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2010年7月 8日 (木)

ダム見直しの失敗(休憩)

少し間が空いてしまいました。7月3日(土)に開催された、第二東京弁護士会シンポジウムに行きました。その中で最も印象に残った言葉の一つについて書きます。元河川局長が「治水の原則は1㎝でも10㎝でも水位を下げることだ」と言った言葉です。

ここ数年で、ダムによる水位の低減効果についてようやく情報が出てくるようになりました。それに応じて、ようやく、上記のような言葉が聞かれるようになりました。以前には聞かれなかった言葉です。そして、もしそうだったとしたなら、重要なのは、ダムの効果がその程度であることを住民や納税者に知らされることなのですが、実態はそうではありませんでした。やいのやいの、根ほり葉ほり聞いてようやく知らしめる情報になってきたに過ぎないのが残念です。

たとえば、長野県で論争となり、一度は田中康夫知事によって中止され、現知事によって再開された県営「浅川ダム」の効果は、「5~6ミリの水位を下げるだけ」(『浅川ダムは5ミリの「減災」にしかならない」』週刊金曜日2007年3月30日号)です。ところがこの数値は、取材で根ほり葉ほり聞いて、ようやく担当者が口を割ってくれものです(5,6ミリしか水位が下がらない理由はバックナンバーで読んでいただければありがいです。)

ダムを作ったことによる治水効果、水位の低減効果がどの程度のものかという情報は、真っ先にアピールされていなければならない情報ですが、これは何故か、大概、どこのダムでも、未だに根ほり葉ほり聞かなければ出てきません。

また、その効果が雨の降り方によってはゼロですらあることも(たとえば八ツ場ダム計画のもととなったカスリン台風が再来した場合の八ツ場ダムの効果はゼロ)、あまり知らされてはいません。

「ダムは大洪水を貯めて、渇水時に流します」という一般論的な説明(プロパガンダ)で教育<洗脳>されている人々には、こうしたことはあえてインプットされない限りは、気づくこともなく終わることでしょう。

ピッタリ想定通りの場所に想定通りの雨の降り方をしなければ、効果がでない、しかも、効果が出ても「1㎝でも10㎝でも水位を下げる」という哲学のために半世紀もかけて、孫子の代まで借金をして1兆円近くかけて作るダムがあるなんて、思いも付きません。

このダム、必要なんだろうか、と疑問に思ったときは、ぜひ、「それでこのダムで想定されている水位低減効果は何㎝ですか?」と国土交通省や自治体に聞いてみてください。そして、もしも何㎝だと分かったときには、その効果とはあくまで初級編 、中級編 、上級編 で書いたように、これ自体が、絶対的ではない、矛盾もはらんだ想定に基づいた想定の数字であることを思い出してください。

ところで、何㎝水位が下がるのか、という住民にとって分かりやすい情報の代わりに、実際に事業評価でアピールされる「効果」は次のようなものです。流域をブロックで分けて、それぞれのブロックごとに「もしも堤防が切れた場合に最も被害が大きくなるところが切れる」という想定のもと、全ブロックで堤防が切れて被害が出ると想定。その洪水被害額=ダムの効果として計算しているのです。ダムができれば、これらの想定で起きる被害が回避できるというものです。

単純に言えば、その額を事業費で割って、「費用対効果」を出します。全ブロックで堤防が何カ所も切れる。しかも切れたら一番被害が大きくなるところが切れるという想定は、費用対効果を大きくするための想定ではないかと思うのですが・・・。

休憩はこの辺にして、以下の第二の教訓【これまでの利水】へと向います。

第一の教訓 これまでの治水ってどうやってきたのか
第二の教訓 これまでの利水ってどういうものだったのか
第三の教訓 これまでの環境ってどういうことだったのか
第四の教訓 ダム事業にはどんな欠点があったのか
第五の教訓 ダム事業はどうやって見直してきたのか
最後の教訓 これらの教訓を踏まえて読むと、
        中間とりまとめ(タタキ台)はどうなのか

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