« ダム見直しの失敗(その14) | トップページ | ダム見直しの失敗(その16) »

2010年7月10日 (土)

ダム見直しの失敗(その15)

前のコマ
農業用水の6割を正確に把握しておらず、
残り4割の農業用水が、把握されている取水量の8割を占める

の続きです。

今後の治水対策のあり方に関する有識者会議では、

最初に「ダムによらない治水」について考えて欲しいという諮問が
前原国土交通大臣からありました。

利水に関しては、現状を把握し、有効利用することにより、新規のダム、作りかけのダムを取りやめることができるのではないか・・・、誰だってそう考えます。

第8回(平成22年4月19日)の議事録にはこんな話が出てきます。
この資料2「利水の観点からの検討について(pdf,404.0KB)」(P.2下から4段目)で
事務局である河川官僚が、「農業用水等の合理化・転用」について、「ある程度可能」、「渇水調整の強化」は「なかなか難しいところがある」と。

これら一連の説明を受けて、ある委員がこんなことを言います。
===================================
例えば、この中のほうにあります、土地利用の規制とか、水田等の保全とか、こういうところは、国交省だけでなかなかできないですよね。水田の保全なんかをやろうと思ったって、これは農水省とやっぱりいろいろな形で議論していかないと。そういうものを取り入れていかないと、新しい方式は出ない。あるいは、ダムに頼らないとか、堤防に頼らない方式の洪水対策はやりにくいわけですね。したがって、こういうものをほんとうは政治的に議論していただいて。政治的に議論というよりも、トップの人が議論する。それを通常は法制化していくということが、私は大事ではないかと思います。ただし、すぐに法制化できて答えが出るものではないので、こういうものを採用するところについては、例えば、地方でやりたいということであれば、これを後押しするようなインセンティブ経費のようなものをつけていくとか。そうしないと、僕は新しい方式はなかなか出てこないのではなかろうかなと思っています。
===================================
とても正当な提案だと思います。

そして、政務三役側でもこんな提案をしています。
===================================
水利権の問題も、今までは国交省の中だけで、河川局の中だけで考えていたと思うんですけれども、これは、我々、政治主導ということを言っているわけです。したがって、例えば河川局としてはなかなか言いにくいかもしれませんけれども、我々政務三役が責任を持って、例えば工業用水の経済産業省と、あるいは農業用水の農水省と、例えばここに○○(政務三役)おられますけれども、政務三役で水利権を見直すワーキングチームみたいなものをつくって、そして、この柔軟運用をする中で、その公共事業の見直しも新たな評価軸に入れていくということをやっぱりやらないと私はいかんと思うんですね。そこは我々で乗り越えなければいけないことだと思いますし、乗り越えていくべきだと思います。
===================================
とても正当な提案だと思います。
官僚同士が、省庁の縦割りの中で阻まれてできなかったことを
政務三役が乗り越えたいという意思表示です。
この議論の中で2回も提案しています。

ところがある委員が次のようなことをいって、押し返しています。
===================================
【委員】 ちょっといいですか。○○(政務三役)はそれが主張なので、私はよくわかるんだけれども、政治主導というのは非常に重要なんだけれども、すべてが政治主導だけでできるわけではないし、それが一番いい方法だというわけではないと思うんですね。例えば、環境アセスなんかは、いろんな省庁がやっている事業に対して、環境大臣が意見を言える場というのをつくったわけですね。これは政治主導で最初は動いたかもしれないけれども、きちっとそれを社会システムにしていくとか、法制度にしていくとか、そういうことはやはりきちっとやらないと、いつもいつも政治主導で、その場限りで問題解決するというのは、やはり私には将来に向かって得策ではないという気がします。

だから、政治主導で動くのは大事なんだけれども、それをどういうふうに社会システムにして、法制度にしていくのかということをしっかり……。そのために我々が議論して、○○(政務三役)の力も借りながら、どういう社会システムをつくっていくかというのが大事で、いつもいつも政治主導と言われたら、私には、ちょっと引っかかるところがあります。
===================================

この識者、言っていることがメチャクチャ。ほとんど恫喝ではないか?

