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2010年7月31日 (土)

ダム見直しの失敗(その28)官僚の裁量、政治的行政からの脱却

河川官僚政治から民主党政権が脱却するかどうかを示す好例が出てきました。

7月23日、成瀬ダムをストップさせる会(代表 奥州光吉)が有識者会議のとりまとめ案に対し、「他の7つの治水代替案と比較を行い、成瀬ダムがコスト的にも最も有利であるという結論を出した」事業体がダム事業を見直せるのかと問い、第三者による見直し住民参加や十分な議論を確保することを求める提案を前原大臣らに提出しました。

その要望書を見てみると、彼らがそのような疑問を呈したのは、
「暫定豊水水利権」が金科玉条のようにダム建設の理屈に掲げられているからです。

どれどれ?と推進派のパンフを見てビックリ。
絵に描いたような「暫定豊水水利権」を金科玉条にした典型でした。
パンフ→ http://www.stop-narusedam.jp/pdf/zettaihitsuyo2009p.pdf   
成瀬ダムの完成を前提「暫定豊水水利権」により取水が認められ」
「渇水の時には取水できない非常に不安定なもの」
成瀬ダム建設をやめると、この暫定豊水水利権さえもなくなり農業用水や水道用水が取水できなくなることも考えられます」とあります。

私が(その16)で書いたことはまさにこういうこと。

お気づきでしょうか?2つの意味で、非常にうまく書けています。
成瀬ダムは絶対必要です!」とドデカク書きながら、
よく見ると、「ダムの完成を前提に」「農業用水や水道用水としての活用が始まっています」と、すでにダムなしで取水ができていることが目立たない黒字で書かれています。

まるで夕刊紙ですね。

ところが、赤字で再び「農業用水や水道用水が取水できなくなる」と書かれています。
でも、よく読むと、「取水できなくなることも考えられます」という表現です。
「取水できなくなる」わけではないことが彼らには分かっているからです。
知能犯ですね。頭いいですね。

頭の回転が鈍い私が(その16)でうまく書ききれなかったことをこれに乗じて強調しますが、

暫定水利権には2つあり、
ダム建設を前提とする暫定豊水水利権
ダム建設などは前提しなくても成立する暫定水利権があります。

この場合、ダムを作らない選択をしたら、暫定豊水水利権から暫定水利権に切り替えればいいだけの話です。河川官僚の裁量、つまり河川官僚政治でそのルールが好き勝手に定められてきた

それを政治判断で、今後すべての暫定豊水水利権を無くす。たとえば、長期の暫定水利権に切り替える、と言えば、もう明日からでも、この成瀬ダムを推進する利水上の理由は、少なくとも国から見た場合になくなるのではないでしょうか。

また、上記の要望書には地元住民ならではの地元事情が書き込んであります。
======================
地元の負担を何とか少なくできないのかという秋田県や、地元代議士の意向を最大限受け入れるかたちで、東北地方整備局は、むしろ「先に成瀬ダムありき」の立場から治水上効果が薄い(極端に集水面積が小さい)ことなどを承知のうえで「多目的ダムへの格上げ」へお膳立てしました。
======================

これならば、治水についても、代替案は見つかりやすい。

官僚は、本来は、法律に基づいて仕事をするだけのスタッフですが
形式ばかりの国会が、いつまでも立法機能や監視機能を発揮せず、
自治体行政自治体議会も、
「雇用」や「産業」をハコモノ公共事業に頼るばかりの発想に基づき、
持続的な経済、環境、社会にとって合理的な判断を行うことなく、
官僚が、法律の枠内での裁量を駆使して政治的な判断で物事を決めるという国づくりを、「選挙屋」である国と自治体の政治家が行わせてきたとも言える。
やがて、その不合理性に合わせて、ダム建設の理由を裁量を駆使して考え、
官僚は官僚で持続可能な天下りシステムにそれを利用してきた、と言えないでしょうか。
そして、国民はお任せ民主主義でここまで来た。みんなで変わらなければ。

「今後の治水対策のあり方について 中間とりまとめ(案)」
には、利水に関するダムの代替案が14項目、挙げられています。
しかし、ダムの代わりに「利水単独ダム」というワケのわからん代替案(苦笑)は問題外としても、

また、P.47~
(8)他用途ダム容量の買い上げ
(14)ダム使用権等の振替
(15)既得水利の合理化・転用
(16)渇水調整の強化
など、まともな代替案があがっていても、それらはこれまでにもあった選択肢です。
それでもそれが行われて来なかったのは上記のような背景があるからでしょう。(それ以外に理由があったら教えてください!)

それを許容する河川管理者(国または自治体)の「水利権」許可のルールが変わらなければ、これまでダム計画を進めてきた事業体は、これまでのやり方の「正当性」を主張するために、同じ理屈で、ダム建設がコスト面からもベストという答えをいかようにしてでも出せてしまう。

民主党政権が河川官僚政治から脱却できるかどうかは、
こうした細部(官僚の裁量行政からの脱却)に宿り
人々が期待しているのはそういう変化です、多分。

しかし、今のところ、私も成瀬ダムをストップさせる会が感じている懸念を感じています。

(充実したウェブサイトなので必見、オススメです。↑

&秋田魁新報http://www.stop-narusedam.jp/img99/sakigake_100724.jpg

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ダム見直しの失敗(その27)から見える国と地方の関係

こうなってくると、単に、国が治水のあり方をどのように変えるのか
という切り口からもう一つ別の局面が見えてくる。

1.「合理的な説明のつかない負担金を支払わない」という当たり前のやり方は、大阪府の橋下府知事から始まって定着した。つまり、国が事業を行う場合の自治体が払う負担金のあり方は、完全に変わった。知事会などからの要望も相まって、国直轄負担金は完全廃止の方向へ向かって、実現の道を辿っている。(利水者負担金はまた別の話で、これは自治体の判断で参加しているので払うべきだし廃止の方向ではないが)

2.本来は、自治体が事業を行う場合の、国からの補助金のあり方も本来は同時に変わらなければならない。

3.このことはずっと以前に、大阪府の件を取材していたときに、財務省の人間も考えていた。自治体から国への負担金をやめるなら、国から自治体への補助金もやめるべきだ。国と自治体のいわゆるもたれ合い、事業を進める上での縦割りな相互依存関係、縦割りな相互束縛関係は、断ち切るべきではないか。

だから民主党政権は、「一括交付金」へ向かい始めたと思うのだ。新たな再配分制度。

菅直人新政権が議論して考え、実現すべきことはすでに山積みだと思う。

余談を言う。

菅さんは首相になって以来何度も「政権交代を達成した」というが、いや、そうじゃない。
それは、衆議院の議席を民主党が多数を占めたというだけで
人々が望んでいるのは自民党が進めてきたこと以外の「政策転換」であり、
それはなんなのかで、人々の次の投票行動は決まる。

「なんだ自民党と同じじゃん」というのがある意味で人々が参議院選挙で出した答えで
人々が望んでいるのは、
民主党が政権をとり続けることでもなんでもない

それが分からない限りはポピュラーな首相にはなれないですよ、菅さん。

一つ一つの政策の細部に宿るさまざまな大きな柱を
すげ替えていくこと、それをどう見抜けるのか、
首相になるということは、細部から大きな柱を見いだし、
新しい柱を立てるための見抜く力がついたということ
その訓練が完成したこと、のはずなんだが
貴方はまだその地位に達して
いまさら「政策コンテスト」をしなければならないほど
現実の解決しなければならない問題が見えていないのかと、ちょっと唖然とした。
いや、遠慮なく言えば、ガックリきています。

ダムの問題をひとつの題材に、

国から地方への税の再配分問題をどうするのかを考え、

国民世論に耳を傾け、議論し、決断し、国会で説明責任を果たすこと

菅直人首相、よろしくお願いします。

前原誠司国土交通大臣、よろしくお願いします。

まさのあつこ

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ダム見直しの失敗(その26)予測例:1都5県

ダム見直しの失敗【歴史編】が止まっている間に、さらに多くの動きが出てきている。

1.今後の治水対策のあり方に関する有識者会議「今後の治水対策のあり方について 中間とりまとめ(案)」についてのパブコメが始まった。

2.八ツ場ダムを推進している知事達が、国に求められている八ツ場ダムの直轄負担金を、「検証結果を早期に出すことが明らかになるまでの間、1都5県は、当面、負担金の支払いを留保する」との申し入れを行った。

八ッ場ダム建設事業に係る平成22年度負担金に関する1都5県知事の申し入れ 
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=96373 

3.このことについて各県での記者クラブでの質疑が行われた。記者の質問要旨はほぼ共通で「一都五県の知事が八ツ場ダムの負担金を留保する話について」、そして答えは以下の通り。

●東京:石原知事
http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/kako22.htm
2010/7/30→ 7:30
「私の考え通りやっただけの話」
「国は態度をはっきり決めた方がいいと思いますよ。お互いのためにね」

●千葉・森田知事
千葉県インターネット放送局
http://www.pref.chiba.lg.jp/kouhou/net-tv/chijikaiken/index.html 
最新映像→平成22年7月29日(木曜日)→24:00分あたり
(負担金を)「出せと言っても出せない」
(主導したのは)「これは石原知事です」

●群馬:大澤知事
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=96419
平成22年7月28日(水)質疑の冒頭
(前略)「過日、中間報告の取りまとめが出ましたが、それを検証してみても、工程が明らかになっていません。工程を明らかにしていただかないと、群馬県にとりましても、地元の住民の苦痛、苦悩(が晴れること)の見通しが立たないわけですし、下流都県の方々にすれば、治水・利水の問題(の見通し)がはっきりしないので、国に工程をはっきりしていただきたいということです。」(後略)

以上3つ。

・・・実際に工程は明らかで、結論に期限が設けられていないので、早くというなら、自分たちで早く結論を出せばいいだけでもあるのだが・・・。埼玉、栃木、茨城での会見は現時点ではまだで、ここまでですでに、5県が東京都知事に右へならった形で今回の申し入れが行われたことが分かった。

問題は何か?

