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2010年7月 2日 (金)

ダム見直しの失敗(その11)

「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」 第10回で出てきた中間とりまとめ(タタキ台)を検証するために書き始め、はや、その11です。

長い!と痺れを切らしそうな方のために、先に結論を書くと、

この中間とりまとめ(タタキ台)を読む限り、
今後の治水もこれまでと変わっていない。

そして、この考え方に沿って見直すのは、
今までダムを進めてきた国交省の出先機関(地方整備局)、
独立行政法人水資源機構、そして、自治体。

これらが「お手盛り」で事業を見直すことになり、
それでは、これまでと変わらない「推進!」の結論しか出てこない。

こりゃ、たいへんだ、と、
河川官僚用語に長けた人であれば、このタタキ台を読めば分かるのですが
そうでない人が読めば、煙に巻かれる。
そこで、これを書き始めたわけです。

そんなわけで・・・その11

【これまでの治水(中級編)II】です。
前のコマでは、基本高水が書き込まれた河川整備基本方針が
絶対的なものではなく、「想定」でしかないことを書きました。
このコマでは、「矛盾」について書きます。

前のコマでお気づきのように利根川(PDF)では

カスリン台風(昭和22年)の後に決まった基本高水は17,000m3/s
このうち上流ダム群により3,000m3/sを調節して
計画高水は14,000m3/sという計算でした。
(これらの用語が分からなくなった方は、初級編へ)

その後、「想定」を2度変えて(一部後述)、現在(PDFのP.20)、
 基本高水22,000 m3/s
 上流ダム群により5,500m3/s
 計画高水流量を16,500m3/s

となっています。

見ての通り、基本高水に基づいて立てるダム計画は1基とは限りません。
利根川水系の場合、「上流ダム群により5,500m3/s」という想定です。

この場合、基準点である八斗島(やったじま)の「上流」ですから
今あるのは、この最後のページ(P.33)の
北から、矢木沢ダム、奈良俣ダム、藤原ダム、相俣ダム、薗原ダム
ぐっと南の下久保ダム合計6基(品木ダムは酸害防止用なのでカウントせず)。
そして、今計画中のものが八ツ場ダムです。
では、これを合計すると5,500m3/sになるとのかと思えば違います。

国交省河川局長は2005年2月25日の衆議院予算委員会第八分科会で、
かつてこの5,500m3/sが、6000 m3/sという想定だった時に、
「六千トンのうちのまだ比率としては三割とかそのぐらいにしかなっていない」と
国会で答弁をしています。

その内訳は、今ある6基で1000m3/s、八ッ場ダムが600m3/sで
もしも八ツ場ダムが完成したとしても合計1600m3/s。
差し引き3900m3/sについては計画がありません。
7基の中で最大の八ツ場ダムの規模で換算したとしても
あと6.5基の新しいダムが必要になる「治水計画」ですが、
八斗島の上流には、物理的に、そんな場所はありません。

机上の「計算」(想定)として、成り立つ数字であっても
現実には達成しえない数字が5,500m3/sです

実は、かつて6000 m3/sという数字が使われていました。
ところが、2005年2月25日、国会でこれは現実的な数字なのかとに問われ、
国交省は答えに屈し、その年の12月に審議会で、国交省としてその翌年、
その数字を、500 m3/sだけ下げました。
その分を「河道」で手当することになりましたが、
この八ツ場ダム約一基分に近い流量を、
どのように実現するのかと取材として聞いても、
当時の担当課長からは、確固たる答えは戻ってきませんでした。

上流ダム群の数字を下げたものの
ダムだけでなく、それ以外の治水方法によっても、
手当のしようのない過大な治水計画であることが、逆算的に分かります。

これまで見てきたように、
 基本高水22,000 m3/s
 上流ダム群により5,500m3/s
 計画高水流量を16,500m3/s

という数字は、どれも矛盾に満ちた「想定」です。

そして、その矛盾は、基本高水の「想定」から来ています。
この「想定」がどのように間違っていたのかは、
以前に環境雑誌グローバルネットで書き、それを転載しましたので、
こちらで見てみてください。↓

●博士論文が八ツ場ダム住民訴訟で物語った真実
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-3f75.html

ちなみに、地方裁判所でのこの裁判は、その後、住民が敗訴しました。
上記のような矛盾に満ちた「想定」が「ただちに違法であるとは言えない」、
つまり、「行政裁量」の範囲であるとしか、地方裁判所の裁判官には
判断ができなかったからです。今は高裁での争いになっています。

ちなみに、この博士論文を書いて河川工学者となった大熊孝氏が
出るシンポジウムがこちらです。↓

7/3 第二東京弁護士会シンポジウム(PDFチラシ
「ダムの歴史的功罪及びできるだけダムに頼らない治水はどうしたら実現できるか」

長い文章となってしましました。
ここまで忍耐強く読んで下さった方には、ただただひたすら感謝します。

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