« どうにもこうにも水余りな日々 | トップページ | 公文書管理法成立 »

2009年6月21日 (日)

原発ゴミ処理費情報に風穴(ベルギー/オーフス条約)

昨日、グリーンピース・ジャパンスタッフのクジラ事件が一体、日本社会にとってどのような意味を持つのか、と考えさせられるシンポジウムがありました。その後、スピーカーの一人で、ベルギーから来日したDirk Voorhoof博士と、隣り合わせで食事をしながら(博士いわく“Between soup and potato”)取材未満、雑談以上のお話をさせていただくことができました。

話は「言論の自由」から始まって、あちこちに飛び、すべての話が興味深かったのですが、「オーフス条約(★)」の話になり、「最近、とても面白いことがあり、原稿をホームページにあげたばかりだよ」という。ベルギーの緑の党「GROEN!」の政治家Tinne van der Straetenさんが「原発ゴミの処理費」情報へのアクセス権に風穴を開けたというのです。

この政治家はNIRAS(Belgian Agency for Radioactive Waste and Enriched Fissile Materials)という(日本で言えば原子力発電環境整備機構のような役割を持った組織?)機関に核廃棄物の処理にいくらかかるのかという情報を開示するように請求をした。5年に一回、定期的に発行している報告書があるのだそうです。

ところが非開示。一部黒塗りで開示すら拒否。なぜならば、この情報は国家の安全が関わっており、企業秘密も含まれているとNIRAS。一部を黒塗りにして公開すればあらぬ誤解を生みかねないと主張した。

そこに割って入ったのが、オーフス条約のもとに作られた独立委員会で、この委員会は核物質の場所や形体といった詳細を除いては、開示請求された報告書は公開しなければならないと裁定した。

ところがNIRASはその決定に従わずに保留。

これに対して今度は行政裁判所が(このケースの最高決定機関にあたるようです)、オーフス条約に基づく独立委員会の決定を是とした。手に汗握るどんでん返しにつぐどんでんがえし。「ところが面白かったのは、開示されてきた報告書を見るとね、一部黒塗りの部分は理解できるんだけど、『国家の安全』とか『企業秘密』とか一部黒塗りの公開すらダメと言っていたのは、全然そんなことなかったんだよ」「つまりウソだったんですね!」とカタルシスを感じながら叫ぶ私。「そう!ウソだったんだ!」と私の単純な英語につられてしまった博士。面白い!ということで、記事のURLを教えてもらいました。

The real price for nuclear power not secret anymore
By Brigitte Alfter and Dirk Voorhoof
http://www.wobsite.be/index.php?page=4&detail=475&PHPSESSID=5caa0cc269d5567a3909a2b048ab2510

オーフス条約のもとに作られた独立委員会の「独立性」にほれぼれ。

「ところでオーフス条約って東西欧州が統合されたときに東欧諸国の環境法制をレベルアップさせるために作られたって思っていましたけど、ベルギーでも使えるんですね!」って言ったら、ワカサギをつまみながら、エヘヘ、という顔をされていた。

「ところで、なんで、あなたはオーフス条約を知っているの?日本も加盟国?」と聞かれて、「いえいえ」から始まって、またまた話はヨソへと広がっていきました。

★念のためですが、「オーフス条約」とは、環境に関する①情報アクセス、②政策決定への参加、③司法アクセスの3つを柱に欧州諸国で結ばれている条約です。

シンポジウム本体もとても面白かったです。上記の取材未満、雑談以上の話とも重なるのですが、公益に関わること、環境、健康といった情報であれば、その所有者が公的機関であれ、民間機関であれ、個人であれ、それは公開されなければならない。そうした情報は「言論の自由」を確保するために必要である、という話でした。そのためには何をどこまでならジャーナリストやNGOはやっていいのかがシンポジウムのテーマでした。

情報を開示すべき範囲については、「公文書管理法案」の議論とも重なる話です。衆議院の修正で、「当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう」記録が残されていくことになりました(「軽微」という言葉がついているのを参議院でなんとかして欲しいですが)。また、民間企業が持っているものでも上記の定義に入ってくるものについては取得しなければならないということに同意をする形での政府答弁が確保されています。

けれども、日本は、どこまで何を公益情報と考えるのか、より深い議論が今後も必要になると思いました。

|

« どうにもこうにも水余りな日々 | トップページ | 公文書管理法成立 »

コメント

・最近、ひょんな事情から日本での高レベル放射能廃棄物処理コストを知りたいと思っているのですが、不案内な分野でよく分りません。
(1)V博士のHPをのぞいて見ましたが、「処理費情報へのアクセスに風穴」とは書いてありますが、その結果「(どういう前提条件で)費用はいくら?」という数字が見当たりません。ご存知でしたら教えて下さい。
(2)日本での処理費はもっと分らない。何を見たら(比較的でも)客観的に正確な資料がありますか。天文学的な数字という情報もあります。

投稿: 河登一郎 | 2009年6月21日 (日) 06時54分

日本での高レベル放射能廃棄物処理コストですが、処分地として公募し、調査するだけで、その応募自治体は6年間で最大90億円を受け取ることができます。これには処理費は含まれていません。NUMO(原子力発電環境整備機構)さんにお聞きいただくのがよいでしょう。ご参考までに「お金」以外のコスト(リスク)については、今は廃刊となった2007年8月号「論座」に「それは、「闇」社会からもたらされたー高知県東洋町「放射性廃棄物処分地」騒動記」という記事の中でも書きました~。ベルギーのケースについては他にもメールでいろいろ反響、お問い合わせをいただいていますが、詳しくは少々問い合わせが必要です・・・。

投稿: まさの | 2009年6月29日 (月) 19時28分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/82688/30202659

この記事へのトラックバック一覧です: 原発ゴミ処理費情報に風穴(ベルギー/オーフス条約):

« どうにもこうにも水余りな日々 | トップページ | 公文書管理法成立 »