不払いを発案した都知事の膝元である都議会では、「過大な水道施設の整備を避けるため、都は水需要予測の見直しを早急に行う必要がある」との「水需要予測の実施に関する請願」が、今年6月の議会で採決されたばかりであることだ。見直しはまだ始まっていない。

順序から言えば、都行政が、都議会に求められた水需要予測の見直しを始めることが重要で、それを行う前に結論の時期を示せというのはムシがよすぎる、というか、頭がいい。

最近、とことん思うのだが、「頭がいい人」は、世の中がよい方向へ進むように「頭の良さ」を使えばいいのだが、そうじゃないとき、「不幸」を拡大する。

東京都はこれまでにもインチキな水需要の見直しをやってきたが、
今度こそ、適正な見直しを実績に合わせて行えば、ハッピーな状況が生まれる。
東京都民も、将来、水道料金がムダに上がることを避けるために、ここはきちんと監視すべきだろうと思います。他県も同様です。

その上で言えば、知事は「ダム推進」という政治的意志を固めてしまっており、
ほんとうは頭のいい人なのだから、
「不要なダボダボの水」で水道料金をあげることになることに対しては
「誰が考えたってNOだろ」と言いそうな人なんだが・・・、今となってはそうなりがたい。

こうした政治的意志の固まった知事が、見直しの主体となるのが、
有識者会議が提案した検証方法なので、

「そんなやり方では八ツ場ダムだってできてしまう!」と叫んでしまった私が、
そもそもこのシリーズを書くきっかけとなったその1 の背景に、やっとここでつながりました。

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2010年7月23日 (金)

ダム見直しの失敗(社説や河登一郎さんなど)

やるべきことが終わらずブログを書けていない間、今後の治水対策のあり方に関する有識者会議「今後の治水対策のあり方について 中間とりまとめ(案)」について各紙社説が出てきた。

●ダム検証―見直しは市民参加で
http://www.asahi.com/paper/editorial20100720.html#Edit2 
朝日新聞(2010年7月20日)
●脱ダム治水対策 公正な結論が出せるか
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2010071602000080.html 
東京新聞(2010年7月16日)
●ダム事業検証基準 幅広い治水対策を前提にせよ 
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201007207441.html 
愛媛新聞(2010年07月20日)
●「脱ダム」提言 流域一体で治水対策を
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100719k0000m070154000c.html 
毎日新聞(2010年7月19日)

この中で首を傾げたのは「今回の案は大いに歓迎したい」と無邪気で、「有識者会議が提案する治水手法では、水路や遊水地の建設で立ち退きを求められる住民も出てくる」とピンぼけた毎日新聞の社説。変だなと思っていたら、それと関係があるのかないのか、偶然見つけた。↓

見直しをする主体であるひとつ、独立行政法人水資源機構の理事に
毎日新聞の元(株)毎日新聞社常務執行役員グループ戦略本部長が選任されていた。
http://www.water.go.jp/honsya/honsya/outline/saiyou/pdf/kekka01_02.pdf 
http://www.water.go.jp/honsya/honsya/outline/saiyou/pdf/kekka03_02.pdf 
釈然としない。選考委員も名前が公表されていない。↓
http://www.water.go.jp/honsya/honsya/outline/saiyou/pdf/kekka04_02.pdf
無邪気過ぎると思うのは私だけ?

さて、
●八ツ場あしたの会が、7月15日、八ッ場ダム等の再検証に関する緊急提言(7月11日)
に続き、
1.残事業費を基本とするコストの最重視でよいのか
2.ダム予定地の人々はいつまで生活再建を待たされるのか

との2点に焦点をあてた緊急声明を出した。リンクを張らせていただきます。↓
http://yamba-net.org/modules/page/index.php?content_id=5

また八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会河登一郎さんが、このままでは、八ッ場ダムの「中止宣言」が骨抜きになってしまう。本来何をすべきなのか、ということを直訴するために、議員会館に出かけて、菅直人総理大臣と前原誠司国土交通大臣宛に申し入れてきたそうです。こうした懸念の声はちゃんと届くのでしょうか?
転載許可をいただいたので、原文と以下のテキストを張り付けます。

「kawato_ichiros_proposal.doc」をダウンロード

================================================
内閣総理大臣 菅 直人 様
国土交通大臣 前原 誠司 様
関係各位

八ッ場ダム事業をこのまま進めると「中止宣言」が骨抜きになります
  2010年7月20日
埼玉県 河登一郎
(八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会 会員)
〒359-0041 *********
***(ここでは伏せます)

冠省
昨年新政権発足直後、前原国交大臣が新政権の最重要公約の一つとして143ダムの見直しと、八ッ場ダムの中止を宣言され、その後現地及び下流都県知事からの度重なる中止撤回要望に対しても建設中止姿勢を堅持しておられることは新政権の正しい政策判断と敬意を表します。
その後、有識者会議、国交相と地域住民との話し合い、平成22年度予算、湖面1号橋入札問題など事態は少しずつ動き始めており、国民はその帰趨に強い関心を寄せています。
私は、八ッ場ダム差し止め訴訟に参加し、5年間にわたって本件の表裏に関する諸点を検討してきた国民の一人としての問題意識から以下提案させて頂きます。なるべく具体的且つ率直に申し上げます。

1.八ッ場ダム事業はこのままでは「中止宣言」が骨抜きになります:
(1)国交相は、「ダム本体の工事は止める。しかしそれ以外の工事は『生活再建工事』     と位置づけ続行」としています。湖面1号橋などダム建設を中止すれば不要・有害な工事も含めて建設は続行しています。

(2)ダム本体にかかる費用は全体の約9%、500億円規模ですから本体を止めるだけでは不充分です。ダムを中止した場合に必要となる真の生活再建・地域再生の費用のみを取り出す精査を行った上で必要な工事と補償に絞って支出する方策を講じなければ、税金のムダ遣いは止まりません。

(3)このままでは、ダム本体だけを建設しない根拠さえ薄弱になり、民主党の看板政策である「八ッ場ダム建設中止」は実質上実現しません。いくら「ダム本体は建設しない」と繰り返しても、外堀が次々と埋められてダム本体工事に向かって進んでいるのですから、事実上の公約違反になります。

2.今からでも対応可能です;「事業仕分け」と「凍結/ポジティブリスト」が有効です:
(1)このまま関東地整に任せると骨抜きになることは上記の通りですが、未発注の工  事はまだ3割近く残っていますし、地滑りや崩落防止のための追加費用がさらに必要ですから、今からでも間に合います。急げば2,000億円規模で税金のムダ遣いが防止できます。そのためには以下の措置が不可欠、且つ急を要します。

(2)事業仕分けが急務です。即ち、ダム中止を前提として、
①中止に伴って不要となる事業;
②中止の場合、内容を変更・縮小・或いは一部拡充して継続すべき事業;
③中止後も必要な基礎インフラなどの事業;
④補償(特に諸般の理由で正当な補償をまだ受取っていない未取得者)、
を早急に仕分けるべきです。予算執行上の「箇所付け」にも正確な仕分けが大前提です。

(3)この仕分けを実施するに当たっては、
①原則として全工事を凍結する。
②急を要する工事や補償に関しては、例外としてポジティブリストを作成し早急に実行する。これは多くの地元住民の不安を取り除き、心ならずも建設続行を叫ぶ必要性をなくす意味でも極めて重要ではないかと考えます。
③大臣の明快な指示の下、国交省の緊急課題として「事業仕分け」に全力投入する、
その作業は国交省職員の作業が重要ですが、市民団体や専門家及び現地との協働も不可欠です、
④昨年の選挙で大量当選した1年生議員の中から、都市計画・公共事業・財政などに専門知識や関心のある議員20~30名を選んで協働すれば実地教育の意味もあり効果的です。

以上、「八ッ場ダム」建設中止を実行するために是非ご検討頂きたくお願い申し上げます。

草々

===============

以上転載でした。

国を成すものなんて、一人ひとりの思いの結集やつながりでしかない。

ところで、暑いですね。私の夏の原稿書きスタイルは
背中に、枕型アイスノンをタオルとTシャツで固定、
首筋に、ハンカチで保冷剤を固定。
冷えてきたら前者を太股の下、後者を脇の下に・・・
涼しいので、オススメです。

さあ!今日こそ、あの原稿とあの原稿とあの仕事を片付けるぞっ!そしてブログとパブコメのススメ・・・。

今日発売の週刊金曜日(2010年7月23日 808号 )の特集 
http://www.kinyobi.co.jp/backnum/tokushu/tokushu_kiji.php?no=1240 
「参院選と民主党「革命」4 「政治」を動かすのは市民だ」
以下のお二人にインタビューをしています。是非ご覧ください。

五十嵐 敬喜さん
(内側から国を変えていく政策形成システムへ市民参画を)
梶山恵司さん
(林業再生の提言をきっかけに シンクタンクから国家戦略室へ政治任用)

それと、一度宣伝させていただきましたが
「事業仕分け」の功罪 ――成果と課題は、民主党を映す鏡――
http://www.iwanami.co.jp/sekai/2010/08/181.html
も、お読みいただければ嬉しいです。長いのに読んでくださった方、ありがとうございます。

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2010年7月18日 (日)

ダム見直しの失敗(その25)

今後の治水対策のあり方に関する有識者会議の第11回会議で示された「今後の治水対策のあり方について 中間とりまとめ(案)」は、その「巧妙さに解説が必要」なわけを、お預け状態の「歴史編」を絡めて書きます。

国土交通政務三役の言葉の端々から感じることを一言で言えば、彼らには「治水のあり方をかえよう」という意思と自信がある(ように見える)。その自信が見せかけでないとすれば、あまりにナイーブではないかと思えてしまう。そんなに簡単に「治水のあり方は変わらなかった」という歴史があるからだ。

2007年6月23日(土)に「川辺川を守る県民の会」総会に呼ばれてお話したときのメモをベースに書いていく。

●日本では住民参加や情報公開の制度整備が遅れ、1990年代にはいってもまだ
国や都道府県による公共事業のゴリ押しが可能だった。
住民にとっては、なんの了解もなく、突然、自分の住んでいる場所が、
「ダムの底に沈む」ことを知らされるというのが公共事業の姿だった。

例:苫田ダム(岡山県、完成2005年3月)
水没地住民がダム計画について知ったのは
1957年11月の山陽新聞記事「吉井川に苫田ダム」。

「寝耳に水の事態に驚いた岸川忠雄村長は、早速県庁に出向いて確かめたところ、
新聞報道のとおりダム計画は事実とわかった」
-住民編纂「ダムとたたかう町」(手帖舎)

●国民の意識が変わり始めたのは、すでに脱ダムを遂げた米国とさほど変わらなかった。
1993年12月、細川政権下で初めて、ダムの反対運動を行っていた市民団体が、建設大臣室に入った。五十嵐広三建設大臣が、長期化した大規模事業計画につき、「客観的に検討・評価して勧告する機関の設置が必要である」と発言。しかし、これだけで終わった。

1995年5月22日、長良川河口堰の本格運用が開始され、罪滅ぼしか、野坂浩賢建設大臣(村山政権)、「大規模な公共事業の進め方について、今後の大きな公共事業は、計画の当初からより透明性と客観性のあるシステムをつくる必要がある」と発言。

これを受け、1995年6月2日建設省が「大規模公共事業に関する総合的な評価方策検討委員会」設置を発表。これは、「ダム・堰事業については、大規模な事業であり、その建設に長期間を要し、また地域に与える影響も大きいにも関わらず、建設省の他の事業に比べて、地域住民の意見を聴取する都市計画のような手続きが制度上十分でなかったとの指摘を踏まえ、事業者が当該ダム・堰事業の目的、内容等について地域の意見を的確に聴取することを目的として6月30日に新しい評価システムをとりまとめ、試行することとした。」というものだった。

