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2010年8月10日 (火)

ダムの見直し(解読書兼意見書の参考例)

今後の治水対策のあり方中間取りまとめ(案)へのパブコメを書くにあたり、まずは6月から書いてきたことを以下にまとめてみた。現時点では雑感などが含まれている。

老舗案今本博健・京都大学名誉教授の考え方共に、(私のまとめは分かりにくいかもしれませんが)参考にしていただければ幸い。

対象事業 P.15、P63~66
1.検証の対象とするダム事業を拡大すべき

【有識者案】P.15、P63~66 検証の対象とするダム事業
【意見】検証の対象とするダム事業を拡大すべき。たとえば「天竜川ダム再編」は、国費で行うべきものなのかということすら問われる問題が含まれている。また、長野県浅川ダム、熊本県路木ダム、香川県内海ダム、石川県辰巳ダムなど、根拠が明確に挙げられた上で、反対の激しい事業が漏れており、今からでも見直しを行った方が賢明な事業が含まれている。一方で、これまで「生活貯水池」と呼び、「ダム事業」と称してこなかった小規模な事業が散見される。これら小規模なダム(生活貯水池)を中止し、見直しの印象を水増しする工夫を疑ってしまう。

2.検証の対象とした事業は、周辺工事を含めて凍結すべき。
【有識者案】触れている箇所がない。
【意見】検証の対象としたものは、周辺工事を含めて凍結すべき。検証を行っている間に、不可逆的な改変が行われては無駄が多い。事業を継続しようというインセンティブが働きかねない。
(その5)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-94e9.html 

治水P.4~14
3.治水対策を抜本的に転換すべき

【有識者案】5頁、7行~「河川整備の長期的な目標としては、河川整備基本方針において計画高水流量等が設定されている」「最終的に河川整備基本方針で目標とする安全度が確保される」
【意見】治水対策を抜本的に転換すべきだ。
・ 流域において、どこにリスクがあるのかを住民が共有し、予算配分の優先順序を決めていく、新たな治水対策へと抜本的に転換すべきだ。
・ そのためには、一定規模の洪水を想定して目標を達成する、という治水対策をやめ、流域全体で洪水リスクを低減させていくべきだ。
・ 河川整備基本方針を達成する考え方で治水計画を立てること自体が、ダムによる治水を前提とするものだから、この考え方をやめるべき。
・ 「河川整備計画を上回る洪水」を考えは、下回る水位では破堤しないことを前提にしていることだとも言えるが、下回っても破堤する可能性はあるので、
・ いかなる洪水であっても、破堤はしないことを目指すべきだ。たとえば、B/C計算のもととなる治水経済調査マニュアルが現実を反映しているものであれば、このマニュアルに応じて、堤防が切れたら最も洪水被害が多いとされる場所の堤防強化や高床式住宅への改築補助を充実させることを優先させるべきだ。
・ 治水経済調査マニュアルが現実を反映していないものであれば、これを破棄し、B/C計算の根拠に使うべきではない。

(その9)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-69d7.html
(その10)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-643f.html
(その11)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-f7f0.html
(その12)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-2b5b.html 
(休憩)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-ab19.html 

4.100歩譲って治水対策のマイナーチェンジにとどめるなら、過大な洪水予測のもととなる流量計算など基本高水の元データの公開や批判的検証を行うべき
【有識者案】5頁、7行~「河川整備の長期的な目標としては、河川整備基本方針において計画高水流量等が設定されている」「最終的に河川整備基本方針で目標とする安全度が確保される」
【意見】現河川法による治水のあり方を踏襲するなら、仮定の立て方がおかしいことが指摘されている以上、流量計算の仕方から見直しを行うことが先決だ。また、基本高水を求めるための他のデータについてもブラックボックスで公開されていない。どのような操作が行われたのかが分からないデータは治水計画に使うべきではない。

(その13)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/3-38d2.html
(参照新聞記事)http://yamba-net.org/modules/news/index.php?page=article&storyid=847

