瀬遊水池の大規模掘削、稲戸井調節池の大規模掘削、烏川の河道内遊水池、利根川中流部右岸の堤防強化対策、霞ヶ浦導水事業、那珂川と霞ヶ浦を結ぶ導水路、霞ヶ浦と利根川を結ぶ導水路など必要性が過大に見積もられていると指摘される事業は少なくない。これらを見直すとなれば基本方針まで遡らねばならないものもある。

「淀川方式」という住民参加手法

ところで、市民委員会が設置を提案した「地域住民参加の流域委員会」は「淀川水系流域委員会」をモデルとしたものだ。

淀川水系流域委員会は国交省近畿地方整備局の諮問機関でありながら、2003年1月、計画中だった5ダムを原則建設しないと提言したことで関係者をアッと驚かせた。公共事業に批判的な有識者を含む準備会議を経て20012月に発足し、1)学識経験者に地域特性に詳しい住民を含める、2)一般公募を募る、3)会議、会議資料、議事録等を原則公開する、4)傍聴者も発言できる、5)委員が分担執筆で提言・意見のとりまとめを行う、6)事務局を中立の民間社会へ委託する、7)地域部会・テーマ別部会・作業部会に分け丁寧に審議するなど、これまでの諮問機関とは一線を画した運営を行った。

通常、行政の諮問機関は行政の意向ばかりを反映して住民との対立が深まるが、この場合は対立したのは国交省だった。20058月、近畿地整が「2つのダムは事実上中止するが3つのダムは事業を継続する」と頭ごなしに発表したことで対立は明らかになった。この10月には近畿地整局長が流域委員会の休止を発表し、わずか3日後に国交大臣が、いや存続する、と発言し、迷走も始めている。

これまでに国交省は淀川方式を異端視し、それ以外の住民参加手法を模索してきた。200310月には肱川水系(愛媛県)で学識経験者と首長だけで占める流域委員会を作り、今年5月には吉野川水系(徳島県)で学識経験者、流域住民、流域首長の三者に分けて意見を聴く方式を始めた。どちらも当然、不評の声が高い。

こうした中、利根川の整備計画を担当する関東地整局では、市民委員会の要望に対しては、現在もなお「今後どうなるかはお話できる段階ではない」とし、水面下で住民意見の反映方法を検討中だ。改正10年を前に、そろそろ住民参加の手法を前向きに考えるときではないか。

図:利根川流域図

写真キャプション:922日国交省記者クラブにて「国交省に僕らだけと話し合いをして欲しいと言っているのではありません。流域住民の意見を吸い上げるプロセスを一緒に作っていきたい」と、利根川流域市民委員会の3人の共同代表(左から嶋津暉之氏、吉田正人氏、そして佐野郷美氏代理の高橋盛男氏)

@@@ @@@ (以上、無断転載禁)@@@ @@@ 

まさのあつこ

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2007年1月19日 (金)

国土形成計画

今日は裁判 ^^;、

明日は「レッツ・トーク不妊」の全国キャラバン・フィナーレにスピーカーとして行って来ます

● IN東京 2007年1月20日(土)100450

http://www.kango-net.jp/event/funin02/index.html (事後報告リンクゴメンナサイ)

昨日、戦略アセス勉強会の後の飲み会が楽しかった。

今日の本題。こちら酷度好痛症さんが、以下のようなコメントを寄せてくださっていました。

@ @ @

「国が「国土形成計画全国計画の策定に向けた「計画部会中間とりまとめ」に対する意見募集」を開始、そん中に「多様な主体による国土基盤マネジメント」ちゅうのが。

「電子政府窓口」に出てる。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=155060202&OBJCD=&GROUP=

法にさだめる参加の場から国民を締め出しておいて、どうゆう言い草?