地域の意見を的確に聴取する!
これが、河川行政における初のブレイク・スルーだった。

●ところが、「地域の意見を的確に聴取する」の方法が具現化する過程でとんでもないことになった。

それまでダム事業を陳情して(させられて)きた張本人である知事が委員を選任するというもので、選任されたのは、関係自治体の長、議会議長、つまり、ダム推進をしてきた人、そして、その方針を下支えする学識経験者だった。

具現化の過程で、「地域の意見」が主権者たる住民や、参加意欲のある、意識の高い住民団体や環境保護団体ではなく、「地域の政治家の意見」となってしまった。

建設省が知事に見直しを丸投げした結果、中には、非公開、議事録作成なし、公聴会なし、たった2回の会議(顔合わせの回で、次回は結論を出しますとされ、2回目でその結論を出した)で推進結論を出した事業があった。

見直しは建前で、本音は事業推進のための「お墨付き機関」となってしまった。

そして、今回の「中間とりまとめ(案)」はこの見直しの枠組みに酷似している。(これについては後述)

●その失敗を挽回、いや住民意見を聞くという点を前に進めるために考えられたのが、1997年の河川法改正だった。今度はしっかりと、法律の中に、「関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない」(河川法16条の2)とはいった。

ところが、これも、インチキに終わった。(続く)

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ダム見直しの失敗(その24)

歴史編がお預け状態になっているままで申し訳ありません。

今後の治水対策のあり方に関する有識者会議で、パブコメが始まった。

募集期間が狙いすましたような夏休み期間・・・。
7月の3連休前日からお盆の最終日まで(7月16日~8月15日)。

しかも、どんな議論が行われた上で、まとまった案かと確認しようとしても、
5月以降に開催された非公開会議の議事録すらまだ公開されていない。ヒドイ。

第11回会議で示された「今後の治水対策のあり方について 中間とりまとめ(案)」

第10回会議で示された「タタキ台」に、「3点変更した部分がある」と津川祥吾国土交通政務官が記者ブリーフィングで語った。
・3章1「検証の概要」
・3章5「対応方針」
・10章「検討結果の報告等」

この変更部分が検討(見直し)手続のすべてであると言ってもいい。
1)ダム事業を推進してきた事業主体が検討して、継続か中止を判断
2)その判断(案)を事業評価監視委員会の意見を聴いて決定する。
3)検討結果を国土交通大臣に書面で報告する。
4)大臣は指示した手順や手法から乖離した検討がされたと判断した場合、再検討を指示する。
5)大臣は結果に応じて法令に基づき、手続を進める。

あらゆるシナリオを想定して巧妙に書かれている。
その巧妙さに解説が必要なので、それを書いていく。

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2010年7月17日 (土)

ダム見直しの失敗(ツイッター版)

13日夕刻に第11回有識者会議が開かれ、
「タタキ台」で隠されていた幕も開き最終案が姿を現した。
会議後の記者ブリーフに飛んでいった。

ダム見直し暗黒時代の到来。
この夜を「私たち」がこじ開けるしかない。

ダム事業の見直し方が、あっぱれな官僚用語で貫かれており、
翻訳すると「お手盛り」
と読める。

この間、地方取材が入り、
昨日、移動中に一足先にツイッターで13日以降のことを発信した。

ツイッターTL(書き込み)を自己抜き書きします。

13日に治水のあり方有識者会議がタタキ台を更新。事業者自ら、個別ダムごとの見直しの場を、関係自治体を中心に設置。関係住民の意見を聴く。ダム中止、継続の対応方針案を事業監視委員会、有識者会議にかけ、意見を聞いて、大臣が見直しの考えに沿っているかを判断。いなければ見直しのやり直し。about 18 hours ago via TwitBird

しかし、推進してきた国交官僚や公共事業頼みの自治体や政治家支持団体が態度を変えるとは思えない。 about 18 hours ago via TwitBird

住民意見を聞き置くだけじゃなく、見直しの主体で公募もして、公募に漏れても、傍聴者発言ができる淀川モデルを見直しの用件にしたらどうかと津川祥吾国交政務官に質問するが芳しくない返事。about 18 hours ago via TwitBird

事業監視委員会はB/Cの計算方法がおかしいと国交省に指摘しても、押し返されて黙ってきた人々。夜明け前が一番暗いというが、よは明けるのか? about 17 hours ago via TwitBird

ダム事業のB/Cは、流域をブロックに分け、各ブロックで堤防が切れたら最大に被害が出る所が、全部同時に切れると想定。出る被害の額の合計が、ダムにより軽減出来るとして、Bにカウント。しかし、あり得ない about 12 hours ago via TwitBird

13日、津川政務官会見で、1995から98年ぐらいに、住民を見直し主体に入れず、今回と同手法でダム事業を見直し、推進結論続出した例あげ、公募と公募に漏れたら傍聴者発言を要件にと再質問したが、返答芳しからずabout 11 hours ago via TwitBird

移動していった先で、昨日、

夜7時過ぎから「新政権に望む国会のあり方ゲリラ座談会」実験?!
(三木由希子、田中信一郎、平田仁子←まさのあつこのiphone+Ustream)
をやってみた。音声が小さいが、ヘットフォンなどあれば聞けます(苦笑)↓

(1)自己紹介+α 三木~田中~平田 約30分 節電モードで中断御免)
http://www.ustream.tv/recorded/8308346
(~平田~まさの 約5分 節電モードで中断御免)
http://www.ustream.tv/recorded/8308579
(~まさの (2)国会への注文 田中~三木 13:27 温度上昇で中断御免)
http://www.ustream.tv/recorded/8308652
(~三木~平田~ 13:53 ボタンを誤作動で中断御免)
http://www.ustream.tv/recorded/8308840
(平田~座談~ 18:39 電話がかかり中断御免)
http://www.ustream.tv/recorded/8309233
(討論~18:46 中断御免)
http://www.ustream.tv/recorded/8309039
(討論~最終ラウンド 43:39)
http://www.ustream.tv/recorded/8309260

不器用なので、文明の力活用までに時間がかかります。。。。

打ち合わせで少々出かけなければならないが、
帰宅後、中断してしまっていた、ダム見直しの失敗シリーズを続けます。

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2010年7月13日 (火)

ダム見直しの失敗(その23)

第五の教訓 ダム事業はどうやって見直してきたのか
【ダム見直しの失敗~歴史編~】に入ります。

なぜか?

非公開で続けてきた「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」が出してきたダム見直しのやり方(タタキ台) を見る限り、その検証のやり方は、今まで失敗してきたやり方を踏襲しているからです。歴史から学ぶ必要があります。

国交省から見れば、「こういう見直しをやれば、絶対に見直しに失敗する」と太鼓判を押せる、そんなやり方です。

それは、簡単に言えば、ダム事業を推進してきた本人たちが見直しの主体となり、ダム事業を疑問視してきた人々に「意見は伺いますよ」といって、一方的に意見を言わせる場を設けたり、「パブリックコメントを募集します」と文書で出させたりするが、事実上、見直しの場から排除しながら、そう思われないようにアリバイ的に意見表明の場を設けてガス抜きをする(この有識者会議がそうであったように)やり方だ。

●第三者性がない。
●意見が違うもの同士の双方向の議論(学びや気づき)の場がない。
●本来、なぜ、いままでダムを推進してきたのか、という説明責任を果たすべき自治体や独法水資源機構や国交省地方整備局が、ダム見直しの主体となっている。

このやり方はこれまでにもやったことがあり、失敗したことが分かっている。

しかも、このやり方(タタキ台)が書かれたのは、
議事録しか残さない非公開の会議の場ですらない。

実は、議事録すら残さない「奥の間」(ワーキンググループ)で、
「有識者の先生のご意見の通り」と持ち上げながら国交省が書いている。

だから、公開されている議事録を読んでも
どのように議論されてこれが書かれたのかは、実はさっぱり分からない。
有識者会議が完全な「隠れ蓑」になって、
国交省河川官僚の思いのままの見直し方法が可能になってしまっている。

どうやっても、どう見直しても
「やっぱり、ダム推進」という答えしかでないでしょう?
というのが、今、ダムを疑問視している人々から、大臣に対して出ている意見である。

一体、大臣はこの忠告をどう受け止めるのか?

ここまで読んでくださった方なら、じっくり読めば、分かるはずなので、
ぜひ、読んでみてください。↓

●115団体から「緊急提言」、
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/files/urgent_proposal_on_dam_review_20100705.pdf 
●八ツ場あしたの会が「八ッ場ダム等の再検証に関する緊急提言」
http://yamba-net.org/modules/page/index.php?content_id=4

次のコマで、ざっと、過去のダム見直しの経緯をまとめてみます。

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2010年7月12日 (月)

ダム見直しの失敗(選挙)

● 「連立をどこと組む」とか、「責任は誰が取る」のかと
マスコミは民主党幹部に尋ね続けているが、
乱暴な言い方をすれば、
誰がなっても同じだから、国民による投票で評価が出た以上には変わらなくていい
「国民の程度」が開票結果に現れているし、
かつ、党はチームワークで、誰がリーダーであろうと連帯責任だからだ。
現政権党は「政権交代したらやらなければならない」と考えていたことや
「長期自民党政権ではできず、国民に望まれていた」ことに立ち返って
国会での法案審議、説明を通して、実現すべきだと思うものを
実現していってもらえばいい。ネジレはいいものだ。

民主主義とは「説明責任」と「透明性」と「合意形成」の中に宿り、
「多数決」ではないということを証明してくれるからだ。

●それで、「国民の程度」はどうだったかと言うと、
民主党は得票数や比例区では勝ち、自民党は負けた。
国民はそんなにせっかちではなく、半世紀にわたった旧体制が
たった10ヶ月でかわるものではないことぐらい分かっている。
鼻をつまみながらでも、今回も消極法で、
比例区では「非自民」にいれた人が多かったことになる。
選挙区で自民党が勝った現象はどう見るべきか?
それは、「中央官庁依存」の産業構造がまだ続くという甘えと幻想から
脱却できていない人々や地域や組織や企業がいるということを意味するのではないか?

