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2007年1月29日 (月)

須藤久仁恵★特派員の川辺川レポート!その5

お待たせしました。

須藤久仁恵★特派員の川辺川レポート!第五弾です! 

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須藤久仁恵★特派員の川辺川レポート!

《第四期――ダム案と非ダム案の提示と収用申請取り下げに伴う混乱期》

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 下書きまでしていたダム日記の五回目の原稿が進まない(!) 年末、正月明けと法事や講義の教材つくりなどがあって‥‥とあれこれ理由をつけますが、話は簡単。要は「後回しにしていた」だけでありました。本当に申し訳ありません。厚かましくも好意的にご配慮いただければ、先に先にと進む現地の状況を見失わないようにするだけで精一杯だった、ということでどうかご勘弁ください。投稿再開の前触れでありました。

 

《第四期――ダム案と非ダム案の提示と収用申請取り下げに伴う混乱期》

056月、第五回目の意見交換会(集落座談会)が始まった。市町村での説明会の後、市町村が主体となりそれぞれの集落単位で農家同士の座談会を開催、その後アンケートに答えてもらい、最終的に利水計画の概要素案を絞り込む目的で実施された。説明会では、川辺川ダム案とダム以外の案(相良六藤に堰をつくり、そこから取水する:以後相良六藤堰案と呼ばれた)のそれぞれについて、対象農地、総事業費、水代、農家の負担金、工期などが地元関係農家に提示された。529日に農水省の出してきたダム案と相良六藤堰案は、維持管理費などダム案有利のものだった。しかし、調整役の熊本県は「ダム案とダム以外案、双方の案が遜色ない形で農家に提示する」方針を貫き、農家負担を同額にするため、年間維持管理費の差額4000万円を熊本県が補助することを言明した。

集落座談会を欠席した農家へは、市町村職員が戸別に訪問して資料が手渡された。そして、事業への参加と水源をどちらにするかを問うアンケートが実施された。新利水計画の策定に際し、このアンケート結果が重要な意味を持つことを関係者全員が認識しており、結果の公表が待たれた。

05年秋、農政局からアンケート調査の結果概要が直接マスコミを通して公表された。対象農家数は4240戸、回答農家数は3735戸、回収率88㌫。それによると、【国営利水事業に参加する? 参加しない?】という問いに対して、対象農家(4240戸)の約40%が利水事業に参加すると回答した。1378haの概定地域内では約72%が事業に参加すると回答した。更に、概定地域内で事業に参加すると回答した農家に【水源はダムから? ダム以外から?】と尋ねたところ、約74%が川辺川ダムからの水を望んだ。この回答を見る限り、概定地域内の農家約72%が事業に参加、かつ大多数がダムからの水を望むと答えており、川辺川ダム案が地元で承認されたかに見えた。

しかし結果を詳細に見ていけば、更に大きな問題が隠れていたのであった。設問の最後で、【国営事業からの除外の同意】が農家に問われた。土地改良法によれば、土地改良事業を行うためには対象農地面積を確定させなければならない。1994年の変更計画では、対象農地面積は3010haと確定していたが、新たな計画を作り上げるためには、対象農地を確定させることが不可欠なのであった。変更計画時点の対象農地から外れる農家には、「除外の同意」の同意書をとらねばならない。こういう意味合いを込めた「除外の同意」の設問である。すると、アンケートに回答した農家の約91%の人が「国営事業からの地区除外に同意する」と答えたのである。つまり、「私は国営利水事業の対象外となってもいいですよ」という意思表示をほとんどの人がしたのであり、国営事業でなければならないと確たる意思を示した人々は9パーセントしかいない、という事実がアンケートから導きだされたのであった。

(注:正式なアンケート結果発表は同年12月26日に開催された第63回事前協議の席)

03年、三回実施された意見交換会と農家への意向調査、04年夏の第四回目の意見交換会と意向調査、05年7月の第五回目の意見交換会(集落座談会)とアンケート調査。合計5回にわたって、地元の意向把握が行政によってなされた。新利水計画策定は、農家が納得できるような案を作ること、それがそもそもの出発点であった。粘り強く、時間をかけた働きかけを経て、漸く表に出てきた農家の声は、巨大な国営利水事業を推し進めようとしてきた国の政策と全く反するものだった。水需要の少なさ。国営事業への参加意欲の少なさ、個々の農家経営への不安、日本の農業政策への不安などの声は、意見交換会への参加者の少なさとあわせて、農家の実情を伝えていた。これを見ると、国営利水事業計画(当初計画と変更計画)が如何に過大な見込みで策定されたか、農家の実情とはかけ離れたものであったかがよくわかる。更に問題は、ダム案、六藤堰案双方とも、事業に必要な三分の二以上の同意は取れないという農家の現実がそこにあったのだった。

一方、収用委員会は531日に国交省へ取り下げを勧告するかどうかを話し合う「裁決会議」に入ることを表明、829日には国交省へ申請の取り下げ勧告を行った。「変更が生じる事態となった場合、収用委員会の判断の前に、まず起業者(国交省)がこれを是正すべき」であり、「(利水計画の策定を含めた)ダム事業計画を確定させてから必要な手続き(土地収用法に基づいた収用裁決申請手続き)をすべきである」というのが、その理由であった。この勧告をうけて、国交省は915日に収用申請を自ら取り下げた。

川辺川ダム建設事業には公共性・公益性があるとして行った土地・漁業権の収用裁決申請を、国交省自らが取り下げざるを得なかったことは、ダム建設の先行きが不透明になったことを意味した。新利水計画策定のダム案の前提が崩れたこととなる。事前協議は1226日まで4ヵ月間中断した。

中断されていた事前協議が1226日再開された。九州農政局は7月のアンケート結果を受けて見直しを行ったダム案と非ダム案(相良六藤堰案)を協議の場で関係者に提示し、新利水計画策定のスケジュールを明らかにした。それによると、06年春に二つの案の最終的な絞込みを行い、07年度の概算要求が固まる068月までに新利水計画を策定することを表明した。対象農地面積は双方とも1263haであった。いよいよ新利水計画策定作業は最終局面に入ったかに思えた。

(まさのより)須藤さんのこのレポートをもとに質問項目を作り、農水省に取材に行きました。その直後にこれが起きてこの原稿の中の「時代と共に地域に寄り添った見直しを~川辺川ダムからの教訓」を書きました。須藤さんに感謝します。これから先も楽しみにしています。皆さんもどうぞお楽しみに!全部をまとめて読みたい方は、カテゴリーから「須藤★特派員の川辺川レポート!」をクリックしてください。

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 現在の日本では、あまりにも木材価格が低すぎて、林家はみな林業の経営意欲を失ってしまっているので、九州ではじつに25%の伐採場所で、再造林がなされないまま放棄され、土砂災害と洪水の危険性を高めています。  日本では再造林費用の70%くらいは補助金として出ますが、木材価格が低すぎて、残りの30%も出せないで、造林が放棄されているわけです。... [続きを読む]

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