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2010年7月18日 (日)

ダム見直しの失敗(その25)

今後の治水対策のあり方に関する有識者会議の第11回会議で示された「今後の治水対策のあり方について 中間とりまとめ(案)」は、その「巧妙さに解説が必要」なわけを、お預け状態の「歴史編」を絡めて書きます。

国土交通政務三役の言葉の端々から感じることを一言で言えば、彼らには「治水のあり方をかえよう」という意思と自信がある(ように見える)。その自信が見せかけでないとすれば、あまりにナイーブではないかと思えてしまう。そんなに簡単に「治水のあり方は変わらなかった」という歴史があるからだ。

2007年6月23日(土)に「川辺川を守る県民の会」総会に呼ばれてお話したときのメモをベースに書いていく。

●日本では住民参加や情報公開の制度整備が遅れ、1990年代にはいってもまだ
国や都道府県による公共事業のゴリ押しが可能だった。
住民にとっては、なんの了解もなく、突然、自分の住んでいる場所が、
「ダムの底に沈む」ことを知らされるというのが公共事業の姿だった。

例:苫田ダム(岡山県、完成2005年3月)
水没地住民がダム計画について知ったのは
1957年11月の山陽新聞記事「吉井川に苫田ダム」。

「寝耳に水の事態に驚いた岸川忠雄村長は、早速県庁に出向いて確かめたところ、
新聞報道のとおりダム計画は事実とわかった」
-住民編纂「ダムとたたかう町」(手帖舎)

●国民の意識が変わり始めたのは、すでに脱ダムを遂げた米国とさほど変わらなかった。
1993年12月、細川政権下で初めて、ダムの反対運動を行っていた市民団体が、建設大臣室に入った。五十嵐広三建設大臣が、長期化した大規模事業計画につき、「客観的に検討・評価して勧告する機関の設置が必要である」と発言。しかし、これだけで終わった。

1995年5月22日、長良川河口堰の本格運用が開始され、罪滅ぼしか、野坂浩賢建設大臣(村山政権)、「大規模な公共事業の進め方について、今後の大きな公共事業は、計画の当初からより透明性と客観性のあるシステムをつくる必要がある」と発言。

これを受け、1995年6月2日建設省が「大規模公共事業に関する総合的な評価方策検討委員会」設置を発表。これは、「ダム・堰事業については、大規模な事業であり、その建設に長期間を要し、また地域に与える影響も大きいにも関わらず、建設省の他の事業に比べて、地域住民の意見を聴取する都市計画のような手続きが制度上十分でなかったとの指摘を踏まえ、事業者が当該ダム・堰事業の目的、内容等について地域の意見を的確に聴取することを目的として6月30日に新しい評価システムをとりまとめ、試行することとした。」というものだった。

地域の意見を的確に聴取する!
これが、河川行政における初のブレイク・スルーだった。

●ところが、「地域の意見を的確に聴取する」の方法が具現化する過程でとんでもないことになった。

それまでダム事業を陳情して(させられて)きた張本人である知事が委員を選任するというもので、選任されたのは、関係自治体の長、議会議長、つまり、ダム推進をしてきた人、そして、その方針を下支えする学識経験者だった。

具現化の過程で、「地域の意見」が主権者たる住民や、参加意欲のある、意識の高い住民団体や環境保護団体ではなく、「地域の政治家の意見」となってしまった。

建設省が知事に見直しを丸投げした結果、中には、非公開、議事録作成なし、公聴会なし、たった2回の会議(顔合わせの回で、次回は結論を出しますとされ、2回目でその結論を出した)で推進結論を出した事業があった。

見直しは建前で、本音は事業推進のための「お墨付き機関」となってしまった。

そして、今回の「中間とりまとめ(案)」はこの見直しの枠組みに酷似している。(これについては後述)

●その失敗を挽回、いや住民意見を聞くという点を前に進めるために考えられたのが、1997年の河川法改正だった。今度はしっかりと、法律の中に、「関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない」(河川法16条の2)とはいった。

ところが、これも、インチキに終わった。(続く)

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コメント

かつて吉野川河口堰建設に関する「事業審議委員会」も最初のうちは”非公開”でした。市民や学者マスコミが”おかしいじゃないか、公開すると本音が言えない委員や有識者とは情けない”と騒ぎ出し、次第に公開されるようになったのです。その代わりに、参加する市民をいちいち写真を撮ったり、記名させたりして圧力的でした。
、公開の場では発言できない”有識者”とはなんぞや。

投稿: 玄さん | 2010年7月21日 (水) 21時22分

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