●法案を審議するという最も大事な仕事を忘れているかのように見えた民主党が、選挙結果を受けて、「国会での合意形成」「熟議」という言葉を使うようになったことで、この党は少し、賢くなったのではないかと思う。「非自民」に投票したように、国民はいつだって「非民主」に投票できるほど敏感で、賢明だ。投票に行かなかった平和ボケした鈍感な国民もまだまだいるけれど。それを含めて、私たちは「日本」というチームなのだ。

●明日の「第11回 今後の治水対策のあり方に関する有識者会議の開催」
http://www.mlit.go.jp/report/press/river03_hh_000246.html
のお知らせが、たった1日前に国交省のメルマガで届いた。

●八ツ場あしたの会が、
中間とりまとめのタタキ台の検証手順の主な問題点5点をまとめ、
「八ッ場ダム等の再検証に関する緊急提言」としてタイムリーに今日、発表した。
http://yamba-net.org/modules/page/index.php?content_id=4

昨日、大臣と有識者宛に送ったそうだ。

●それから、千葉の5つの自然保護団体も、以下を提出した。「5団体のメンバーは2002年から八ッ場ダム問題にかかわり、「八ッ場ダムをストップさせる千葉の会」の裁判活動や各種イベントなどに参加しています」とのこと、中山敏則さんの許可を得て転載します。

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                 2010年7月10日
 国土交通大臣
   前原誠司 様                      
              千葉の干潟を守る会
                   代表 大 浜  清
              千葉県自然保護連合
                   代表 牛野くみ子
              三番瀬を守る会
                   会長 田久保晴孝
              千葉県野鳥の会
                   会長 富谷 健三
              三番瀬を守る署名ネットワーク
                   代表 田久保晴孝

  ダム検証作業の進め方に関する緊急要請書

 第10回「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の中間取
りまとめ(タタキ台)によれば、ダムの検証作業の進め方として次
のことが示されています。
 (1)検証主体:国土交通大臣
 (2)検証検討主体:地方整備局等、水資源機構、都道府県
 (3)関係地方公共団体からなる検討の場
    検証検討主体は「関係地方公共団体からなる検討の場」を
   設置し、相互の立場を理解しつつ、検討内容の認識を深め検
   討を進める。

 しかし、「検証検討主体」の地方整備局等、水資源機構、都道府
県はダム事業者であり、ダム建設を推進している立場にあります。
そのダム事業者に検証を委ねたら、ダムの是非に関する客観的・科
学的な検証は不可能であり、ダム建設推進が妥当という結論が出る
のは目に見えています。また、地方公共団体のほとんどはダム推進
の立場ですから、そこに検討を求めれば、ダム推進を求める意見に
集約されることが予想されます。

 ダムの検証をきちんと行うためには、従来の利水・治水計画を根
本から見直し、科学的・客観的に検証作業を進めなければなりませ
ん。そのためには、学識経験者や関係住民団体の代表などが参加す
る第三者機関に委ねるべきです。また、その第三者機関は徹底した
情報公開のもとで運営すべきです。
 つきましては、ダム検証作業は淀川水系流域委員会をモデルとし
て進めてくださるように要請します。

----------------------------- 

ラストスパートをかけて、私も続きを最後まで書こう。

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2010年7月11日 (日)

ダム見直しの失敗(その22)

想定外のコストの続きです。

これは大滝ダム(国直轄 in 奈良)。1977年までに事業費230億円をかけて完成予定が、同じく、湛水試験中に、水没予定地でもなかった白屋地区(写真)が地すべり、住民は移転を余儀なくされ、工期は2012年までに延長、事業費は3640億円となった。コスト16倍、33年延長。水需要はその間、頭打ちです。地すべりが起きると指摘されていたところです。↓

Otaki_dam

これは下久保ダム(水資源機構 in 群馬県)。ダム湖にはアオコが発生し、すぐ下流の譲原地区に大規模な地すべりが起きて、対策中です。(国は、因果関係を認めていません)↓

Simokubo_dam_2

これは佐久間ダム(電源開発株式会社 in 静岡県)。モノクロ写真ではありません。1956年にできたダムに溜まったネットリとした粘土質の土砂が、姿を現しています。浚渫船で砂を取っている跡です。砂を取るたびに、ダム湖に土砂が浮遊して、一面灰色の「死の世界」ができています。↓

Sakuma_dam

同じく佐久間ダム。ダム湖にできた砂丘です。人の姿の小ささを見てください。これをより深いところに流して、下流へと押し流す「流砂促進」事業に、電源開発株式会社は年間10億円をかけているとのことです。↓

Sakuma_dam2

同じく佐久間ダム。砂丘のそばに流れ込む清流です。本来の色が手前、年間10億円をかけても、天竜川にこの清流の色は、取り戻せません。↓

Sakuma_dam3

こうした教訓を有識者会議は、タタキ台は、活かしているでしょうか?
読む限り、私にはそうは思えないのです。

【オマケ】
ダム見直し 揺らぐ公約/「無策なら普天間と同じ」
7月3日に朝日新聞名古屋本社版「2010 参院選 東海の課題(上)」
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota2/100703asahi.pdf
ダム見直し:川はんらんも想定 利害調整、基準作りに課題
(毎日新聞 2010年7月9日)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100709ddm005010140000c.html
ダム見直し:コスト最重視、代替策と必ず比較 有識者案
(毎日新聞 2010年7月9日)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100709k0000m010122000c.html

ここまで読んでくださった方で(ありがとうございます!)、このしつこいシリーズ(その1)から読んでくださる方は↓
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-9ba5.html

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ダム見直しの失敗(その21)

「第四の教訓 ダム事業にはどんな欠点があったのか」です。
一言で言って「コスト」だと思います。
人生、経済、環境・・・
受益が勝る事業も中にはあったかもしれない。
しかし、長期的に見て、それを比較した場合に、それが勝っていたのかどうか、
そのコストが避けられたのではないかという教訓が積み上がってきています。

人生・・・重すぎて、語れません。ここでは、ダム事業を止めるときには、相応のケアが欠かせないと言うに止めます。

経済・・・ほんの一例がこちらです。↓

使わない水に59億円 愛知、三重県など長良川河口堰で負担
(中日新聞2010年7月6日 朝刊)
http://chubu.yomiuri.co.jp/tokushu/nagaragawa/

ほんとうに必要ならまだしも、「ここまで来て、今さら止められない」という理由で進めば、かけがえのない人生と経済だけでなく、環境までが将来にわたって影響を受けることになります。

本当に必要か?何故必要か?同じ過ちを繰り返さないためには、
事業を推進する人と、批判的な人々と、
その双方が議論できる開かれた場が必要です。

想定外のコストもかかります
ここはこれまでに各地のダムで撮った写真でお見せします。

これは荒砥沢ダム(農水省in 宮城)の上流です。2008年「岩手・宮城県内陸地震」の際、火山性(栗駒山)の地質が、過去の地すべり痕もろとも、荒砥沢ダムへ向かって、最大140m崩落、深さ55m、幅810m、長さ1400m、地すべりを起こしました。修復には膨大な年月とコストがかかります↓

Aratosawa_dam

これは滝沢ダム(水資源機構 in埼玉)、完成間際の湛水試験で、地すべりを繰り返し、610億円で1982年に完成予定が、 2320億円で2010年度に延期された。コスト4倍。人の半生分、延期されています。水需要はその間、頭打ちです。地すべり地であると分かっていたところです。↓

Takizawa_dam

(続く)

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ダム見直しの失敗(教訓ダイジェスト)

ここまでをいったんまとめます。
これまでに得られた教訓は何か?

●治水
過大な洪水想定をもとにダム計画が作られてきた。
書きそびれをここで加えると
一定の洪水想定に対する対策を取る(ダム建設や堤防整備)ことが、治水の目的だった。
そのために、その範疇を越えることが起きたら「想定外」でした、と済ませてきた。
今、求められ始めているのは、「自助」「共助」「公助」の考え方とともに
最低でも人が死なない、壊滅的な被害を出さない治水。
人任せにしない、人々に開かれた「治水」である。

●利水
1)「水を取るためにダム建設が必要である」という水利権行政が行われてきた。それは官僚の裁量によるものでしかないにもかかわらず、この考え方が絶対視されている。

2)水利権の許可(裁量)行政を見直せば、今ダム建設を前提に「暫定水利権」として認めているものを、ダムなしの「水利権(もしくは暫定水利権)」に変えることができるかもしれない。

3)農業用水の6割は「慣行水利権」だが、正確に把握されていない。正確に把握されている「水利権」のうち8割は農業用水だ。これらの把握や、合理化や転用、渇水時の調整が、ひとつのネックであるにもかかわらず、縦割りの壁でうまくいってこなかったことは、知る人ぞ知る問題だった。有識者も政務三役も気づいていながら、何故か、有識者会議では、この部分が積み残されたままになっている。

4)過大な需要予測をもとに、ダムありきの計画がまかり通ってきた。

●環境
1997年の河川法改正で「環境」が目的に入ったものの、実際には、河川維持流量=不特定容量の名で、川に水を流すために、ダム建設が必要であるという本末転倒な理由がまかり通っている。そのために、守るべき生物の生息環境が脅かされている。

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ダム見直しの失敗(その20)

「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の中間とりまとめ(タタキ台)では、環境についてどう触れられているかです。

・ 若干踏み込んだ表現がなされているのは、すでに存在するダムを有効活用するというところ。→「新しくダムを建設するよりも低いコストで甚大な環境改変を回避又は低減して、迅速な効果の発現を期待できる場合がある」(P.10)

・ これから新しく建設するダムについては、「アワスメント」と揶揄される現行の環境アセス法の枠内の考え方に踏みとどまっています。→「必要に応じ影響緩和のための対策を検討し、対策の内容や想定される効果等について明らかにする」(P.39~40)

また、「河川維持流量」=「不特定容量」については
P.41から次のように、非常にわかりにくく書かれているだけです(太字は当方で加筆)。

=================================
(8)流水の正常な機能の維持への影響
流水の正常な機能が維持できるか
各治水対策案について、流水の正常な機能に寄与できるか否かを明らかにし、できない場合は課題について整理する。なお、流水の正常な機能の維持への影響については、第8章の利水代替案や評価軸の関係部分を参考にして検討を行う。

(中略)

目標を上回る洪水等が発生した場合にどのような状態となるか、段階的にどのように安全度が確保されていくのか(例えば5,10年後)、どの範囲でどのような効果が確保されていくのか(上下流や支川等における効果)、土地所有者等の協力が得られるか、その他の関係者との調整が可能か、将来にわたって持続可能といえるか、事業地及びその周辺への影響はどの程度か、地域振興に対してどのような効果があるか、水環境に対してどのような影響があるか、生物の多様性の確保及び流域の自然環境全体にどのような影響があるか、土砂流動がどう変化し下流河川・海岸にどのように影響するか、景観、人と自然との豊かな触れ合いにどのような影響があるか、流水の正常な機能が維持できるかについては、主として定性的に評価をせざるを得ないが、一部の事項については定量的な表現が可能な場合がある。
=================================

上記の後半部分については、まったく意味不明。
「タタキ台」なので、これから変わっていくことを期待できるかといえば、
この調子ではそうはとても思えません。

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ダム見直しの失敗(その19)

さて、前のコマで書いた「河川維持流量」=「不特定容量」の具体例でお見せします。
豊川水系の設楽(したら)ダム(愛知県北設楽郡設楽町)がその一つです。
下記は、水需要の見直しや堆砂(ダムに溜まる土砂)の見直しにより、
ダム計画が見直されたことを示す図です。ところが・・・、

