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2007年5月12日 (土)

球磨川の基本方針はホーカスポーカスではないか

419日に審議された、川辺川を支流にもつ球磨川の河川整備基本方針(案)について、本質的なことをまだ書いていないので以下に述べる。

(要は、潮谷熊本県知事が、国土交通省が出してきた球磨川水系河川整備基本方針案に「了承しがたい」といったことに対し、河川分科会の他の委員がよってたかって様々な侮蔑表現を折り混ぜながら、知事を「消極的賛成」に転換させようとした、ということをツラツラと書いてきたわけだが。)

  了承しないわけ

「国交省は説明責任を果たしていない」との県知事の鶴の一言で、200112月から200312月まで9回にわたり、延べ約13000人が参加して県民討論集会が開催された。今回、国土交通省が出してきた基本方針案は、そのときに「説明」されてきた工事実施基本計画で提示されてきたことと、まったく違うということが、了承しないわけだった。

独断と偏見をお許しいただき、噛み砕いていうと次のような点である

1.【hocus-pocus(辞書で引いてね)な基本高水】

今回の基本方針案で変化したものの一つに、「基本高水」(想定する治水安全度における基準地点を流れる水量)の算出方法がある。旧法の工事実施基本計画で算出に使われたデータ量が変わり、算出の前提となる計画降雨継続時間がかわり、引き伸ばし率が変わり、ハイドログラフに落としたときの降雨の波形すら変わった。

それだけのものが変わったのに、あ~ら不思議!!上流の基準地点である人吉の基本高水は、ピタリと同じ。あたるもハッケあたらぬもハッケというか。係数の設定ひとつでこういう計算はどうにでもなるということは河川工学の世界では常識だということが常識になっている。ようするに・・・hocus-pocusだ。hocus-pocusであるという疑念を取り払うだけの説明は、国交省からは審議過程ではなかった。(以下*参照)

2.【基準点が平野から山間部へ、何故?】

工事実施基本計画で定めてきた下流の基準地点が変わった。「萩原」「萩原」(八代市でいわば洪水想定地域であり、国交省が考える川辺川ダム建設計画の根拠であるとも言える)と言ってきたものが、忽然と消えて、5キロ上流の「横石」となった。山間地帯である。は?あの萩原は?さんざん、フロンティア堤防が必要だとか言ってきて、八代はもういいんですかい? 

3.【治水安全度が雑談で変わっていいの?】

しかも、八代では「80分の1」としてきた治水安全度を、上流の山の中に設けたこの基準点で「100分の1」とした。は?審議を聞いていても、ぜんぜんその流れが分からなかった。ある回で雑談的に「専門家群団」が、100分の1がいい、うん、それがいいんじゃないか程度につぶやいていたと思ったら、いつの間にか最終的に100分の1になった。あんな程度の「専門家」の雑談で、100年の計を決めていいの?という驚きがある。どれぐらいの安全度を望むか、それは流域で決めることであって、霞ヶ関の半密室(発言者名も伏せるほど)で決めることではないんでないの?と私は思う。第一、横石がどんな場所なのかも含め(地図で探しても見つからないくらいの地味な場所であり、ネット検索でようやく5キロ程上流の山の中と分かった)、説明はなかった。委員長が「危険の発生確率を如何に低く抑えるか。球磨川の場合は、人吉80分の1まで、八代100分の1まで発生確率を抑えようという発想で、この信頼性理論に乗っているわけです」と語ったくらいだ。(何か、もし、私が聞き逃していたのだとすると、ぜひ、ご教示いただきたい)

ま、こんな具合に、審議回数は多かったけど、説得材料に乏しい説明で、2001年から2年間、こんこんと県民が説明されてきたものとは異なるものを出されて「これが基本方針案でございます」と言われても、県知事として了承できない、と述べるのは当たり前ではないだろうか。

分科会で知事が最初に発言した際には、地元紙のアンケート(321日)では川辺川ダム必要9%、ダム条件付賛成12%、ダム扶養は52%だったという紹介もした後、次のように述べた。

