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2008年12月17日 (水)

黒部川ダム排砂差し止め訴訟判決

黒部川ウオッチング・富山ネットワークの金谷敏行さんから「黒部川ダム排砂差し止め訴訟」の判決についてお知らせをいただきました。許可をいただいたので、そのまま転載します。

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1126日に黒部川ダム排砂差し止め訴訟の判決が行われました。ダム排砂の差し止めや原告漁業者全員の被害は認められず、公害等調整委員会の原因裁定に沿ったもので、原告の一部勝訴の判決となりました。マスコミ報道では原告のわかめの漁業被害を認めたことから、原告一部勝訴と報じられています。問題の多い判決でありますが、たった14人の原告と事業を休止しているきわかめ組合だけで、巨大企業関西電力とその背後にある国に対して、裁判を起こし一部であっても原告側の主張が認められた、その意義は極めて大きなものであると言えます。

今回の判決で評価すべき点は、①わかめだけであっても黒部川によるダム排砂と漁業被害を認め2700万円余り補償を命じたこと。その背後には、諫早湾に次いで国(総務省)が公害問題で公害等調整委員会で原因裁定に入り、同様の被害の認定があったこと。②関電や国交省は黒部川のダム排砂にあたって、毎年「黒部川ダム排砂評価委員会」を開催し、「有意な漁業被害は認められない」として現行の排砂方法を追認していたにもかかわらず、評価委員会の環境評価と違う認定をしたこと。③関電は県漁連に漁業補償をしてきたので個々の漁業者に原告適格がないと門前払いの姿勢を見せたが、原告に漁業行使権を認め原告適格があると判断したこと。 などがあります。

海の生態系を考えるなら魚の産卵や幼魚時代の生育に欠かせない海藻に影響があるのを認めているにもかかわらず、魚への影響がないとするのは矛盾し、仮にわかめのみに影響があってもそれで原告が廃業をよぎなくされ、子や孫の代まで将来にわたって得られる資産的な価値から考えても、被害額2700万円あまりの補償はあまりに安い金額と言えます。また、判決では「(初回排砂以降も)環境に悪影響を与えずに実施すべき義務を怠った」と指摘していますが、被告関電は排砂評価委員会を設置しその後はこの委員会の答申に沿って行っています。にもかかわらず、排砂差し止めについては「(関西電力が)検討委員会の結果を尊重して排砂をしていく限り、差し止めまで認める必要はない」と判決を出しています。

この裁判で問われたのは、富山県で起こったイタイイタイ病に次ぐ大きな環境・公害問題の解決。そして、下流の宇奈月ダムとあわせて事業の公共性と行き詰ったダムの運用のあり方でした。出し平ダムの発電方法は他で代替できる、下流の宇奈月ダムは水を貯め続けていますが、今だ貯めた水を運用する水道利用のめどが立っていません。一方、関電と国土交通省は毎年億単位のお金をかけて排砂の影響の環境調査を行っています。その環境調査は「黒部川ダム排砂評価委員会」で漁業への影響はないと答申してきましたが、その答申内容も国の公害等調整委員会の原因裁定、そして今回の判決で一部にしろ漁業被害があるとされました。

数十年の先に土砂で埋まってしまうために全国でダム建設が行き詰っていますが、国交省は「環境にやさしい」ダムとして、最近のゲートを開放したままの穴あきダムを提唱しています。水を貯めずに治水効果のアップを図り下流への土砂の供給を目的としたダムです。このダムもいろいろな問題が指摘されていますが、すでにダムが建設されている場所では砂防ダムをスリット式と同様に改善策として一つの選択だと思います。

現代は複雑な利害関係が絡み合って敵と味方、加害者と被害者という単純な構図だけで割り切れなくなっています。電力会社にも国民にとって必要な電力を供給するという公共性があるでしょう。一方原告漁業者にも漁業資源の枯渇の中で「国民の食糧確保のため漁場と環境を守る」公共性があります。新しい時代に向けて、将来の世代に向けて禍根のない解決の仕方はないか考える必要があります。それにはまず、日本の中でも冠たる大企業の関西電力が(お金と権力を持つものが)歩み寄りの姿勢を示すことが人の道ではないでしょうか。裁判の判決のときにでも、自分たちにはたいした問題ではないとして弁護人さえ欠席する姿勢は明らかに間違っていると思います。

問題ないというアリバイ証明のために億単位のお金を毎年かけるなら出し平ダムで水を貯めず、下流の宇奈月ダムの排砂ゲートを常時開放して穴あきダム化すればいいのです。そして、関電に公益事業としての公共性があるのなら、その漁獲高の激減のため廃業の危機の中でも漁業を続けている原告漁業者への補償と富山湾の漁場と環境回復のための費用にあてるべきではないでしょうか。

一審では関電が控訴した後、12月10日に原告も控訴しました。控訴の記者会見では原告代表の佐藤さんが、その日に上がったヒラメを見せて記者会見。ヒラメは排砂によって、最近異常に繁殖してきたヨコエビにによって、捕獲した後に食べられ商品価値がなくなったものを公開しました。最高裁までおそらく、続けられる裁判になるでしょう。十数人の漁業者が黒部川をそして、富山湾を守るために取り組んでいる裁判を引き続き注目してください。そして、ご支援をよろしくお願いします。最後に、黒部市民の一人でこの間黒部川の問題を自身のホームページで取り上げていただいている平野さんという方が自身のホームページで「黒部川 関西電力ダム排砂訴訟の判決」のをupされたので紹介します。

http://www.mrr.jp/~jf9hjs/index.html 

黒部川ウオッチング 金谷敏行

黒部川ウオッチング・富山ネットワーク 金谷敏行

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以上、転載でした。

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