@ @ @

2007216日が締め切りで意見を受付中のようです。

私は、国土形成計画なくしてしまえ論者(いつまでも発展途上じゃあるまいし、国土を国が音頭をとって一律に形成していく意味がない。利権分配計画にしか見えない)なので、先日、こちら戦略アセスの意見交換をしたときには、こんな質問もしました。

「政野 国土形成計画や社会資本整備重点計画など、全国レベルの計画の整理が必要ではないか。地域において戦略アセスを導入するためにも国の上位計画が邪魔や不要であることもあるがどうか」

「武内 そのとおりで、例えば今回も国土形成計画と国土利用計画は法体系が違うので、一本化したかったのですが、なかなかうまくいかなかったのです。もっと言えば、都市計画法は、本当は国土計画法の中に内包させるべきなのです。それから社会資本もそうです。お話のように、確かにそういう形にすればいいと思いますが、現状では難しい。」

予算と仕事を確保する以外にはなんの意味もないと思われる巨大な国レベルの計画をなくすことが、行革(節税)の第一歩だと思うのですよね。(だから何ナノ?という事柄が並んでいるだけの計画。こんな計画を作ることに人材を使うこと自体が壮大なるムダではないかと思う。)あるものを失くすというのは労力がかかるのに結果が出ない。だから誰も取り組まない。だから生き残る。悪循環だということは分かるのだが、個人ではいかんともしがたい。だが無力感に陥っても仕方がないと思うときは、こうしてひとしずくづつを集めておく。必ずしも考え方が全部一致しなくても、一致できるところでつながっていけばいつかきっと力になる、と思う。

まさのあつこ

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2007年1月14日 (日)

淀川

11日午後から少々熱を出しおとなしくしていました。皆さん風邪などひいていませんか?

さて、淀川水系の河川整備基本方針検討小委員会112日に再開されました。20051130日以来です。

単純に分かりやすいところを抽出すれば、112日に小委員会で国交省が示した「琵琶湖・淀川流域の基本理念(案)」を見ると、足元から議論を積み上げて作られた淀川流域委員会の提言から後退しているといわざるを得ません。

流域委員会では、「従来の治水や利水の考え方では限界があり、根本の理念を転換する必要がある」として、例えばダム計画については「ダムは自然環境に及ぼす影響が大きいことなどのため、原則として建設しないものとし、考えうる実行可能な代替案の検討のもとで、ダム以外に実行可能な方法がないと客観的に認められ、かつ住民団体・地域組織などを含む住民の社会的合理が得られた場合に限り建設するものとする」と提言しました。

しかし、「琵琶湖・淀川流域の基本理念(案)」(PDF)では「流域全体の協力の下でダムを含めた実現可能な対策を最大限講ずる」となりました。後退です。

もう少し長い経緯を含めて見るために、上記の小委員会を傍聴した水源開発問題全国連絡会共同代表(嶋津暉之氏/遠藤保男氏)からの情報を整理しました。

まず、小委員会が一年以上開けなかったのは、上下流の府県の主張に対立があったからだそうです。

前・滋賀県知事が、

1)淀川水系工事実施基本計画では、琵琶湖からの流出をゼロに計算することへの異論と

2)全閉操作を含む現在の瀬田川洗堰操作規則を平成4年に滋賀県は了承したが、そのときの条件(=今後10年をめどに宇治川の改修をする/天ヶ瀬ダムの再開発/大戸川ダムの建設)が守られていないことへの異論を唱え

3)そこで、河川整備基本方針/計画策定にあたっては、滋賀県としては瀬田川洗堰の全閉操作の見直しを求めた。つまり、「下流がもたないので洪水時には琵琶湖からは水を一適も出さない」というのであれば「それなりのことをやれ」=「下流(上流にも)にダムを造れ」というのが滋賀県前知事の言い分でした。

一方、京都府、三重県がそれぞれ、淀川上流の桂川の保津峡、木津川の岩倉峡の開削を求め、それらがいずれも淀川本流の洪水流量を増やすものなので、下流府県が反対した。http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai/shakai/051130/051130-2.html 