総貯水容量9800万m3のうち、不特定容量が6000万m3です。
このダムの目的の6割が「河川維持流量」=「不特定容量」です。

Shitara_dam_2 

出典:「設楽ダムだより(国土交通省中部地方整備局2005年12月)」
http://www.cbr.mlit.go.jp/shitara/01menu/05damdayo/pdf/12.pdf

川の流れを守る(河川流量を維持する)ことはよいとして、
それがダム建設の目的になってきているのです。

利用し尽くした川の水をできるだけ少なく取水する
という考え方へ向かうなら分かります。

ところが、他で取水して川をカラカラにした上で、
人工的にまたダムを作って、そこから自然の川に流量を補給する
という
本末転倒な考え方になってきているのです。

この考え方のままでよいのか?
それともこの考え方を変えるべきか?
変えない限りは、この設楽ダムのような計画が止まりません。

川に水を流すために、たとえば設楽ダムを作り、
たとえば絶滅危惧種ネコギギの生息環境を破壊し、
濁ったダムの水が、「死の川」を豊かに流れるという風景を
私たちは子孫に残すことになります。

これが、今年、生物多様性条約第10回締約国会議が開かれる愛知県で起きようとしていることです。

では、「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の中間とりまとめ(タタキ台)では、環境についてどう触れられているかを次のコマでざっと整理します。

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ダム見直しの失敗(その18)

「第三の教訓 これまでの環境ってどういうことだったのか」についてです。
ちょっと俯瞰してみましょう。

今年2010年は「国際生物多様性年」です。
生物多様性条約と気候変動枠組条約は、
1992年に開催された地球サミット(ブラジル、リオデジャネイロ)で
生まれた「双子の条約」であると言われていますが、
世間一般では、気候変動(温暖化)に対する危機感ほどは、
生物多様性の損失に対する危機感は共有されていないですね?

「温暖化」をキーワードにさまざまな省庁が
「予算」を取ったり「事業」を進めたりする理屈づけに使っていますが、
(そんな予算使うぐらいだったら、環境税をかけて税収を上げるべきだと
私は思いますが、それはさておき・・・)

「生物多様性」に関しては、
企業には「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」など動きが始まっていますが、
省庁に関して言えば、環境省を含めて消極的だと言わざるをえません。

さて、河川行政における「環境」はどのような扱いを受けてきたかです。
例に漏れず、国交省でも「温暖化」でさまざまな予算を取っていますが
「生物多様性」に関しては、馬耳東風状態が続いています。

ただし、1997年の河川法改正で「河川環境の整備と保全」
目的に入ったことは周知の通り。
================================
(目的) 第一条  この法律は、河川について、洪水、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする。
================================

知られていないのは、
「環境」を理由に、「環境破壊」が起きてきたことです。
犯人の正体はズバリ、「河川維持流量」と言います。
目的にも掲げられている「流水の正常な機能が維持され」る流量のことです。
別名「不特定容量」と言います。

このことに気づかされたのは京都。
設楽ダムのことを人前でお話していたら、あとで、ある大学教授が
「キミ、キミ! キミは「不特定容量」のことを
よく理解しておらん。今度、聞きにいらっしゃい!」と言うので
後日、国交省職員にも講義されたことのあるこの先生に、
コンコンと4時間にわたってお話を聞かせていただき、
ぎょぇっ<(@。@)>とビックリした話です。

ダムこそは、川の自然な流れを堰き止め、山からの栄養
海からの栄養、そして上下流の生物の行き来をとめてしまう人工物です。

ところが実は、水道や工業用水、農業用水など、利水目的を失ってしまい、
結果的に、環境、すなわち「河川維持流量」=「不特定容量」を目的に
ダムが作られることになってきています。

もちろん、このことが有識者の見直しのタタキ台では触れられていません。
(続く)

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ダム見直しの失敗(予告編)

今後の治水対策のあり方に関する有識者会議の第10回で出てきた中間とりまとめ(タタキ台)を読み解いてもらうために、「前原誠司国土交通大臣によるダム見直し これまでのあらすじ」から始まり、
  第一の教訓 これまでの治水ってどうやってきたのか
  第二の教訓 これまでの利水ってどういうものだったのか

と書いてきました。ここから先は、以下のようになります。

  第三の教訓 これまでの環境ってどういうことだったのか
  第四の教訓 ダム事業にはどんな欠点があったのか
  第五の教訓 ダム事業はどうやって見直してきたのか
  最後の教訓 これらの教訓を踏まえて読むと、
       中間とりまとめ(タタキ台)はどうなのか

しかし、そろそろこのノロノロペースに嫌気がさし、
結論を言ってくれ!と思われる方もいらっしゃるでしょう。

そこで、この問題について、115団体から「緊急提言」が出されていますので、
お急ぎの方はこちらもお目通しください。→「urgent_proposal_on_dam_review_20100705.pdf」をダウンロード

この提言が指摘している最大の問題の一つは
ダム事業のあり方を問題視してきた人々が、
その見直しの作業から排除されている
ことです。
見直しの主体が、これまでダム事業を推進してきた事業者(地方整備局、(独)水資源機構、自治体)であり、客観性、第三者性に欠けているということです。

有識者会議のあり方とよく似ています。
意見の聴取やパブリックコメントを行いますとありますが、
20世紀型の古い民主主義のモデルです。

利水一つをとっても、客観性や第三者性を欠いた見直しは
何度やっても独善的で説得力がないことは、
前のコマのグラフで示した通りです。

ちなみに、東京都については、市民団体が選挙によって「都議会」を政権交代させ、
次に水需要見直しの「請願」を出して、それが今年の定例会で、採択されています。

「水需要予測の実施に関する請願」
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/bill/details/s22_7_0.html 

これは一つの例ですが
付与されているあらゆる民主主義の手法を駆使して
自治体や国のあり方に参加しようとする住民や国民や
その学び合う力を信用して、
社会的合意に到達する21世紀型の見直し方法を
有識者は提言すべきだったのではないでしょうか。

第五の教訓のところで、さらに後述したいと思っていますが、
せっかちな方のための予告編でした。

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2010年7月10日 (土)

ダム見直しの失敗(その17)

そろそろくたびれて来ました(って自分が言ってはいけませんが^ ^;。

これを書いたら、いったん、休憩です。
利水については今回が最終です。

治水と利水の共通点です。
いえ、公共事業における共通点と言っても過言ではありません。

高度成長期には理由があった。
人口増大と経済発展に備えて、インフラ整備をしなければならない。
そこで、需要予測を行って、計画を進めた。

ところが、空港しかり、道路しかり、橋しかり、港湾しかり、
需要予測は、実態と乖離して過大だったことが
作ったあとで、証明されるようになりました。

治水についても、いくつもの想定が重なって、
現実には達成できないほどの過大な治水計画(=洪水想定)になっていることは
初級編、中級編一つ目二つ目上級編で書いてきた通りです。

利水も同じです。
下記は、八ツ場ダム住民訴訟が一都五県で行われる中で、原告団が調査をして分かったことです。

Tokyo_water_2

東京都の水需要予測の見直し(細線)と実績(太線)です。
↑クリックしていただくと全体がでます。

実態が余りにも需要予測と離れていたために
なんども需要予測を見直してきたにもかかわらず、
やはり、「ダム計画」ありきの見直ししかしてこなかったということが
よく分かるグラフです。

裁判所は「行政裁量」に踏み込むことを避け、
「違法だ」と断じることができていないだけで、
たとえば、こんなにも需要と実績が乖離していれば、
一般国民なら、「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」(地方自治法2条14項)に違反していると断じるのではないでしょうか。
でも、こうした行政訴訟は、
裁判員制度が導入されていないんですね。
本来は、こうした場にこそ、国民が司法参加をすべきなのですが。

ここまで見てきたように
「治水」、「利水」といった基本でさえも、
河川官僚にしか分からないルールを設けて、審議会という隠れ蓑で
行われてきたのが河川行政です。

1997年に「環境」が目的に加わりましたが、
この傾向はまったくといって良いほど変わらなかったと
私は思います。(環境についてに続く)

ここまで読んでくださった方に、心から感謝します。

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ダム見直しの失敗(その16)

利水について、少々また、話を巻き戻します。

===========================
(流水の占用の許可)第二十三条  河川の流水を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
===========================

の運用が、「通達」という官僚の裁量で運用されてきたことについてです。

この通達によれば、水利権の申請を審査するにあたって、
次のような考え方をするそうです。

1. 安定水利権
通常の水利権は、原則、水源が安定的に確保されて(水源=ダム建設)、
初めて許可される

発電以外の目的で10年、発電目的で20年という期限付きです。

2.暫定豊水水利権
そうは言っても、すぐにダム建設はできませんので、
安定的な水源でなくても(ダムが完成していなくても)
社会的な要請があるとき(つまり需要があるとき
)、
1の水利権者が取水してなお、川に豊かに水が流れている場合
(これを「豊水条件」と言います)、
河川維持用水(簡単に言うとお魚たちが泳げる深さが確保できる流量)を
引いた残りから水を取ることができます。
これは10年という期限付きです。

3.暫定水利権
さらに、緊急の場合、許可期間(1年~3年)で暫定水利権を特別に認めることもできる。

水を使う権利として、優先順序は1>2>3です。
こういう三段階だそうです。

八ツ場ダムは2のケースです。
埼玉や群馬は、夏は転用、冬は豊水暫定水利権を更新しながら、
安定水利権(ダム建設)を確保してくださいよという条件つきで
利根川の水を取っています

だから「不安定だ」から八ツ場ダムを早くつくって
「安定」した水利権が欲しいと、県は言わされ、負担金を払わされてきたのですが、
実際は、そのような運用が、河川官僚によって通達上なされてきただけです。

国会(選挙によって選ばれた国民の代表)が決めたルールではありませんでした。

安定的な水源(ダム建設)を確保してくださいよというこの通達を不要とし、
優先順序や、融通、調整のルールや枠組みをつくってあげれば、
埼玉県や群馬県が、農業用水について必要であるという根拠がなくなります。
財政赤字を垂れ流しながら、人口が将来は減ると分かっているのに
ダム計画に乗る必要もなくなります。

有識者会議はこうした本来、ダムによらない河川行政に必要とされる議論をしそこねています。

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ダム見直しの失敗(その15)

前のコマ
農業用水の6割を正確に把握しておらず、
残り4割の農業用水が、把握されている取水量の8割を占める

の続きです。

今後の治水対策のあり方に関する有識者会議では、

最初に「ダムによらない治水」について考えて欲しいという諮問が
前原国土交通大臣からありました。

利水に関しては、現状を把握し、有効利用することにより、新規のダム、作りかけのダムを取りやめることができるのではないか・・・、誰だってそう考えます。

第8回(平成22年4月19日)の議事録にはこんな話が出てきます。
この資料2「利水の観点からの検討について(pdf,404.0KB)」(P.2下から4段目)で
事務局である河川官僚が、「農業用水等の合理化・転用」について、「ある程度可能」、「渇水調整の強化」は「なかなか難しいところがある」と。

