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2010年7月10日 (土)

ダム見直しの失敗(その14)

第二の教訓 【これまでの利水】の続きです。
おさらいから入ります。

利水、つまり水利権については、河川法に次のようにあるだけです。
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(流水の占用の許可)第二十三条  河川の流水を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
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実際には「河川法施行規則第11条」によって
「水利使用の許可の申請」を行って許可を受けます。

簡単にいえば、これこれの理由でどこからどれだけの水を使わせてくださいと
河川管理者(国や自治体)に申し込んで許可を受けます。

さて具体的に、何が起きてきたのか?
時代を巻き戻して、新しい切り口から書きます。

河川法ができたのは明治29年。
それより前から、人々の暮らしはあります。
この法律ができたとき、それより前から川からとって使っていた水は、
水利権の許可を得たものとみなすことにしました。
これは「慣行水利権」と呼ばれています。

これが昭和39年に大改正されて新法となった時、
旧法で「慣行水利権」と認められたものを2年以内に届出を出せば
引き続きそれを「慣行水利権」として認めて使えることにしました。

こう書けば、皆がきちんと昭和39年から41年の間に届出をしたと思うでしょう?
ところがそうじゃない。
河川管理者なら、誰がどんな「慣行水利権」をどれだけ持っているのか
把握しているのかと国交省に聞けば、
実は「取水量も届出も明確になっていない」のが実態です。

後でもう一度書きますが、少なくとも現在は、
川にどれぐらいの水が流れているのか(河川流量)によって、
水を取ってよい量が変わってきます。
ところが、この河川流量との関係も、慣行水利権では審査されていません。
国交省はこんな言い方をしませんが、事実上の「無法地帯」です。

では、届出や報告がきちんとなされていないデータとはどのようなものか?
『よくわかる河川法 改定版』(ぎょうせい)によれば、
分かっているのは、慣行水利権のほとんどが灌漑用水であること、
そして、慣行水利権の占める割合は
農業用水の「取水量で約6割程度」とされていること。

ということは、それ以外の、
昭和39年以降の河川法に基づいて申請して許可した「水利権」は約4割に過ぎない。

では、この許可され、把握されている「水利権」の中で
農業用水はどれぐらいを占めているのか?
これも、『よくわかる河川法 改定版』(ぎょうせい)によれば、
「水道用水」、「鉱・工業用水」、「農業用水」、「雑用水」という分類をした場合、
8割が「農業用水」
です。

つまり、国土交通省が行ってきた「利水行政」は、
農業用水の6割を正確に把握しておらず、
残り4割の農業用水が、把握されている取水量の8割を占める

ということを把握しているということ。

農業用水の占める割合が多いのは、日本に限った話ではありません。
米国では内務省開墾局総裁ダニエル・ビアードさんが1994年に
「ダム建設の時代は終わった」と宣言して拍手喝采を浴びましたが、
この背景には「農業用水」をほんの少し「都市用水」に回すだけで
今ある水を有効利用できる
、という考え方が先行していたことは
今まであまり強調されてきていません。

では、今、日本ですべきことは何か?
もしも、水が足りないというのであれば、
どれぐらい利用されているのか把握されていない6割の農業用水を把握すること
そして、把握されているあと4割の農業用水を合わせて、
現状を把握し、有効利用することにより、新規のダム、作りかけのダムを
取りやめることができるのではないか、と検討することではないでしょうか。

誰だってそう思います。
実は、私が、今このシリーズで猛批判している有識者会議の中でも
きちんとそうした「議論は」行われていたのです
。(続く)

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