検証手法P.12~18、P,19~44
5.ダム事業に批判的な住民、市民団体を含めた直接参加による見直しが必要

【有識者案】14頁、6行~「現在事業中の個別のダム事業について検証し、事業の必要性や投資効果の妥当性を改めてさらに厳しいレベルで検討する」「科学的合理性、地域間の利害の衡平性、透明性の確保を図り、学識経験を有する者、関係住民、関係地方公共団体の長、関係利水者の意見を聴く」
【意見】「厳しい」検証のためには、ダム事業に批判的な住民を必ず検証、検討の場に含めることが重要である。住民を含め、批判的意見は聞きおくだけでは不十分で、事業者と双方向の討議、熟議が行える場を確保することが重要だ。また、議論の公正を期すため、事務局はダムを実施する事業者ではない第三者が務めるべきだ。

6.国土交通省所管公共事業の再評価のやり方では不適切、不十分
【有識者案】P.12~18、P,19~32の 16頁、3行~、 20頁~44頁「個別ダムの検証は、事業の再評価の枠組みを活用することとし『国土交通省所管公共事業の再評価実施要領』を適用する」「再評価実施要領細目を新たに定め、その細目において本中間とりまとめで示す手順や手法で実施することを規定するなど、所要の措置を講じる」
【意見】第一に、国土交通省所管公共事業の再評価で使われてきた『治水経済調査マニュアル』は、他のすべての代替案を比較しにダムが一番安い、という解を出すために使われてきたと言っても過言ではない。治水経済調査マニュアルが現実を反映しているものであれば、堤防が切れたら最も洪水被害が多いとされる場所の堤防強化や高床式住宅への改築補助を充実させることを優先させるべきだ。また、治水経済調査マニュアルが現実を反映していないものであれば、これを破棄し、B/C計算の根拠に使うべきではない。

第二に、この書き方は不十分である。治水は全国民に関係があることにもかかわらず、『国土交通省所管公共事業の再評価実施要領』やここには触れられてさえいない『治水経済調査マニュアル』を知らなければ、意見を持つこと、意見を言うことすらままならない。ここを一から勉強しなければ読み解けない。「依らしむべし。知らしむぺからず」の態度はまったく評価できない。

第三に、20頁から挙げられている様々な代替案については、これまでも存在はしていたが、それが選ばれない治水のあり方だったからで、選択肢が20頁~34頁のように明文化されても、その選択肢が選択されるための根拠(治水の考え方)が4頁~14頁に示されていないので、結論が変わる確証がない。むしろ、惰性でこれまでと同じ選択肢が選ばれても不思議はない。意見5、7で示すやり方に変えるべきだ。

(その29)青森の場合http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-157f.html
(その31)代替案http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-c816.html

7.ダムにたよらない治水を望む住民を含めた直接参加による見直しが必要
【有識者案】16頁、下から11行~「検討主体」、18頁、1行~「情報公開、意見聴取等の進め方」「「関係地方公共団体からなる検討の場」を設置し」
【意見】17頁のやり方は、これまでダム事業が必要であると推進していた(表向きの理由とは別に、雇用の場、地域振興などの政治的意図がある)「関係地方公共団体からなる検討の場」で、従来行われてきた国土交通省所管公共事業の再評価のやり方を行うことを意味する。つまり、コスト縮減案や代替案を含めた対応方針(案)を事業者が提出して、出席する者が事業者に疑問点を尋ね、意見を言い、対応方針(案)通りでよしと追認するやり方だ。これでは、これまでと変わらないダムありきの結論がそのまま通っても不思議はない。そこで、淀川水系流域委員会が行ったように、第三者に事務局を任せ、公募をした住民(ダムにたよらない治水に賛成の住民を必ず含む)を含め、「ダムにたよらない治水」を目標に熟議を行う場を確保するなど工夫が必要である。検討に必要名資料を河川管理者に出させながら検討できる場にすべきだ。
 18頁のやり方は、1996年から行われたダム等事業審議委員会のやり方、すなわち、住民意見をアリバイ的に聞き置いて終わったやり方の踏襲であり、熟議の主体、検討の主体に公募による住民が含まれるべきだ。また、公募に漏れた住民でも、傍聴者発言が認められる機会を確保すべきだ。