これら一連の説明を受けて、ある委員がこんなことを言います。
===================================
例えば、この中のほうにあります、土地利用の規制とか、水田等の保全とか、こういうところは、国交省だけでなかなかできないですよね。水田の保全なんかをやろうと思ったって、これは農水省とやっぱりいろいろな形で議論していかないと。そういうものを取り入れていかないと、新しい方式は出ない。あるいは、ダムに頼らないとか、堤防に頼らない方式の洪水対策はやりにくいわけですね。したがって、こういうものをほんとうは政治的に議論していただいて。政治的に議論というよりも、トップの人が議論する。それを通常は法制化していくということが、私は大事ではないかと思います。ただし、すぐに法制化できて答えが出るものではないので、こういうものを採用するところについては、例えば、地方でやりたいということであれば、これを後押しするようなインセンティブ経費のようなものをつけていくとか。そうしないと、僕は新しい方式はなかなか出てこないのではなかろうかなと思っています。
===================================
とても正当な提案だと思います。

そして、政務三役側でもこんな提案をしています。
===================================
水利権の問題も、今までは国交省の中だけで、河川局の中だけで考えていたと思うんですけれども、これは、我々、政治主導ということを言っているわけです。したがって、例えば河川局としてはなかなか言いにくいかもしれませんけれども、我々政務三役が責任を持って、例えば工業用水の経済産業省と、あるいは農業用水の農水省と、例えばここに○○(政務三役)おられますけれども、政務三役で水利権を見直すワーキングチームみたいなものをつくって、そして、この柔軟運用をする中で、その公共事業の見直しも新たな評価軸に入れていくということをやっぱりやらないと私はいかんと思うんですね。そこは我々で乗り越えなければいけないことだと思いますし、乗り越えていくべきだと思います。
===================================
とても正当な提案だと思います。
官僚同士が、省庁の縦割りの中で阻まれてできなかったことを
政務三役が乗り越えたいという意思表示です。
この議論の中で2回も提案しています。

ところがある委員が次のようなことをいって、押し返しています。
===================================
【委員】 ちょっといいですか。○○(政務三役)はそれが主張なので、私はよくわかるんだけれども、政治主導というのは非常に重要なんだけれども、すべてが政治主導だけでできるわけではないし、それが一番いい方法だというわけではないと思うんですね。例えば、環境アセスなんかは、いろんな省庁がやっている事業に対して、環境大臣が意見を言える場というのをつくったわけですね。これは政治主導で最初は動いたかもしれないけれども、きちっとそれを社会システムにしていくとか、法制度にしていくとか、そういうことはやはりきちっとやらないと、いつもいつも政治主導で、その場限りで問題解決するというのは、やはり私には将来に向かって得策ではないという気がします。

だから、政治主導で動くのは大事なんだけれども、それをどういうふうに社会システムにして、法制度にしていくのかということをしっかり……。そのために我々が議論して、○○(政務三役)の力も借りながら、どういう社会システムをつくっていくかというのが大事で、いつもいつも政治主導と言われたら、私には、ちょっと引っかかるところがあります。
===================================

この識者、言っていることがメチャクチャ。ほとんど恫喝ではないか?

有識者なのですから、利水行政を変えるには法律のここをこう変えたらよい、とまさに提案をすればいい。実際、1997年の河川法改正で役人同士の協議で取り残されたところであるから、政務三役がこの仕事をやるということは画期的なチャンスだ。それをすると言っているのに、それをワザワザ止めようとしている。

確かに勘違いな「政治主導」のあり方を前原大臣はやっているところもあるけれど、ここは極めてまともなことを言っている。にもかかわらず、この識者は、従来の考え方を変えること諮問されているのに「解」を出そうとせず、現状を変えることに対して、反応(反対)している。

驚くのは、この抵抗に慌てて、政務三役が謝ってしまったこと。
ガ~ン<* 0*>。↓

===================================
【政務三役】 そういう意味ではないんです。
【政務三役】 すいません、私の言葉足らずであればおわび申し上げますが、そういう意味ではなくて、水利権の問題というのは、国土交通省だけで扱える問題ではないので。
しかし、先生方に評価軸を決めていただくということは、これはもうお願いしているわけですから、先生方に決めていただくんですが、では最終的に評価軸を決めるにあたって、でも、これはこういうふうにしたいけど、農水省や経産省がどう言うかなというようなことではいかんので、何かを決めるということではなくて、水利権について柔軟に、今まで省庁縦割りであったものを少し議論させていただいて、先生方の議論とオーバーラップをしながら、常にキャッチボールをさせていただく、こういうことであって、ここで政務官の各省の、例えばワーキングチームで決めるということではございませんので、その点だけは誤解なきように。すいません、私の言葉足らずであれば、おわび申し上げたいと思います。
【委員】 はい。
===================================

謝ることはまったくなかった。「先生方に、評価軸を決めていただく」と慌ててゴマを擦っているが、結局、見解は、グルッとまわって、国交省事務局が示し続ける。結局、脅し、すかしを繰り返す「有識者」を介して、官僚にコントロールされてしまう構図だ。

だから、公開すべきだったのだ。こんな会議。
議事録で公開されても困る。
歴史を変えようと思っているときに何故、「国民の目」を使わないのか?
ヒーローは一人ではヒーローになれない。
国民の良識の力をバカにすべきではない。

この恫喝委員(発言者名が非公開だが、発言内容から同一人物だと推察するしかない)は、大臣の提案と同意見の発言をした別の委員にも次のように噛みついている。

===================================
【委員】 一言だけ申します。
他省庁と議論いたしますと、できるものができなくなることがあります。
【委員】 あ、そうでしょうか。
【委員】 ですから、これは現場に任せたほうがうまくいく。
【委員】 現場のほうがいい。ああ、それならそれでいいと思いますが、新しい治水理念を立案しないと。
【委員】 というのは、河川事業というのは、最近まではほとんど農民のためだったんです。農民から絶対の信頼を受けているわけですよ。ですから、これを制度問題として他省庁にもちかけますと、お互い、建前で突っ張りますから、これ、できるものができなくなっちゃうという面もございます。むしろ、そっちのほうが危惧されます。
===================================

つまり、今までダメだったからこれからもダメだと。
逆に言えば、この委員は、利水行政において、何が問題だったかをよく知っている。
農水省や、その裏側にいる土地改良組合など政治的な地域ボスがいて、
水利権の譲渡や合理化や調整について、合理的な議論ができてこなかったことを
よく知っていると思わざるを得ない。

逆に言えば、この問題を一番に提起し、解決策を見つけだすことが、この有識者の役割であるにもかかわらず、それをしなかった。

そこで、政務三役がせっかく提案(二度も)したのに抵抗し、この議論に加勢した委員の議論もつぶし、終わった。その結果、タタキ台で示された「第8章 利水の観点からの検討」では、現状の問題点すら指摘されておらず、利水についての検討の仕方も、従来の考え方と何も変わっていない。(続く)

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ダム見直しの失敗(その14)

第二の教訓 【これまでの利水】の続きです。
おさらいから入ります。

利水、つまり水利権については、河川法に次のようにあるだけです。
===========================
(流水の占用の許可)第二十三条  河川の流水を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
===========================

実際には「河川法施行規則第11条」によって
「水利使用の許可の申請」を行って許可を受けます。

簡単にいえば、これこれの理由でどこからどれだけの水を使わせてくださいと
河川管理者(国や自治体)に申し込んで許可を受けます。

さて具体的に、何が起きてきたのか?
時代を巻き戻して、新しい切り口から書きます。

河川法ができたのは明治29年。
それより前から、人々の暮らしはあります。
この法律ができたとき、それより前から川からとって使っていた水は、
水利権の許可を得たものとみなすことにしました。
これは「慣行水利権」と呼ばれています。

これが昭和39年に大改正されて新法となった時、
旧法で「慣行水利権」と認められたものを2年以内に届出を出せば
引き続きそれを「慣行水利権」として認めて使えることにしました。

こう書けば、皆がきちんと昭和39年から41年の間に届出をしたと思うでしょう?
ところがそうじゃない。
河川管理者なら、誰がどんな「慣行水利権」をどれだけ持っているのか
把握しているのかと国交省に聞けば、
実は「取水量も届出も明確になっていない」のが実態です。

後でもう一度書きますが、少なくとも現在は、
川にどれぐらいの水が流れているのか(河川流量)によって、
水を取ってよい量が変わってきます。
ところが、この河川流量との関係も、慣行水利権では審査されていません。
国交省はこんな言い方をしませんが、事実上の「無法地帯」です。

では、届出や報告がきちんとなされていないデータとはどのようなものか?
『よくわかる河川法 改定版』(ぎょうせい)によれば、
分かっているのは、慣行水利権のほとんどが灌漑用水であること、
そして、慣行水利権の占める割合は
農業用水の「取水量で約6割程度」とされていること。

ということは、それ以外の、
昭和39年以降の河川法に基づいて申請して許可した「水利権」は約4割に過ぎない。

では、この許可され、把握されている「水利権」の中で
農業用水はどれぐらいを占めているのか?
これも、『よくわかる河川法 改定版』(ぎょうせい)によれば、
「水道用水」、「鉱・工業用水」、「農業用水」、「雑用水」という分類をした場合、
8割が「農業用水」
です。

つまり、国土交通省が行ってきた「利水行政」は、
農業用水の6割を正確に把握しておらず、
残り4割の農業用水が、把握されている取水量の8割を占める

ということを把握しているということ。

農業用水の占める割合が多いのは、日本に限った話ではありません。
米国では内務省開墾局総裁ダニエル・ビアードさんが1994年に
「ダム建設の時代は終わった」と宣言して拍手喝采を浴びましたが、
この背景には「農業用水」をほんの少し「都市用水」に回すだけで
今ある水を有効利用できる
、という考え方が先行していたことは
今まであまり強調されてきていません。

では、今、日本ですべきことは何か?
もしも、水が足りないというのであれば、
どれぐらい利用されているのか把握されていない6割の農業用水を把握すること
そして、把握されているあと4割の農業用水を合わせて、
現状を把握し、有効利用することにより、新規のダム、作りかけのダムを
取りやめることができるのではないか、と検討することではないでしょうか。

誰だってそう思います。
実は、私が、今このシリーズで猛批判している有識者会議の中でも
きちんとそうした「議論は」行われていたのです
。(続く)

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2010年7月 8日 (木)

ダム見直しの失敗(その13)

さて、第二の教訓 【これまでの利水】です。

利水とは何か?長い話をおおざっぱに一言でいうと、川の水を持続的に利用しようと思ったら、新たに水源開発施設(つまりダム)を建設しなければならない、と考えられている仕組みです。

たとえばですが、すぐ目の前を豊かに川が流れていても、遠く離れた山の中にダムを作らなければ、水を取る許可を得られない、と考えられている。逆に、「ダムを作ります」と言えば、まだダムを作っていなくても「暫定的」に水を取ることができる、と考えられている。この仕組みによって、うまく調整すれば、本当は必要ではないかもしれないダムが、仕組み上、必要であると考えられてしまっている場合がある。

