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2009年2月23日 (月)

受精卵取り違え

先週中に出来なかったことを週末にひとつだけ済ますことができた。後は全部積み残ったまままた新しい週が始まった(ため息)。

以下は中途半端なメモだが、あえて載せておきたい。

体外受精での受精卵取り違えニュース。不妊カップルの思いを受け止めている医師ならありえない。「この事件が繰り返されてはならない」と思う気持ち(考え方)をひとりの体験者として、提供しておきたい。

20代の女性が受精卵を取り違えた「かもしれない」と聞かされ中絶したという話。翌朝の朝ご飯の会話で私の口をついて出てきた言葉は「私だったらそのまま産んだかもなぁ」・・・だが、それはその先のことを考えると軽々に言える言葉ではない。

もしも、そう選択をして産んだとする。だが、もしも受精卵の本当のお母さんの方に子どもがそのまま授からなかったとする。そのお母さんからすればこれほどの苦しみはない。自分の子どもを他の女性が産み・育てるのに、自分にはそうできない。自分の子どもが育っているのに何故かそれを産むのが自分ではない。自分の手元で育つのではない。

そして、そうなる可能性がとても高い。40代の体外受精の成功率は一般的には20代の体外受精の成功率よりもずっと低い。なぜ、よりによってうまく着床する受精卵が、他の女性の身体に移植されてしまったのか。その同じ受精卵が自分に移植されていれば自分が母親になることができたのに、という思いを、我が子が存在しながらずっと思うことになる。他人にそんな思いをさせながら、その子を産み育てることを意味する。

そして、自分の子か、他人の子かどうか分からず、それがどちらであっても絶対の愛情で育てると決心したとしても不安がつきまとう。まして、もし他人の子どもだと分かったあとは、放れたり連れ戻されたりしてしまうかもしれない、うまく育っても、実の親に会いたがったり自分と比較したり、しなくてもいい思いと不安と闘わなくてはならない。一緒に育てましょうというわけにもいかないだろう。私の子を返してと言われたらどうするのか。不妊治療に伴う心の痛みが分かるだけに、相手の心と自分の心と「我が子」の心の揺れの中で一生、たゆまぬ心の整理が必要になる。夫婦間の思いや親族の思いもその整理の中に加わる。

子どもには出生のトラブルを物心つく前から話をしたとして(もし、自分の子ではなかったことが後で分かったとして、あなたには生物学的母親と私の二人のお母さんがいるのよと)、二組の親の間で冷静な話し合いができない場合だってあるだろう。そのときに、子どもの心の中に何が起きるのかを考えると、せっかく授かった命だからと即決できるものではない。絶対の愛情ってなんだろうか。

一方で、取り違えの可能性という話だから、もしかすると20代の女性が中絶したのは、待望していた自分の子どもかもしれない。もし、この先、二度と妊娠することができなかったら、その可能性を後になるほど狂おしく思い起こすことになるだろう。

二組のカップルに一生癒えない心の傷を与えてしまったことを、今回の失敗をした医師は忘れないで欲しい。その他のすべての医師も思い起こして欲しい。なぜこんなことが起きたのかという責任やメカニズム、再発しないようにという責任体制やメカニズムが議論されていくことになるだろう。でも、もっとも忘れて欲しくないのは、二組のカップルに一生癒えない心の傷を与えてしまったことであり、それを繰り返してはならないということだ。

その心の傷の深さを自分の中に取り込んで考えたら、何があろうと、こんな事件が再発されるはずがない。責任体制やメカニズムなど、頭で考える前に、まず、心でこの事件を捉えて欲しい。

【蛇足】

患者の心は、「事件」のあとに二度三度繰り返し傷つけられることがある。どれだけ待望するからこそ治療を選択し、どれだけ医師や病院を信頼するからこそ身を預けていたのか、その気持ちが裏切られたという、事件そのものとは別の傷を生んでいる。事件が起きたこととは別に、その事件がいとも簡単に起こさせてしまった医師の医療に対する姿勢に幻滅し、裏切られた気持ちになるのだ。そして、事件そのもの傷に加えて、患者の信頼を裏切る医師の存在そのものが患者に傷を与えることを、医師や病院が振り返ることなく、その信頼が裏切られた患者の心の傷に寄り添い理解するのではなく、「事件」から自分たちの身を守ろうとすることに気が向いた瞬間、患者は三度目の傷を受けることになる。

今回も、取り違えに気づいてから、二組の患者に告げるまでには時間が経ち、しかも時差があったと聞く。二組の患者は、少なくとも既に3度、傷ついている。取り違え(1)、医療への信頼への裏切り(2)、医師側からの(おそらく)自己防衛のための真実の提供の遅れ(3)。最初の二つの傷を心で受け止めれば、3つ目はありえなかったと思う。

ダム日記2になぜ、この話題?と思った方は、宣伝めいて恐縮ですが、

「日本で不妊治療を受けるということ」(岩波書店)

「あなたらしい不妊治療のために

-カウンセラーと経験者からのメッセージ」(保健同人社)をご参考まで。

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