(その26)予測例:1都5県
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/15-b227.html 
(その30)14年間の繰り返し
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/14-b97b.html

8.追認機関となりかねない事業評価監視委員会で同様の方法で意見を聴いても意味がない。
【有識者案】18頁、7行~ 「検討主体は、検証の対象となるダム事業の対応方針の原案を作成し、事業評価監視委員会の意見を聴き、対応方針(案)を決定する」とある。
【意見】16頁、3行~に「個別ダムの検証は、事業の再評価の枠組みを活用することとし『国土交通省所管公共事業の再評価実施要領』を適用する」とある。事業評価監視委員会での見直しのあり方は、短時間ですべてのデータは事業者任せで、良心的な委員であれば従来もぼやいてきたように、事業者の対応方針通りを追認する機関でしかありえない。同様のやり方では、何度もやる意味がない。ダブルチェックを行うつもりであれば、ダム事業に批判的な関係住民を見直しの場に加えて時間をかけて行うべきだ。

利水P44~58
9.「水需給計画の点検・確認」は「需要予測の見直し」と明確化すべきである。

【有識者案】P45 「検討主体は、利水参画者に対し、ダム事業参画継続の意思があるか、開発量として何m3/s が必要か、また、必要に応じ、利水参画者において水需給計画の点検・確認を行うよう要請する」
【意見】これは、「水需給計画の点検・確認」とは「需要予測の見直し」を意味するものととらえるが、解釈によっては見直しをせずに「水受給計画は適正である」と結論づけるダム事業参画がいても不思議はない。そこで、「需要予測の見直しを行わなければならない」と明文化すべきである。

10.水利権の許可制度を変えなければ変わらない。
【有識者案】P44~58 
【意見】水利権の許可制度を握っているのは国土交通省であり、裁量で決めてきたその許可制度を変えなければならない。実質的に長期にわたって取水ができている受益者等が、必要最低限の投資で、水利用ができるよう水利権の許可制度を改めるべきである。
(その14)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-7264.html
(その15)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-58e6.html
(その16)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-82a2.html
(その17)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-cae4.html
(予告編)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-b58f.html
(その28)官僚の裁量、政治的行政からの脱却
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-9055.html

11.「河川維持流量」=「不特定容量」をダム建設の理由とすべきではない
【有識者案】54頁、4行~「環境への影響」では一切触れられていない。
【意見】ダムを作って自然の流れを堰き止めるために必要になる機能を「河川維持流量」と称し、「不特定容量」の名で満たすために、ダム建設の必要性が編み出されるという本末転倒なことがまかり通ってきた。それを是正すべきだ。守るべき生物の生息環境を守ることを理由に、ダム建設が正当化されるべきではない。

(その18)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-b58f-1.html
(その19)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-7089.html
(その20)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-f168.html 

コストP.59~60
12.事業の長期化、増大分、想定外を考慮しなければ、適正な評価とならない。

【有識者案】59頁、14行~「今回の検証が厳しい財政事情を背景としていることに鑑み、「コスト」を最も重視することが考えられる」下から6行~「時間的な観点から見た実現性を確認することが必要である」60頁、1行~「第7章に示す評価軸についてそれぞれ的確な評価を行った上で、財政的、時間的な観点を加味して次のような考え方で総合的に評価を行う」
【意見】事業者が自己申告する完成時期やコストは、例外がないほどに長期化、増大している。従って加味するのであれば、長期化、増大分を考慮しなければ、適正な評価とならない。また、地質の悪さによって起きる地すべりや災害など、想定外のコストは、地質の再調査、事業中止などによってリスクを回避できるものであることを評価軸に入れるべきである。
(その21)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-a132.html
(その22)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-39e7.html

