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2011年1月20日 (木)

ダム検証の客観性

八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場 第三回 (関東地整が1都5県の部長・局長クラスを集めて開催する幹事会)で21.7億円工事費が削減されると説明し、記者にその中身を尋ねられて、関東地整が「たとえば地質が思ったよりもよかったから」と答えた根拠を尋ねて5日目。

19日(水)夕刻、担当者から再度電話をいただき、ようやく固有名詞が出てきた。「ドーコンとアイドールエンジニアリングが平成20年に調査したときの想定の地質」だそうだ。

これが一文で出てきたのではない。「ドーコンとアイドールが調査した」から始まって、「今やっている」とか「調査報告書になっていない」とか言い間違えたか口を滑らしたかしながら。(調査報告書ですらないもので工事費を算出しているとしても、せめて文書として記録に残っていなければならないと思う)

「それがもともとの調査ですか?地質が悪いとハズレた想定をした方の?」と聞くと、「そうではなく・・・」ということで「良かったとした方。だとすると何と比較して良いとなったのか。もともとの方も教えてください」ということで、再度また電話をいただけることになった。感謝する。

きっちりとした行政文書の根拠を尋ねると、その裏側になんの裏付けもない。取材をしていると、そんなことは日常茶飯事だ。だが、いざ、記事にするとなると、細部に宿るこうしたいい加減さを表現することが難しい。エンディングに向けて、しばし詳細にこうしたことも記録していこう。

今回、私が尋ねているのは総事業費4600億円の八ツ場ダム事業の負担金を払わせられる都県向けの幹事会で説明があった「八ッ場ダムの検証にかかる工期及び総事業費の点検の考え方(案)」 の中に出てくるp.3「八ッ場ダム建設事業 総事業費の点検結果(中間的な整理)(案)」の左側半分。現在と点検後の事業費「比較」で増減額が合計で「-21.7億円」。ある記者が、減額の大半を占める工事費「-23.9億円」の中の「不測の事態への備え」18億円について、これは何かと尋ねていた。これに「たとえば地質が思ったよりも良かったこと」と答えていたのが関東地整だ。

そして、今、改めて見ると、この18億円には「注4」がついていて「今後の不測の事態(気象、地盤条件等)の備えとして、平成19年度の事業費精査により生じた約18億円が含まれている金額です」とある。

すると、今日答えをもらった「ドーコンとアイドールエンジニアリングが平成20年に調査したときの想定の地質」というのとは、・・・これまた辻褄が合わない。振り出しに戻る・・・。

ちなみに各社ウェブで見ると、アイドールエンジニアリングは「関東地方整備局 八ッ場ダム工事事務所 優良業務・優秀技術者 八ッ場ダム実施設計業務」で局長表彰を受けているhttp://www.idowr.co.jp/gaiyou/hyoushou.html

何も難しい質問をしているわけではない。単なる事実確認である。
「不測の事態への備え」18億円の根拠を尋ねている。
その根拠すらないのであれば、幹事会での説明資料は単なる紙切れだ

●前原誠司・初代民主党国土交通大臣に「ダムにたよらない治水」を命じられ、
今後の治水対策のあり方に関する有識者会議
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/index.html
を密室で開いた。

●これを受けた形にして、
馬淵澄夫・二代目民主党国土交通大臣の下で、河川局長が
http://www.mlit.go.jp/report/press/river03_hh_000265.html
添付資料2「ダム事業の検証に係る検討に関する再評価実施要領細目
http://www.mlit.go.jp/common/000125234.pdf を発表した。
これには、ひとことも「ダムにたよらない治水」の文言がない。それどころか、「第一」の「目的」に、自民党政権下で作った「国土交通省所管公共事業の再評価実施要領」に基づいて見直します、と刻印してある。つまり何も変えないという見事なまでの霞ヶ関文学だ。

霞ヶ関文学を読み解ける一部の人々だけが、シメシメと思ったり、辟易したりする。大臣の顔を立てる文言を要所要所にちりばめておき、忙しい大臣に説明をしたときには、おそらくそこに重きを置いて説明したものと推測する。

● そうして「政治家抜き」ではじまったダム事業の検証で「ダム推進の大合唱」をする都県官僚を前に、工期、事業費、基本高水の説明を行ったわけだ。その中で説明された数多くの数字の一つの根拠を尋ねることは、いわば検証の確かさのサンプリング調査のようなものだ。

「21.7億円減額」うちの「18億円」という国交省にとってのポジティブ情報さえ、その根拠がもしも客観的に提示できないのであれば、「検証」自体の客観性が欠如していることにならないか。

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