そこで、今回発表された基本理念案はその対立を解消するためのものだとのこと。

(計画論として)

 ・瀬田川洗堰の全閉操作は行わない。

 ・(上流部の)狭窄部の開削は極力行わず、流域全体の協力の下にダムも含めた実現可能な対策を最大限講ずる。

 ・その上で、なお安全度の確保が困難な場合は狭窄部を必要最小限開削する。

(実体論として)

 計画規模以上の洪水や整備途上段階で洪水が発生する場合を考え、実際の管理としては、流域が一体となって的確な対策を講じる。

この基本理念案に、小委員会では、滋賀県知事は賛成、大阪府、兵庫県、奈良県は賛意、京都府は反対、三重県は開削を主張したそうです。そして、上記の「流域全体の協力の下に」は「下流側がダム建設等に対して応分の費用負担をせよ」という意味であることを近藤委員長は解説した。

具体的なダム計画については

「基本方針としては、大戸川ダム、天ヶ瀬ダム再開発(放流能力を増強する計画)などはいずれも必要なものであると認識しているが、整備計画の段階で検討することであると、答えていました。」「当日の資料には丹生ダムの名前は一切出ておらず、話にものぼりませんでした」と嶋津氏。

嘉田知事は記者会見で、「瀬田川洗堰の全閉操作の見直しは100年間にわたる県民の願いがようやく認められた。琵琶湖をダム湖ではなく、自然の湖のように考え、水位調節も魚の産卵等を考慮して柔軟に行うようにする方針は画期的だ」という趣旨の評価をしていたそうです。」

しかし、これについては「計画論であって、実際にはその状況に応じて必要最小限の「全閉操作」「狭窄部の開削」も行うとしてあります」と遠藤氏。

また一方で、嶋津氏は、「知事の話を私は複雑な気持ちで聞いていました。琵琶湖の自然を大きく破壊したのは、1972年から1992年までに行われた琵琶湖総合開発事業です。琵琶湖の周辺に湖岸堤を築いて、水生植物群落を破壊し、さらに、毎秒40トンの都市用水を生み出すため、琵琶湖の水位を大きく変動させる水位操作を行うことになりました。この水位操作が琵琶湖の生態系に大きな打撃を与えました。そのことを予見した住民は琵琶湖総合開発事業に強く反対し、裁判で中止を求めました。私もその反対運動に多少なり加わって水需要の面で総合開発が不要であることを主張しました。しかし、五千億円以上という巨額の土木事業で潤う滋賀県が強力に推進しました。その先頭に立ったのが当時の武村正義知事でした。世間的には高く評価されている滋賀県の琵琶湖富栄養化防止条例は実はこの総合開発のマイナス面をカモフラージュするためのものであったと私は思います。琵琶湖の自然の回復について語るならば、何よりもまず、過去に行われた琵琶湖総合開発事業が琵琶湖の自然にどのような影響を与えてきたかの全面的な検証が必要であると私は思います。瀬田川洗堰の全閉操作の問題にしても、全閉操作を前提として(自然を破壊する)湖岸堤を琵琶湖に築いたのではなかったのでしょうか。いまさら、全閉操作の解消を主張するのは腑に落ちません」と述べています。

【参考】

57回河川整備基本方針検討小委員会資料一覧 (平成19112日)はこちらに

上記提言など、淀川流域委員会ってどんなものだったのだろうかと復習したい方は、その中の「参考資料4 淀川水系の治水計画等について(3回目小委員会配付資料) 」(PDF)の15ページ、そして16ページ以降が参考になります。

【参考2】

淀川を巡っては、関西限定で、19日、毎日テレビで淀川水系流域委員会休止の特集「脱ダム宣言撤回を水面下で画策する官僚達」が組まれたり、111日には「脱ダムネット関西」が淀川水系流域委員会の休止撤回を求める要望書を近畿地方整備局の布村明彦局長に提出したり(参考:07111日日経新聞)、さまざまな動きがありました。

というわけで、淀川流域委員会は、休止させている場合ではなく、今こそ、提言が履行されていくようにフォローアップし、開催されてこそ意味があるとおもいます。このタイミングで休止させるのは、「口封じ」とだということになるのではないでしょうか。

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2007年1月13日 (土)

フィリピンの政治的殺害→逮捕?