国土交通大臣による判断、差し戻しP.61~、P.67
13.住民が求める情報を事業者が開示せず、住民の意見を聞き置くだけで、住民を検証・検討の場に主体的に参加させることができなければ、ダム建設を推進する法体系と構造が変わっていないので、大臣の理念と意思を明確に示したとしても、事業者が主体で検証・検討を行ったとしても、大臣の考え方に検証結果が反していると判断できたとしても、差し戻しは困難である。唯一、違う状況を作り出すことができるのは、ダムにたよらない治水を進めたいと考える住民が直接参加し、事業者と熟議ができる場が設定されることである。
【有識者案】
61頁、14行~「検討結果の報告に当たっては、別添資料2に示す報告書の構成例を参考に、書面によって報告する」
61頁、15行~「検討結果の報告を受けた後、国土交通大臣は、本中間とりまとめで示す個別ダム検証に当たっての共通的な考え方に沿って検討されたかどうかについて当有識者会議の意見を聴き、当該ダムについて、概算要求等の時期までに判断する。」「手順や手法から乖離した検討が行われたと判断される場合、国土交通大臣は、地方整備局等及び水機構に対しては、再検討を行うことを指示し、都道府県に対しては、補助金交付等に係る対応方針の決定に十分な情報がないとして、再検討を行うことを要請する」
67頁、「報告書の構成例」
【意見】
・ダム事業者とその考え方に組みしない関心ある市民の考え方の乖離は激しく、情報量の非対称も激しい。
・また、現役官僚、地方自治体への出向、公益法人やコンサル、建設分野の民間企業への天下り、受注発注と言った相互依存関係が、従来通りのままであれば、ダム開発を中止したくないというインセンティブが働いて当然である。
・この中で、現河川法に基づく考え方(河川整備基本計画をクリアすることは、その大本で過大であるとされる河川整備基本方針を適正であることを前提としており)に従って事業の見直しを行えば、代替案との比較検討を行っても、従来と大差ない答えが出てくることが予測される。
・67頁の「報告書の構成例」を見ても、最終的に、現行のダム事業計画と共に、基本高水と計画高水流量が書き込まれ、見直しを行った事実、評価軸、総合的評価が書き込まれるだけである。
・大臣は有識者の意見を聴いて、判断することになっているが、有識者会議もまた、過去にムダを生んだ治水・利水事業のムダの構図を、残念ながら総括できていないと考える。
・過去の失敗を十分に総括できていない人々の意見が、大臣が命じた新しい治水のあり方に沿ったものとなることは残念ながら考え難い。

・すなわち、全体的プロセスで考えた場合
1.「検証主体」(地整局や機構や自治体)が検証した対応方針案を
2.「検討の場」に自治体が参加し、住民には意見を聴くだけで決め、
3.その対応方針を事業監理委員会が検討し、
4.さらに有識者会議が意見を言ったものを、
5.大臣が見て、どう覆すことができるのか、
「大臣」と言っても、大臣本人が数十のダム事業の検証をできるわけがなく、
「大臣を補佐する所管の河川官僚」を意味し、
1~4が検証のプロセスを経たものを行政官である河川官僚が覆すことができるわけもなく(ということを言い訳に)、対応方針案に従うしかないことを大臣に報告するだけのことではないか。

大臣が命じた「できるだけダムによらない治水」という観点から見直しに参加するアクターは、この中間とりまとめ(案)には、ひとりだに存在しない。従って、批判的な住民でも参加し、熟議ができるプロセスが必要であり、見直しを事業者に委ねるべきではない。

(その23)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-39e7-1.html 
(その24)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-5e7f.html
(その25)http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-d7e6.html
(社説や河登一郎さんなど)
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-e448.html 
(その27)から見える国と地方の関係
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-053b.html 

それにしても、読みにくい取りまとめだ。
「対象→治水→検証方法→利水→コスト→大臣の判断」と、支離滅裂な順番で構成されている。そして最後の資料として、「対象事業」と「報告書の構成例」が付いている。
ほとんどの人が、読むこと自体、さじを投げてしまうのではないか。それが狙いで「依らしむべし。知らしむぺからず」の態度から出てきた案だとしか思えない。要約すらついていない。ポンチ絵すらついていない。理解を求めよう、分かってもらおうという意思すら見えない。不親切過ぎる。

とか言いながら、私自身、もっと分かりやすい解読書、意見書が書けるべきだが、脳みその限界です。書き殴り状態ですが、どうかお許しを。

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