なぜ、こんなにしつこく「考えられている」と繰り返すのかと言えば、実は、私も今日まで、そう考えていたからだ。川の水を持続的に利用しようと思ったら、新たに水源開発施設(つまりダム)を建設しなければならない、と思いこんでいた。例えば、八ツ場ダムを作ることを前提に、埼玉県や群馬県は、暫定的に水を使う許可を得ている。これは八ツ場ダムを作ることが前提条件になっていると考えていた。

実際そうではあるのだが、ところが、法律上はそう書かれていなかった。実は、私自身、そのような法令に出会ったことがないことにハタと気づき、今日、改めて、そのような法令(つまりそれに従わなければ違法であることになるルール)がないことを確かめようと、国土交通省に問い合わせをして分かった。

果たしてやっぱり。そもそも、水を使う許可、つまり、水利権について定めた河川法の条文は一つしかないのだ。

===========================
(流水の占用の許可)第二十三条  河川の流水を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
===========================

その他の、上記のように考えられているルールは、単に国交省内の「通達」によって定められていただけだった。単純な言い方をすれば、官僚の裁量である。

国土交通省の担当者に質問しながら教えてもらったことと、ここに書かれている説明
を合わせて言えば、水を使う許可は、大きくわけて3通りある。その3通りが、いわば官僚の胸先三寸で、場面場面で状況に応じて運用されてきた。

ゆっくり消化して欲しいので、今日はここまでにします。

ただ、もう一つだけ言うと、水を使う許可を河川管理者(国や自治体)に申請して得ることを「水利権」を得るという言い方をするけれど、「水利権」というのも法律に書かれている言葉ではない。河川法ではこれに関して、次のようなくだりがある。
===========================
(河川管理の原則等) 第二条  河川は、公共用物であつて、その保全、利用その他の管理は、前条の目的が達成されるように適正に行なわれなければならない。
2  河川の流水は、私権の目的となることができない。
===========================
つまり、川は公のものという意味だが、「公」というのは、残念ながら「みんなのもの」という意味ではない。事実上、河川管理者のものであるととらえ、だから、川の水を使う「権利」は河川管理者が与える、という考え方に立っているように読める(これは私の読み方ですが、おそらく従来の河川管理者の考え方もそうではないかと思えます)。

ちなみに、水利権の許可は、河川管理者(国交省や自治体)の胸先三寸だったのだ!と最終的に私が気づき始めたのはやっと去年です。『都市問題』2009年12月号の「ダム建設の是非を考える」特集に向けた取材で、かつて、国直轄事業として進められ、一度は当時の与党による政治決断がきっかけで中止になった「木曽川導水事業」(今は似た名前の違う導水事業が宙ぶらりんだが存在する)を、念のために国土交通省中部地方整備局に取材した時のこと。

その事業は、名古屋市の堀川を浄化するために、木曽川の水を引いてくるというものだった。中止になったのだとばかり思っていたら、さにあらず。「社会実験」の名で復活していた。名古屋市が水路を作り、国交省が「社会実験」と称して木曽川から取水していた。その取水の根拠は何かと尋ねれば、「徳山ダムによる導水や長良川河口堰、味噌川ダム、岩屋ダムに参加している。そういう名古屋市の姿勢を見て許可している」(国土交通省中部地方整備局)というもので、「なに~~?姿勢?姿勢を見て許可~~?」と、ちょっとしたカルチャーショックを受けた。それはそれで、そのまま淡々と原稿に入れたが、実は余りにショックで、その根拠のことを消化しきれていなかった。

しかし、今度こそ、意を決して勉強をし直すと、その「姿勢を見て許可」できる水利権というのは、つまり、国交省に優しい言い方をすれば「良心的な柔軟運用」、厳しい言い方をすればやっぱり「胸先三寸」ではないかと、ようやく分かった。これには3つのパターンがあるので、それは次のコマで書くことにしますが・・・。

水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之さんが埼玉県の資料で調べたことによれば、埼玉では、こうやって、国交省による良心的な柔軟運用=胸先三寸で、長いところで1972年から37年間にわたって、暫定的に水を取る許可を取り続けている。しかし、これは、また同時に、やりようによっては、国交省による良心的な柔軟運用=胸先三寸で何時までも暫定的な水利権である必要もないことを意味しているのではないか。

何せ、存在している法律は
===========================
(流水の占用の許可)第二十三条  河川の流水を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
===========================
だけで、具体的なルールは、通達(=国交省による良心的な柔軟運用=胸先三寸)で定めているだけだからだ。

気が急く人はここをじっくり読んでみてください。

そして「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」 の中間とりまとめ(タタキ台)  では、こうした、水利権の許可のあり方にきちんと向き合って、新しい考え方が示されているかと言えば、何もありません。従来通りのダム計画に参画するときの手続の流れを踏襲する範囲(P.44~)で書かれているだけでした。

分かりにくかったかもしれないけれど、ここまで忍耐強く読んでくださった方、本当に有難うございます。(続く)

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ダム見直しの失敗(休憩)

少し間が空いてしまいました。7月3日(土)に開催された、第二東京弁護士会シンポジウムに行きました。その中で最も印象に残った言葉の一つについて書きます。元河川局長が「治水の原則は1㎝でも10㎝でも水位を下げることだ」と言った言葉です。

ここ数年で、ダムによる水位の低減効果についてようやく情報が出てくるようになりました。それに応じて、ようやく、上記のような言葉が聞かれるようになりました。以前には聞かれなかった言葉です。そして、もしそうだったとしたなら、重要なのは、ダムの効果がその程度であることを住民や納税者に知らされることなのですが、実態はそうではありませんでした。やいのやいの、根ほり葉ほり聞いてようやく知らしめる情報になってきたに過ぎないのが残念です。

たとえば、長野県で論争となり、一度は田中康夫知事によって中止され、現知事によって再開された県営「浅川ダム」の効果は、「5~6ミリの水位を下げるだけ」(『浅川ダムは5ミリの「減災」にしかならない」』週刊金曜日2007年3月30日号)です。ところがこの数値は、取材で根ほり葉ほり聞いて、ようやく担当者が口を割ってくれものです(5,6ミリしか水位が下がらない理由はバックナンバーで読んでいただければありがいです。)

ダムを作ったことによる治水効果、水位の低減効果がどの程度のものかという情報は、真っ先にアピールされていなければならない情報ですが、これは何故か、大概、どこのダムでも、未だに根ほり葉ほり聞かなければ出てきません。

また、その効果が雨の降り方によってはゼロですらあることも(たとえば八ツ場ダム計画のもととなったカスリン台風が再来した場合の八ツ場ダムの効果はゼロ)、あまり知らされてはいません。

「ダムは大洪水を貯めて、渇水時に流します」という一般論的な説明(プロパガンダ)で教育<洗脳>されている人々には、こうしたことはあえてインプットされない限りは、気づくこともなく終わることでしょう。

ピッタリ想定通りの場所に想定通りの雨の降り方をしなければ、効果がでない、しかも、効果が出ても「1㎝でも10㎝でも水位を下げる」という哲学のために半世紀もかけて、孫子の代まで借金をして1兆円近くかけて作るダムがあるなんて、思いも付きません。

このダム、必要なんだろうか、と疑問に思ったときは、ぜひ、「それでこのダムで想定されている水位低減効果は何㎝ですか?」と国土交通省や自治体に聞いてみてください。そして、もしも何㎝だと分かったときには、その効果とはあくまで初級編 、中級編 、上級編 で書いたように、これ自体が、絶対的ではない、矛盾もはらんだ想定に基づいた想定の数字であることを思い出してください。

ところで、何㎝水位が下がるのか、という住民にとって分かりやすい情報の代わりに、実際に事業評価でアピールされる「効果」は次のようなものです。流域をブロックで分けて、それぞれのブロックごとに「もしも堤防が切れた場合に最も被害が大きくなるところが切れる」という想定のもと、全ブロックで堤防が切れて被害が出ると想定。その洪水被害額=ダムの効果として計算しているのです。ダムができれば、これらの想定で起きる被害が回避できるというものです。

単純に言えば、その額を事業費で割って、「費用対効果」を出します。全ブロックで堤防が何カ所も切れる。しかも切れたら一番被害が大きくなるところが切れるという想定は、費用対効果を大きくするための想定ではないかと思うのですが・・・。

休憩はこの辺にして、以下の第二の教訓【これまでの利水】へと向います。

第一の教訓 これまでの治水ってどうやってきたのか
第二の教訓 これまでの利水ってどういうものだったのか
第三の教訓 これまでの環境ってどういうことだったのか
第四の教訓 ダム事業にはどんな欠点があったのか
第五の教訓 ダム事業はどうやって見直してきたのか
最後の教訓 これらの教訓を踏まえて読むと、
        中間とりまとめ(タタキ台)はどうなのか

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2010年7月 2日 (金)

ダム見直しの失敗(その12)

【これまでの治水(上級編)】です。
中級編をじっくり読んでくださったのであれば、
以下の国会議事録がサラッと読めます。
「上流ダム群により6,000m3/s」と言われていた頃のやり取りです。
ここ→「yamba_minute.doc」をダウンロード

総じて言えば、これまでの治水のあり方とは、
「想定」に基づいて、まずダムで水を貯めて
残りを河道で手当するというもので、常にダム計画が前提でした。

しかし、そのダムが治水の効果をもたらすのは、
・想定通りの雨が、想定通りの場所に降り方で降ったときだけ。
しかし、
・想定通りの雨が、想定通りの場所に降った2007年9月の台風でも、
想定の流量の3分の1しか川に流れませんでした。
(2007年9月26日の群馬県県議会で明らかに)

その要因も明らかになってきました。↓
雨が降ったらどれだけの水が川に出てくるかを「想定」する計算が
適正でないとの指摘です。(東京新聞のスクープ)

●八ツ場ダム 保水力は裸地以下? 数値に疑問(2010年3月7日)
http://yamba-net.org/modules/news/index.php?page=article&storyid=847 

このことが、実は密室の有識者会議で指摘されました。
つまり、ダムに頼らない治水を考えるのであれば、

1)「まずはダム」という考え方(治水計画の立て方)を転換する
2)雨が降ったらどれだけの水が川に出てくるかを「想定」する計算を見直す

と、最低でも、この2つが中間とりまとめ(タタキ台)の中に
打ち出されていなければ、
これまでの教訓やデータがまったく活かされていないことになります。

そして、私が読む限り、上記 1)、2)の見直しは、
中間とりまとめ(タタキ台)には、組み込まれていません。
何を見直すのか、その基準がまったく示されていないのです。

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ダム見直しの失敗(その11)

「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」 第10回で出てきた中間とりまとめ(タタキ台)を検証するために書き始め、はや、その11です。