==潮谷知事発言(概要)(2007419日河川分科会)===

審議にあたっては委員長報告ととも、私の意見を踏まえて審議をして欲しい。(小委員会の最終回では)私が地元代表として了承しがたいと申し述べたことを併記してもらいたい、明文化してもらいたいと申し入れた。再度、「小委員会・審議会の結果について了承しがたい」という意見を述べたことを併記することを求めます

====================

そんなわけで、球磨川水系の場合、奇しくも櫻井敬子・学習院大学教授が述べた「予定調和的な河川分科会の中で想定外」な河川整備基本方針となった。

この取扱いは、私が考えるところ、原稿「利根川で住民参加は実現するか」で書いた次の部分へと深くかかわっていくことになるのではないか。当該部分を再掲する。

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ 

975月の衆議院での河川法改正審議の際、一人の自民党衆議院議員が、「住民の意見聴取手続を義務づけたのは河川整備計画のみ」だが、「基本方針にも地域の意向が十分反映されていかなければならない」のではないかと批判的に質問をしたときのことだ。当時の河川局長が「基本方針で定めた中ではこの整備計画がどうしてもできないということになれば、またこの基本方針のあり方についても再度検討をする、そういう仕組みを考えておるわけでございまして、この河川整備基本方針に住民意見の反映の手続がないということをもって住民意見の反映がされていないという御批判は当たらない」と答えた。

市民委員会は、今年719日に国交省から利根川の基本方針について説明を受けた席で、布村明彦河川計画課長(当時)にこの答弁が現在も踏襲されていることをあえて確認している。住民意見を反映して策定する整備計画の段階で、問題があれば基本方針まで遡って再検討するという政策は、流域住民にとっては意義深いからだ。 

∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ 

そして、514()から、 球磨川水系の河川整備基本方針の内容や審議の状況を国交省 が県民に報告する「くまがわ・明日の川づくり報告会」が始まる。↓

http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/johoplaza/kisha/images/20070427.pdf 

1997年河川法改正以来、河川整備基本方針に住民意見が反映される、はじめてのケースが生まれていくのではないだろうか。アンケート結果からするとそうなるべきだ。川辺川にダムは要らないという、川とのあり方から、素直に入っていく問題だろう。

*参照 ぜんぜん分からない説明の一例 20061225日審議より

http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai/shakai/061225/index.html 

国交省の説明

(略)上流・中流・下流について流し得る流量を検討した結果、河道のみでは基本高水のピーク流量を安全流下させることができないということで、洪水調節施設を必要としています。上流の基準地点人吉では、できるだけ河道で洪水を流すため、流し得る流量4,000m3/sを計画高水流量とし、基本高水のピーク流量との差3,000m3/sは上流の洪水調節施設により対処するというようなことで、きょう、この点についての実現可能性についてご説明させていただくことになったわけでございます。

 ()下流、横石地点でございますけれども、洪水調節の流量が流し得る流量以下となるため、これを計画高水流量とするということで、先ほどご説明したような結果でございまして、河川整備基本方針(案)と書いてあります計画高水流量図でございますが、人吉地点で4,000m3/s、渡で5,500m3/s、横石で7,800m3/sというような流量配分になっているわけでございます。

 その根拠でございますけれども、下に参考として、各地点における計画高水流量算定結果というのをお示ししてございますが、これまで経験いたしました多様な雨のパターンをベースに流出計算を行っておりまして、そういった中で一番大きなものを、今申しましたような算定に用いているわけでございます。

 ()洪水調節施設の実現可能性の検証に当たっては、洪水調節の選択肢の1つとして、既にあります市房ダムと建設中の川辺川ダムによりまして、洪水調節に必要な容量が確保可能かというような点を検証するということでご説明させていただきます。

~~

以上、長文を読んでくださった方、ありがとうございます。お疲れさまでした。

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