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2009年12月12日 (土)

非公開で議事録公開のワケ

【最初に蛇足】
公開だ非公開だというのは、治水対策をどうすべきか、という本質論からすれば空中戦に属し、このことを主張すれば主張するほど、中身の議論からは遠ざかり、官僚にとっては思うツボである。しかし、民主主義の通貨(曰くラルフ・ネーダー)として、公開されていることが、中身の正当性を最低限、担保する術である。基礎の基だ。

「非公開にして議事録を出す」官僚にとっての意味
前のコマでリンクを張らせていただいた「徳山ダム建設中止を求める会」事務局長が、議事録も出すのに「なぜ非公開か」と問うた問題に関して、一つの視点と、二つのエピソードを共有しておきたい。

根深い会議規約(案)による官僚コントロール
12月3日、「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」終了後、
会議の中身の報告ということで、国交省記者クラブで政務官がブリーフィングを行い、
会議に使われた資料が配布された。↓コチラ
 第1回 今後の治水対策のあり方に関する有識者会議 配布資料
 http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/index.html 

ガックリきたのが会議規約(案)の第4条。「7 会議における議事録については、あらかじめ委員に確認の上、発言者氏名を除いたものを国土交通省ホームページに公開するものとする」という文言だ。http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/resource/y2009e72efe45a416bd2cf6d1d7ddaf848bdcaef08ab1e/%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%8D2_%E8%A6%8F%E7%B4%84%EF%BC%88%E6%A1%88%EF%BC%89.pdf

これは、河川整備基本方針検討小委員会で、口頭で会議の最後に断っていた文句だ。たとえばコチラ

「最後に本日の議事録につきましては、内容について、各委員のご確認を得た後、発言者の氏名を除いて国土交通省大臣官房広報課及びインターネットによって一般に公開することとします」と繰り返されていた。

「それなら情報開示請求をすれば発言者氏名のついた行政文書が出るなぁ」と思って、私自身、開示請求→不存在→不服申立/裁判へと雪崩こんでいったことにつながるのだが。(このときは、請求した途端、ルールが変わった。「最初から発言者名を入れないことにした」ので「不存在」となったのだ。)

規約(案)第4条を見ると、彼らは「学習」をしたらしい。発言者名入りの議事録を開示請求してもまた「不存在」というのだろう。これは私だけが分かる暗号(河川局からのメッセージ)か?と被害者妄想したくなったぐらいだ。

ちなみに、河川整備基本方針検討小委員会の運営規則には、発言者氏名を除く云々のがんじがらめの規則はなかった。以下の通り↓
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kihonhoushin/011127/011127-rule.html
(議事の公開)
第7条  会議又は議事録は、速やかに公開するものとする。ただし、特段の理由があるときは、会議及び議事録を非公開とすることができる。
2 前項ただし書の場合においては、その理由を明示し、議事要旨を公開するものとする。 3 前2項の規定にかかわらず、会議、議事録又は議事要旨の公開により当事者若しくは第三者の権利若しくは利益又は公共の利益を害するおそれがあるときは、会議、議事録又は議事要旨の全部又は一部を非公開とすることができる。

高橋ユリカさんも書いていたが、政務官による「非公開ということを認めていただいた」という事後報告にも驚いた。有識者に「困る」と公開を阻まれたならともかくも、最初から主催者が非公開を頼んで了承されたことを示す。規約(案)を官僚に渡され、非公開にして議事録を公開することの意味を考えてもみなかったのだろう。

「自由闊達なご議論」を確保しても議事録は改ざんされる
先述した河川整備基本方針検討小委員会での利根川水系の議論の際、当時の近藤徹委員長(元河川局長→元水資源開発公団総裁=元水資源機構理事長→現・水資源協会理事長)と布村明彦河川計画課長(後の淀川地方整備局長、今はどこに?)との間で、利根川水系で作るダムは「八ッ場ダムで最後でございます」(課長)「いよいよ、首都圏でも脱ダムですかな」(委員長)というやり取りが、実際にはあった。

ところが、後日、ホームページで議事録が公開されたとき、このやり取りは跡形もなく消えていた。改ざんの理由は分かる。なぜなら、この小委員会で議論されていた利根川水系の基本高水流量をクリアするためには、「八ツ場ダムが最後」というわけにはいかないのだ。計算上、八ツ場ダムの他にさらに何基ものダムが必要となる非現実的な数値を定めるための小委員会だった。「八ッ場ダムで最後」「首都圏でも脱ダム」という二人のやり取りは、もはや利根川水系で八ツ場ダム以降、新たなダムを作る計画がないことを示す。それは何を意味するかと言えば、利根川水系における基本高水流量が非現実的で、達成不可能であることを、二人とも(元河川局長と河川計画課長)が認めたことになる。「八ッ場ダムで最後」「首都圏でも脱ダム」って会話はそういうことなのだ。

当時、この重要な発言を取り上げたメディアがなかった。私自身は「未来世代にとって八ツ場ダムは必要か」(岩波書店「世界」2008年4月号)に記録したが、この会議はマスコミにも一般にも公開されていたから、私の他にも、この二人の発言を聞いた人は何人もいた。

自由闊達な議論があっても、議事録ではそれらが摘まれてしまう可能性がある。官僚にとっては「発言者の自由闊達」度を守るフリをして、言論統制をする力の源泉である。

この巧妙な力に新政権が抗うとしたら、すべてを原則公開にすることしかないのではないかと思うのだが。

公開されていたら廃止されていた法律もある。
ある学者が雑談の中でこんな話をしてくれたことがある。随分昔、水資源開発(ダム開発)の根拠である水資源開発基本計画(フルプラン)の根拠法「水資源開発促進法」はもう役割を終えたから廃止したらどうだ、とある審議会で語ったという。しかし、担当課長が飛んできて、「先生、この発言削除してください」というので応じてしまったという話だ。この法律がすでに用なしであることは、誰もが分かっている。勇気ある「有識者」の発言を社会は支持する力があることを信じて欲しいのだが、官僚に改ざんを要求され、主張を曲げることをヨシとしてしまう学者がいる。「御用」を続けたい有識者と「仕事を死守したい」官僚のこんな組み合わせが、社会が生まれ変わる力を削いでいる。

非公開にした上での議事録公開とは、結局、官僚によるコントロールを容易にさせることを意味するのだ。

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