有識者なのですから、利水行政を変えるには法律のここをこう変えたらよい、とまさに提案をすればいい。実際、1997年の河川法改正で役人同士の協議で取り残されたところであるから、政務三役がこの仕事をやるということは画期的なチャンスだ。それをすると言っているのに、それをワザワザ止めようとしている。

確かに勘違いな「政治主導」のあり方を前原大臣はやっているところもあるけれど、ここは極めてまともなことを言っている。にもかかわらず、この識者は、従来の考え方を変えること諮問されているのに「解」を出そうとせず、現状を変えることに対して、反応(反対)している。

驚くのは、この抵抗に慌てて、政務三役が謝ってしまったこと。
ガ~ン<* 0*>。↓

===================================
【政務三役】 そういう意味ではないんです。
【政務三役】 すいません、私の言葉足らずであればおわび申し上げますが、そういう意味ではなくて、水利権の問題というのは、国土交通省だけで扱える問題ではないので。
しかし、先生方に評価軸を決めていただくということは、これはもうお願いしているわけですから、先生方に決めていただくんですが、では最終的に評価軸を決めるにあたって、でも、これはこういうふうにしたいけど、農水省や経産省がどう言うかなというようなことではいかんので、何かを決めるということではなくて、水利権について柔軟に、今まで省庁縦割りであったものを少し議論させていただいて、先生方の議論とオーバーラップをしながら、常にキャッチボールをさせていただく、こういうことであって、ここで政務官の各省の、例えばワーキングチームで決めるということではございませんので、その点だけは誤解なきように。すいません、私の言葉足らずであれば、おわび申し上げたいと思います。
【委員】 はい。
===================================

謝ることはまったくなかった。「先生方に、評価軸を決めていただく」と慌ててゴマを擦っているが、結局、見解は、グルッとまわって、国交省事務局が示し続ける。結局、脅し、すかしを繰り返す「有識者」を介して、官僚にコントロールされてしまう構図だ。

だから、公開すべきだったのだ。こんな会議。
議事録で公開されても困る。
歴史を変えようと思っているときに何故、「国民の目」を使わないのか?
ヒーローは一人ではヒーローになれない。
国民の良識の力をバカにすべきではない。

この恫喝委員(発言者名が非公開だが、発言内容から同一人物だと推察するしかない)は、大臣の提案と同意見の発言をした別の委員にも次のように噛みついている。

===================================
【委員】 一言だけ申します。
他省庁と議論いたしますと、できるものができなくなることがあります。
【委員】 あ、そうでしょうか。
【委員】 ですから、これは現場に任せたほうがうまくいく。
【委員】 現場のほうがいい。ああ、それならそれでいいと思いますが、新しい治水理念を立案しないと。
【委員】 というのは、河川事業というのは、最近まではほとんど農民のためだったんです。農民から絶対の信頼を受けているわけですよ。ですから、これを制度問題として他省庁にもちかけますと、お互い、建前で突っ張りますから、これ、できるものができなくなっちゃうという面もございます。むしろ、そっちのほうが危惧されます。
===================================

つまり、今までダメだったからこれからもダメだと。
逆に言えば、この委員は、利水行政において、何が問題だったかをよく知っている。
農水省や、その裏側にいる土地改良組合など政治的な地域ボスがいて、
水利権の譲渡や合理化や調整について、合理的な議論ができてこなかったことを
よく知っていると思わざるを得ない。

逆に言えば、この問題を一番に提起し、解決策を見つけだすことが、この有識者の役割であるにもかかわらず、それをしなかった。

そこで、政務三役がせっかく提案(二度も)したのに抵抗し、この議論に加勢した委員の議論もつぶし、終わった。その結果、タタキ台で示された「第8章 利水の観点からの検討」では、現状の問題点すら指摘されておらず、利水についての検討の仕方も、従来の考え方と何も変わっていない。(続く)

|

« ダム見直しの失敗(その14) | トップページ | ダム見直しの失敗(その16) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/82688/35700796

この記事へのトラックバック一覧です: ダム見直しの失敗(その15):

« ダム見直しの失敗(その14) | トップページ | ダム見直しの失敗(その16) »