こちらで少々レポートをしたフィリピンの政治的殺害情報です。この時予定されていたASEAN会議は台風接近により直前に延期となり、現在、改めてセブ島で開催されています。

この間にも動きがいろいろありましたが、NGOが安倍総理と浅野外務副大臣に宛てたASEAN関連会議のための再訪比時におけるフィリピンでの「政治的殺害」に関する再確認のお願い」をごらんください。「2006129日の日比首脳会談以降に起きた10名の左派活動家殺害の概要」も添付されています。再確認を要請した日本のNGOはこれまでにも、日本の関係政府機関への署名、在日フィリピン大使館へ働きかけ、など一貫して問題解決を訴えてきています。関連記事はこちら→Japanese NGOs call on Arroyo gov’t to stop political killings(日本のNGOがアロヨ政権に政治的殺害を止めるよう要請)

「農民ホセはなぜ殺されたのか?――アロヨ政権が対応を迫られるフィリピンの「政治的殺害」」を書いた月刊「世界」2月号(岩波書店)が発売となりましたが、その直後、ASEAN会議のタイミングにあわせたのだろうかと思われるタイミングで、ホセ殺害の容疑者が逮捕されたという111日の情報をもらいました。

このスター紙の記事によれば、逮捕は地方裁判所の裁判官が出した逮捕状によるもので、未許可銃を使ってホセを殺害した蓋然性が高いというもの。上記原稿に書いたのは、犯人が銃の不法所持でつかまったが釈放されたというところまでです。その同一人物が、半年もたってASEAN会議直前に今度は殺害容疑で逮捕されたところが、逆に政治的な臭いを漂わせています。

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2007年1月11日 (木)

利根川の動き

利根川流域市民委員会が19日に、国交省に、利根川水系河川整備計画の策定に関する公開質問書 を送っています。

質問書は、「学識経験者だけでなく流域住民を含んだ流域委員会を設置するとともに、住民と議論を重ねながら、河川整備計画の策定を進めるよう要望し」た、「第1回の利根川・江戸川有識者会議でも、45人の委員から、住民の参加を強く求める意見が出された」が、それでも「私たちが求めてきた住民参加型の流域委員会とはまったく異なる、住民を排除した有識者会議が設置され、住民の意見は公聴会での聴取やインターネットでの意見募集のみとされ」たとし、

 1 住民の意見を反映させる方法の改善について

 2 有識者会議の傍聴者の処遇の改善について

 3 パブリックコメントで意見を述べるにあたって必要な基本的な事柄について

について、回答を求めています。詳しくはこちら

一方、国交省では、1月10日、粛々と「利根川水系河川整備計画の策定に関する意見募集」と「公聴会公募」を始めました。詳しくは、こちら↓

http://www.ktr.mlit.go.jp/kyoku/kisha/h18/812.pdf  

http://www.ktr.mlit.go.jp/tonegawa-plan/070109/yushiki_06.htm

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戦略アセス勉強会

種まきみたいな活動で、いつ実になるのかは分からなくてもやらねばならないことってあります。

こちらでお知らせした件ですが、オーフスネットで勉強会をしますので、興味のある方はふるってご参加ください。

~~転載歓迎~~~~~~~~~~~~~

オーフスネット勉強会

◆ 実効性ある戦略的環境アセスメントはできるか?◆

戦略的環境アセスメントのガイドラインの作成に向け、戦略的環境アセスメント総合研究会(068月~)や、環境アセスメント・フォーラム(NGO・アセス実務者等による新しいアセスのあり方に関する意見交換会)(0611月~)が開催されています。環境省の環境影響評価課長に、ガイドラインが目指すもの、現状、方向性についてお話しいただき、実効性ある戦略的環境アセスメントとはどのようなものか、どう可能かを議論しましょう。

