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2010年7月 1日 (木)

ダム見直しの失敗(その10)

【これまでの治水(中級編)】です。
ぐっと難しくなりますよ!? 実際の川(水系)で、
初級編で書いたことが、どのように扱われているかを見ていきます。
分からなくなったら初級編と合わせて読んでみてください。

八ツ場ダムのある利根川水系で見ます。
さきほど書いた「想定1」と「想定2」は、
河川法では「河川整備基本方針」と言います。

どれぐらいの洪水に耐える治水計画にしようかと決め(想定1)、
その雨がどれぐらい降ると川にどれぐらいの水が流れてくるか、
「基本高水」の数値を求めると(想定2)、引き算で自動的に
「計画高水」の数値が出てきます。想定の結果ですね。

河川整備基本方針>利根川水系の中のここ(PDF)のP.20ですが、
利根川の河川整備基本方針についてこうあります。

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利根川
基本高水は、昭和22年9月洪水、昭和57年9月洪水、平成10年9月洪水等の既往洪水について検討した結果、そのピーク流量を基準地点八斗島において22,000m3/sとし、このうち流域内の洪水調節施設により5,500m3/sを調節して、河道への配分流量を16,500m3/sとする。
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分かります?↑
八斗島(やったじま:群馬県伊勢崎市八斗島町)という地点を基準にして
ピーク流量(=基本高水)を毎秒2万2千立米に想定し(想定2)、
毎秒5500立米を洪水調節施設(=ダム)で貯めようと計画すると(計画1)、
その残りの、川を流れる流量(=計画高水)は、毎秒1万6500立米です。

「河川整備基本方針」と断定的に書かれると、
それは絶対的なもので、なんの問題も矛盾もないように見えます。
ところがこれはあくまで「想定」であり、
絶対的でもなければ、矛盾がないわけでもありません。

まず、絶対的ではないことをお見せします。
同じ河川整備基本方針のP.5~P,6です。
想定である基本高水(現在2万2千)計画高水(現在1万6500)が、
時代の変遷とともに変わってきたことを示しています。
ドンドン大きな設定になってきています。
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P.5「利根川の治水事業は、明治29年の大水害にかんがみ、直轄事業として栗橋上流における計画高水流量を3,750m3/sとした利根川改修計画に基づき・・・」

P.6「明治43年の大出水により計画を改定し、上流における計画高水流量を5,570m3/sとして築堤、河道掘削等を行い・・・」

P.6「昭和10年、13年の洪水にかんがみ、昭和14年に利根川増補計画に基づく工事に着手した。その計画は、八斗島から渡良瀬川合流点までの計画高水流量を10,000m3/sとし・・・」

P.6「昭和22年9月洪水により大水害を受けたため、治水調査会で計画を再検討した結果、昭和24年に利根川改修改訂計画を決定した。その内容は、これまでの数回にわたる河道の拡幅、築堤の経緯を踏まえ、上流部のダムをはじめとする洪水調節施設を設置することとしたものであり、基準地点八斗島において基本高水のピーク流量を17,000m3/sとし、このうち上流ダム群により3,000m3/sを調節して計画高水流量を14,000m3/sとした。(略)この計画は、昭和40年の新河川法施行に伴い策定した工事実施基本計画に引き継がれた。」

P.6「その後の利根川流域の経済的、社会的発展にかんがみ、近年の出水状況から流域の出水特性を検討した結果、昭和55年に全面的に計画を改定した。その内容は八斗島において基本高水のピーク流量を22,000 m3/sとし、このうち上流ダム群により6,000m3/sを調節して計画高水流量を16,000m3/sとした。」
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人間の欲望や向上心と同じで、もっともっと、もっともっと安全にと
もっともっとダムが必要な想定になってきました。

その「もっともっと」が問題です。
次のコマで、「もっともっと」の結果、
ありえない矛盾が生じるまでになってきた、ということを明らかにします。

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