長い!と痺れを切らしそうな方のために、先に結論を書くと、

この中間とりまとめ(タタキ台)を読む限り、
今後の治水もこれまでと変わっていない。

そして、この考え方に沿って見直すのは、
今までダムを進めてきた国交省の出先機関(地方整備局)、
独立行政法人水資源機構、そして、自治体。

これらが「お手盛り」で事業を見直すことになり、
それでは、これまでと変わらない「推進!」の結論しか出てこない。

こりゃ、たいへんだ、と、
河川官僚用語に長けた人であれば、このタタキ台を読めば分かるのですが
そうでない人が読めば、煙に巻かれる。
そこで、これを書き始めたわけです。

そんなわけで・・・その11

【これまでの治水(中級編)II】です。
前のコマでは、基本高水が書き込まれた河川整備基本方針が
絶対的なものではなく、「想定」でしかないことを書きました。
このコマでは、「矛盾」について書きます。

前のコマでお気づきのように利根川(PDF)では

カスリン台風(昭和22年)の後に決まった基本高水は17,000m3/s
このうち上流ダム群により3,000m3/sを調節して
計画高水は14,000m3/sという計算でした。
(これらの用語が分からなくなった方は、初級編へ)

その後、「想定」を2度変えて(一部後述)、現在(PDFのP.20)、
 基本高水22,000 m3/s
 上流ダム群により5,500m3/s
 計画高水流量を16,500m3/s

となっています。

見ての通り、基本高水に基づいて立てるダム計画は1基とは限りません。
利根川水系の場合、「上流ダム群により5,500m3/s」という想定です。

この場合、基準点である八斗島(やったじま)の「上流」ですから
今あるのは、この最後のページ(P.33)の
北から、矢木沢ダム、奈良俣ダム、藤原ダム、相俣ダム、薗原ダム
ぐっと南の下久保ダム合計6基(品木ダムは酸害防止用なのでカウントせず)。
そして、今計画中のものが八ツ場ダムです。
では、これを合計すると5,500m3/sになるとのかと思えば違います。

国交省河川局長は2005年2月25日の衆議院予算委員会第八分科会で、
かつてこの5,500m3/sが、6000 m3/sという想定だった時に、
「六千トンのうちのまだ比率としては三割とかそのぐらいにしかなっていない」と
国会で答弁をしています。

その内訳は、今ある6基で1000m3/s、八ッ場ダムが600m3/sで
もしも八ツ場ダムが完成したとしても合計1600m3/s。
差し引き3900m3/sについては計画がありません。
7基の中で最大の八ツ場ダムの規模で換算したとしても
あと6.5基の新しいダムが必要になる「治水計画」ですが、
八斗島の上流には、物理的に、そんな場所はありません。

机上の「計算」(想定)として、成り立つ数字であっても
現実には達成しえない数字が5,500m3/sです

実は、かつて6000 m3/sという数字が使われていました。
ところが、2005年2月25日、国会でこれは現実的な数字なのかとに問われ、
国交省は答えに屈し、その年の12月に審議会で、国交省としてその翌年、
その数字を、500 m3/sだけ下げました。
その分を「河道」で手当することになりましたが、
この八ツ場ダム約一基分に近い流量を、
どのように実現するのかと取材として聞いても、
当時の担当課長からは、確固たる答えは戻ってきませんでした。

上流ダム群の数字を下げたものの
ダムだけでなく、それ以外の治水方法によっても、
手当のしようのない過大な治水計画であることが、逆算的に分かります。

これまで見てきたように、
 基本高水22,000 m3/s
 上流ダム群により5,500m3/s
 計画高水流量を16,500m3/s

という数字は、どれも矛盾に満ちた「想定」です。

そして、その矛盾は、基本高水の「想定」から来ています。
この「想定」がどのように間違っていたのかは、
以前に環境雑誌グローバルネットで書き、それを転載しましたので、
こちらで見てみてください。↓

●博士論文が八ツ場ダム住民訴訟で物語った真実
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-3f75.html

ちなみに、地方裁判所でのこの裁判は、その後、住民が敗訴しました。
上記のような矛盾に満ちた「想定」が「ただちに違法であるとは言えない」、
つまり、「行政裁量」の範囲であるとしか、地方裁判所の裁判官には
判断ができなかったからです。今は高裁での争いになっています。

ちなみに、この博士論文を書いて河川工学者となった大熊孝氏が
出るシンポジウムがこちらです。↓

7/3 第二東京弁護士会シンポジウム(PDFチラシ
「ダムの歴史的功罪及びできるだけダムに頼らない治水はどうしたら実現できるか」

長い文章となってしましました。
ここまで忍耐強く読んで下さった方には、ただただひたすら感謝します。

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2010年7月 1日 (木)

ダム見直しの失敗(その10)

【これまでの治水(中級編)】です。
ぐっと難しくなりますよ!? 実際の川(水系)で、
初級編で書いたことが、どのように扱われているかを見ていきます。
分からなくなったら初級編と合わせて読んでみてください。

八ツ場ダムのある利根川水系で見ます。
さきほど書いた「想定1」と「想定2」は、
河川法では「河川整備基本方針」と言います。

どれぐらいの洪水に耐える治水計画にしようかと決め(想定1)、
その雨がどれぐらい降ると川にどれぐらいの水が流れてくるか、
「基本高水」の数値を求めると(想定2)、引き算で自動的に
「計画高水」の数値が出てきます。想定の結果ですね。

河川整備基本方針>利根川水系の中のここ(PDF)のP.20ですが、
利根川の河川整備基本方針についてこうあります。

================
利根川
基本高水は、昭和22年9月洪水、昭和57年9月洪水、平成10年9月洪水等の既往洪水について検討した結果、そのピーク流量を基準地点八斗島において22,000m3/sとし、このうち流域内の洪水調節施設により5,500m3/sを調節して、河道への配分流量を16,500m3/sとする。
================

分かります?↑
八斗島(やったじま:群馬県伊勢崎市八斗島町)という地点を基準にして
ピーク流量(=基本高水)を毎秒2万2千立米に想定し(想定2)、
毎秒5500立米を洪水調節施設(=ダム)で貯めようと計画すると(計画1)、
その残りの、川を流れる流量(=計画高水)は、毎秒1万6500立米です。

「河川整備基本方針」と断定的に書かれると、
それは絶対的なもので、なんの問題も矛盾もないように見えます。
ところがこれはあくまで「想定」であり、
絶対的でもなければ、矛盾がないわけでもありません。

まず、絶対的ではないことをお見せします。
同じ河川整備基本方針のP.5~P,6です。
想定である基本高水(現在2万2千)計画高水(現在1万6500)が、
時代の変遷とともに変わってきたことを示しています。
ドンドン大きな設定になってきています。
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P.5「利根川の治水事業は、明治29年の大水害にかんがみ、直轄事業として栗橋上流における計画高水流量を3,750m3/sとした利根川改修計画に基づき・・・」

P.6「明治43年の大出水により計画を改定し、上流における計画高水流量を5,570m3/sとして築堤、河道掘削等を行い・・・」

P.6「昭和10年、13年の洪水にかんがみ、昭和14年に利根川増補計画に基づく工事に着手した。その計画は、八斗島から渡良瀬川合流点までの計画高水流量を10,000m3/sとし・・・」

P.6「昭和22年9月洪水により大水害を受けたため、治水調査会で計画を再検討した結果、昭和24年に利根川改修改訂計画を決定した。その内容は、これまでの数回にわたる河道の拡幅、築堤の経緯を踏まえ、上流部のダムをはじめとする洪水調節施設を設置することとしたものであり、基準地点八斗島において基本高水のピーク流量を17,000m3/sとし、このうち上流ダム群により3,000m3/sを調節して計画高水流量を14,000m3/sとした。(略)この計画は、昭和40年の新河川法施行に伴い策定した工事実施基本計画に引き継がれた。」

P.6「その後の利根川流域の経済的、社会的発展にかんがみ、近年の出水状況から流域の出水特性を検討した結果、昭和55年に全面的に計画を改定した。その内容は八斗島において基本高水のピーク流量を22,000 m3/sとし、このうち上流ダム群により6,000m3/sを調節して計画高水流量を16,000m3/sとした。」
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人間の欲望や向上心と同じで、もっともっと、もっともっと安全にと
もっともっとダムが必要な想定になってきました。

その「もっともっと」が問題です。
次のコマで、「もっともっと」の結果、
ありえない矛盾が生じるまでになってきた、ということを明らかにします。

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ダム見直しの失敗(その9)

まず、このテーマに関係あるイベント紹介
●7/3 第二東京弁護士会シンポジウム(PDFチラシ)
「ダムの歴史的功罪及びできるだけダムに頼らない治水はどうしたら実現できるか」

さて、中間とりまとめ(タタキ台)を読み解くにあたり、
もう少し頭を耕します。

これまでどのような「治水」を行ってきたか、その問題点も合わせて、
【初級】、【中級】、【上級】にわけて解説をしたいと思います。
まず【初級編】です

【これまでの治水(初級編)】
これまでの治水は、
雨がどれぐらい降ると、
どれぐらいの水が川に流れ出すのかという予測を立て、
次に、この予測に基づいて、ダムで貯める水の量をまず決め、
次に、残りの流れ出してくる水の水位をどう下げるのか、と
こんな考え方で進めてきていました。

少しだけ専門用語を使って言い換えると
ひとつの予測(基本高水流量)に基づいて、
ダムで水を貯める量(洪水調整量)を決めて、個別のダム計画を立て、
次に、残りの流れ出してくる水(計画高水流量)を、
川幅を広げたり堤防を作ったりして、
溢れさせずに河道を流す計画を立ててきました。

もう一つ加えると、
「雨がどれぐらい降る」というひとつの予測は、川ごとに違います。
50年に1度の洪水なのか、
100年に1度の大洪水なのか
200年に1度の巨大洪水なのかを、
川が流れる流域に応じて決めていますから、その想定もいれると、
ダム計画を立てる前提にはいくつもの「想定」があります。

全部を通しておさらいをすると、
まず、川ごとに、どれぐらいの洪水に対する治水の計画にしようかと
国が学者や天下りを集めて審議会で決めます。(想定1)
次にその想定した規模の雨が降ったら、
どれぐらいの水が川に流れてくるかを決めます。(想定2)
これも、審議会で決めます。
次に、その流れてくる水を個別のダムで調整する量を決めます(計画1)。
最後に、川幅を広げたり堤防を作ったりして、
川を氾濫させずに川の中を水が海まで流れていく計画を立てます(計画2)。

ここまで大丈夫でしょうか?
おおざっぱな説明でも想定が2つ、計画が2つ。
問題は、この想定が正しくて、計画通りに行くのかどうかです。
それができて初めて、「治水」、つまり、洪水から人の命や財産を守ることができます。

それをどう実現するかが書かれているのが
「河川法」という法律です。
そして、ここまで説明したことが、河川法には書かれています。

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