Speaker 環境省総合環境政策局 平野秀樹・環境影響評価課長

日時:2007118日(木)午後6時半~8時

場所:弁護士会館10階 1003C・D室 (最寄駅 霞ヶ関) 

地図http://niben.jp/map/index.html

  *10階入り口に「環境法研究会」と表示されています。

先着42名 参加費:500

■参照ウェブサイト

戦略的環境アセスメント総合研究会http://assess.eic.or.jp/

環境アセスメント・フォーラム(PDF

http://www.jeas.org/koho/pdf/AssessForum061116.pdf

主催:オーフスネットhttp://www.aarhusjapan.org/

S-net(環境アセスWT)/第二東京弁護士会「環境法研究会」

---------参加申込-----------------------------------------

07118日オーフスネット勉強会

宛先:小林 kobayashi@c-poli.org

氏名(                              

所属(                              

アセスに関する関心事(差し支えなければ)                              )

---------参加申込----------------------------------------

■ 以下に、昨年1116日開催の「環境アセスメントフォーラム

  (第1回)」議事録(PDF)が掲載されています。

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2007年1月 9日 (火)

情報開示戦争、法廷へ

昨年の終わりにかけて滅茶苦茶忙しかったので(今年はこの言葉無理せずに使います)、新年早々、昨年の話題ばかりで申し訳ないのですが、情報開示戦争のさらなる続きなどでしつこくお知らせしてきた件です。

「審議会を公開しているんだから、議事録をウェブサイトに掲載するとき、当然、発言者名も一緒に公開すべきではないか」と、ある弁護士さん(って「僕のことですね」と先日お会いしたときに言われ、「そ~です~^^」と私)が1年前の日弁連のシンポジウムで主張したのを、「そりゃそうだ」と共感して以来、試行錯誤してきました。

審議会等の委員長(orコーディネータ)や出席者の発意・任意で「発言者名も載せましょう」と言えば、なんの問題もなく載せられることは、環境省関係の戦略アセスの意見交換会で、私自身が実地に体験しました。「載せてください」でなんの障害もありません。

ところが、国交省の社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会(長っ)の場合、河川計画課長や委員長や学者に「公開してはどうか」と文書や面と向かって提案してもダメでした。そこで、そんな馬鹿なと、情報公開法を使って開示請求をすると、「不存在」と返事が来たので、異議申し立てをしました。

簡単な図式にすると、開示請求(ワタシ→国交省)→「発言者名入りの議事録は存在しない」という行政処分(国交省→ワタシ)→異議申立(ワタシ→国交省)→諮問(国交省から情報公開・個人情報保護審査会)→理由説明書(国交省→情報公開・個人情報保護審査会)→理由説明書に対する意見書(ワタシ→情報公開・個人情報保護審査会)までで、審査が行われるときには、意見陳述をさせてくれ、という意思表示を私のほうがした段階で、この線は止まっています。

諮問されっぱなしで、延々と時間を引き延ばされたケースなどいろいろありますので、別の手も打ちました。情報公開の場合、行政庁への異議申し立てとは別に、司法へ訴えることができます。そこで、0611月に、以下のような訴状を提出しました。

そんなわけで、07年1月19日14:00東京地方裁判所606号に法廷での闘いが始まります。といっても単に書類のやり取りなどで5分もかからずに終わるようなのですが。情報公開クリアリングハウスのサポートや弁護士・西島和さんから有難く貴重なご協力をいただきます。

訴状(住所など略)

東京地方裁判所御中

原告訴訟代理人

  弁護士  西島 和

原告 政野淳子

被告 国

代表者法務大臣   長勢甚遠

処分庁   国土交通大臣

社会資本整備審議会河川分科会録音物等不開示処分取消等請求事件

 訴訟物の価額    160万円

 ちょう用印紙額   1万3000円

第1 請求の趣旨

1 国土交通大臣の原告に対する別紙処分目録記載の行政文書不開示決定をすべて取り消す

2 国土交通大臣は別紙行政文書目録記載の文書をそれぞれ開示せよ

3 訴訟費用は被告の負担とする

との判決を求める。

第2 請求の原因

1 原告の情報公開請求 (ここでは略)

2 国土交通大臣の不開示決定及び理由(ここでは略)

 ⑴ 不開示決定(ここでは略)

 ⑵ 不開示の理由(ここでは略)

3 本件各処分の違法性

⑴ 本件各議事録の行政文書該当性について

ア 処分庁の設置する小委員会の事務局である河川計画課(以下「河川計画課」という)は、小委員会の議事録作成を職務として行っている。

イ 河川計画課は、小委員会における速記録作成のため、民間速記業者と年間の単価契約を締結し、当該契約により納入された成果物を保有している。

ウ 河川計画課が職務として作成すべき議事録の作成にあたって、小委員会に出席した各委員に対し、各委員の小委員会における発言内容が正確に議事録に記録されているかどうかについて確認している。

エ 前記確認作業にあたっては、河川計画課の職員において、発言者名入りの議事録を保有していることが不可欠である。

オ 以上より、本件各議事録は、処分庁の職員が組織的に用いるものとして処分庁が保有している行政文書である。

 本件各録音テープの行政文書該当性について

ア 処分庁は本件各録音テープを作成している

河川計画課の職員は、河川計画課が職務として作成すべき議事録の作成にあたって、国土交通省が年度ごとに一括して速記録作成に関する委託契約を結ぶ民間速記業者(以下「訴外業者」という)との間で委託契約(甲7及び8・契約書、以下「委託契約」という)を締結し、訴外業者に委託して速記録を作成している。

河川計画課の職員は、訴外業者に対し、速記録の作成にあたり、「速記者を1名以上派遣し、テープ録音を併用し、ワープロにて速記内容を文書化すること」と指示し(甲7及び8・契約書)、訴外業者を利用して、議事に関する録音テープを作成している。

イ 処分庁は本件各録音テープを保有している

① 本件各録音テープは、処分庁がその業務である議事録作成にあたって作成する文書であり、処分庁の所有に属する。

② ところで、法2条2項の「保有しているもの」とは、所持している文書をいい、この「所持」は、物を事実上支配している状態をいい、当該文書を書庫等で保管し、または倉庫業者等をして保管させている場合にも、当該文書を事実上支配、すなわち当該文書の作成、保存、閲覧・提供、移管・破棄等の取扱いを判断する権限を有していれば、「所持」に該当し、保有しているといえる(総務省行政管理局編集『詳解 情報公開法』25頁)。

③ したがって、処分庁は本件各録音テープを保有している。

ウ 以上より、本件各録音テープは、処分庁が職務上作成し、組織的に用いるものとして処分庁が保有している行政文書である。

  本件各文書の不開示事由該当性について

 社会資本整備審議会運営規則第7条は、議事の公開について定め、同条1項は、特段の理由があるときを除き会議又は会議録を原則公開とすることを定めている。

小委員会は、これを受けて、同委員会の会議の傍聴を認めており、何人でも会議を傍聴することができ、傍聴した者が会議の内容を公表することは何ら妨げられていないところである。

 したがって、本件各文書は、情報公開法5条に定める各不開示事由に該当しない。

 ⑷ 以上より、本件各文書の開示を求める本件各開示請求は、いずれも法の要件をみたした適法なものであるところ、本件各処分は本件各文書を不開示とするものであることから、本件各処分には取消原因にあたる違法がある。

4 前記3記載のとおり、本件各開示請求は適法なものであるから、処分庁は請求に係る本件各文書を開示すべきであるのに、これを怠っている。

5 よって、原告は、行政事件訴訟法第3条に基づき、本件各処分の取消し及び本件各文書の開示を命じる判決を各求める。

以上

証拠方法(ここでは略)

附属書類(ここでは略)

文書目録

1 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第37回)議事録(発言者名入り)

2 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第37回)の録音テープ

3 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第38回)議事録(発言者名入り)

4 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第38回)の録音テープ

5 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第40回)議事録(発言者名入り)

6 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第40回)の録音テープ

7 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第44回)議事録(発言者名入り)

8 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第44回)の録音テープ

9 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第46回)議事録(発言者名入り)

10 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第46回)の録音テープ

11 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第48回)議事録(発言者名入り)

12 社会資本整備審議会河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第48回)の録音テープ

処分目録

1 平成18年5月15日付行政文書不開示決定(国広情第43号)

2 平成18年6月2日付行政文書不開示決定(国広情第58号)

3 平成18年6月30日付行政文書不開示決定(国広情第91号)

4 平成18年8月2日付行政文書不開示決定(国広情第125号)

5 平成18年9月11日付行政文書不開示決定(国広情第155号)

6 平成18年10月12日付行政文書不開示決定(国広情第209号)

以上(最後にもう一つの処分を加えましたが、たしか上記から抜けています。後日直します)

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戦略アセスメント

昨年(06年)1116日に、戦略アセスメント制度のガイドライン作成を前提としたNGO・アセス実務者の意見交換会PDFです)があり、NGOの一員として出席しました。

いろいろな立場を持って使い分けをすることで悩むこともあるのですが、公共事業を実施するにあたり、早期段階で情報を公開し、住民が政策決定に参加するように制度を整えていくことは、1995年以来のライフワークでもあり、まさのあつこというペンネームではなく、オーフスネットの政野淳子ということで参加しました。

河川事業の観点から発言を行いました。

第一回(061116日)の議事録がこちらPDFです)に掲載されています。

第二回の予定・詳細はこちら (PDFです)。07111日です。

現在、学識経験者の研究会も環境省のもとで開かれており、現在第3回。1222日には「河川事業の計画段階における環境影響の分析方法の考え方について」(PDFです)国交省から説明が行われました。NGO/アセス実務者の意見交換会に先行して始まり、現在、並行/交差しながら開催されています。

ちなみみ、「アセス実務者」とは要するに、ゼネコンやコンサルですが、第一回の意見交換終了後に名刺交換をした際、仕事の(ジャーナリストの)名刺でしか持っていなかったので、それで交換させていただいたのですが、その際、お一人に「あっ。そうだったんですか。いつもお名前はあちこちで拝見しています。名簿の名前が漢字だったので気づきませんでした」と言われ、苦笑しました。あちこちと言われるほど、活躍できているとは思えていないので、このブログがその「あちこち」のひとつかしらん・・・と。

以下が、私が河川事業について発言した内容です(掲載された議事概要のまま)。

● 国交省では平成14年に「河川事業の計画段階における環境影響の分析方法の考え方」といこことで、戦略アセスを行う段階を「河川整備計画」という段階で定めている。しかし実際には、「河川整備計画」の上位にある「河川整備基本方針」で、ダム事業が具体的に見えてきた形になるので、基本方針の段階でSEAを入れるのが適当ではないかと思う。

●「河川整備基本方針」でもさらにまだ不十分とも言える。例えば、昨今の豪雨の被害などを見ていると、河川事業だけでは解決つかない、地域のまちづくりなど、地元に密着した検討が必要になってきている。従って、地域の中で洪水からどう身を守るかという根本的な政策の段階で行うことが、本来の戦略アセスではないかと思う。計画の抽象度が高いところ、あるいは不確実性が高いところで戦略アセスを行うことを、今回のガイドラインづくりで進めていただきたい。

100年規模の「河川整備基本方針」がつくられた後、100年分の事業メニューから、20年から30年規模の「河川整備計画」案を国土交通省が出してくる。その段階での戦略アセスでは遅過ぎる。

後述しますが、今年、私は「審議会」の発言者名入り議事録の公開を巡って国交省と戦うので、今回の経験がいろいろな意味で興味深いものとなっています。

まさのあつこ

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電力会社の法令違反その2

こちらで少し触れた件ですが、経済産業省・原子力安全・保安院が昨年1221日までに、電力会社9社に対し、定期報告に関するデータ改ざんは48発電所、49件、無届工事は116発電所、168件と報告を出させ、その原因究明、再防止策、および法令違反の是正措置を取るよう求め始めていました。

水力発電設備に係る調査について1121

「水力発電設備に係る調査について」の報告について 1220

水力発電設備に係る調査について(第3報)1221

水力発電設備に係る調査について(第4報)1226

以下は、1週間掲載遅れでその当時の国土交通省による数値で報じたものですが、焦点を湯沢発電所にあてて書いています。

もはや脱法行為の東京電力の水利用

(週刊金曜日第636 20061222日)

(このページを辿ると読めます)

まさのあつこ

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2007年1月 4日 (木)

今年の利根川

利根川流域市民委員会事務局の深澤洋子さんから、1218日に開催された利根川河川整備計画策定に関わる有識者会議の傍聴レポートが届いていました。

以下、転載です。転載のご了承ありがとうございます。

(^^)(^^)(^^)

昨日、利根川河川整備計画策定に関わる有識者会議が開催されました。

前回は、「ここは何かを決める場ではなく、意見を言う(だけの)場だ」と、どんな意見も聞き流していた宮村座長、今回は冒頭、「質問の後、自由に議論をして下さい」と方針転換。

前回よりはましな展開となりましたが、

意見聴取の基本的な方法は変わらず。

もう示されるはずだった原案は、先送りとなりました。

次回の予定が発表されました。

http://www.ktr.mlit.go.jp/kyoku/kisha/h18/767.pdf

〈次回の有識者会議=ブロック別ではない、有識者会議全体会〉

○日時:2月22日(木)13時~14時

○場所:浦和ロイヤルパインズホテル(アクセスはこちら↓)

http://www.royalpines.co.jp/urawa/access/index.html

続けてその後に、全体公聴会を開催

○日時:2月22日(木)14時30分~18時

○場所:同上

その後順次、ブロック別の公聴会(20か所程度)、ネット、手紙での意見募集、それをふまえて原案を作って提示、また有識者会議、公聴会・・といったことを繰り返すそうです。

意見聴取の方法の詳細は1月10日に記者発表する予定。

(^^)(^^)(^^)

転載終わり。

これまでの有識者会議の議事録などはこちらに。

まさのあつこ

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今年もよろしくお願いします

あけましておめでとうございます。

「あっちもこっちも」の年でした。

昨年、一つ心に決めていたのは「忙しい」という言葉を使わないことで、それだけは貫徹。しかし、「パンク中」など同類語は一杯使ったので意味なしかも。救いは何をやるにも一人ではないということかもしれません。私は私にできるちょっとでいい。

20061223日 朝日新聞「私の視点」
「河川行政 住民参加の機運止めるな」 嶋津 暉之(水源開発問題全国連絡会共同代表)

八ツ場ダムを考える会のウェブサイトで読めます。↑

その他の八ツ場ダム関係の最新ニュースもこちらで。

昨年20061215日、「さらば八ッ場よ」と題して、川原湯温泉から転出された方の声が載りました。どんなお正月を過ごされたでしょうか。

今年もよろしくお願いします。

まさのあつこ

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