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2011年2月19日 (土)

中身以前

困った。本来、国会で議論すべきことが
どんどん、何の責任も負わない、何の公的責務も任務も
法的な根拠も位置づけもない日本学術会議

土木工学・建築学委員会の
河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会
という
誰も知らない場で議論されている。

日本最大の利根川水系の基本高水(本来は洪水を防ぐために使われる目安)の話だ。

吐き気がするほどネジレている。
ネジレていて問題なのは、国会ではない。
国会は、国民がその国民の民度で投票により選んだ多様な烏合の衆(失礼!)である。

ネジレいて当然で、それを言論(衆議院)と良識(参議院)によって合意形成していくのが国会の役割であり、国民の縮図である。合意形成する言論力と知力を与野党とも持たないことは情けないがこれも民度。民主党内の愚かなネジレすら白日のもとに報道され、
投票でいつでも落とすことは可能である。

ネジレていて問題なのは、政権与党と行政の関係だ
国交省河川局は、政権交代以来、省益を脅かす指示や政治的な判断にはまったく従おうともしてこなかった。

誇り高き素人集団である議員センセイを手玉にとり、
「政権交代しても大丈夫だったぜ!」とばかりに省益を再度追及し始め、
やりたい放題。図に乗って研究者の利用法も高度化した。

かつて、「審議会」は行政の隠れ蓑と言われた。
今回はより高度な隠れ蓑方式が編み出されたとしか言いようがない。
審議の記録が「公文書」としてすら管理されない隠れ蓑だ。

大臣に指示された基本高水の見直しを河川局長が日本学術会議会長に依頼。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/takamizu/pdf/haifusiryou01-2.pdf 

公務として、国交省本省からも関東地方整備局からも責任者が出席し、
「基本高水を見直している印象」を与えながら、そして、
委員長はしきりに「説明責任を果たしたい」と述べるが、
しかし、実際はこれは冒頭に書いたように、
何の公的責務も任務も法的な根拠も位置づけもない日本学術会議の会議なのだ。

国交省河川局にとっての、この会議の利点は公文書管理問題にとどまらない。
意にそぐう結論がでれば、金科玉条。
万が一、河川局の意にそぐわない結論が出てきた場合、
その結論を無視することができる。その予防線は依頼文で張っている。
「国交省自らが行うものですが」「貴会議に依頼することにしました」
淀川水系の河川整備計画では、直営の「淀川流域委員会」の結論ですらひっくり返したのであるから、理屈も造作もない。

日本学術会議のこの分科会も第一回会議で「情報公開の徹底」を謳った。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/takamizu/pdf/haifusiryou01-5.pdf

果たして第二回目、2月18日、様相は一転。
・ 「圧力」を理由に発言者名は非公開。
 「土木工学・建築学委員会
 河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会の進め方(案)」にはこうある
 「発言者の指名は公開せず、「委員長」、「委員」と表記する。
 これは氏名公開が圧力となって自由な発言が妨げられることを避けるためである」

・ 分科会内にタスクフォース(これは国交省が使う用語で、会議内に「ワーキンググループ」に訂正)を設置して検討。
・しかもこの件について研究発表する場合は河川局長の許可がいる。
・この進め方でいくがご意見は?と聞かれて、異議を唱えた委員はいなかった。

重要なので強調させてもらうが、今回の見直しの結果を反映して、基本高水が見直されない、あるいは見直されたとする。しかし、将来、どうしてそのような判断に到ったのかと疑問に思った後世の人間が、そのプロセスのすべてについて調べようとして国交省に開示請求をしても、現時点の情報公開法では、その記録は「不存在」となる。国交省がそこにつぶさに出席し、記録を取っていたとしても、当然のことながら、実質、国交省に持ち帰り、組織共有する情報であっても、その記録すら「個人メモ」=「不存在」となる可能性は高い。今のままでは。

このことの繊細さと重大性を委員本人達が気づかされないまま深みにはめられたのではないかと会議の終盤に首を傾げることがあった。

実は、会議中に委員たちの説明に対して河川局側が繰り返した言葉があった。委員達の質問に対して、「資料が確認できないのでお答えができない」という言葉だ。

これに対し、「検討しろと依頼をしておいてバカにしとんのか」と
ちゃぶ台をひっくり返してもいいのに、委員達は
「残念だ」とか、「今後はしっかり保存してくれ」と大人の感想を口々に述べた。

それに対する河川局側からの弁解がふるっている。
「資料はあるが、プロセスが説明できない」というもの。
これには心臓だけが地獄の底にまで落ちていくような感覚を覚えた。

この回答によってこの分科会を同罪にしたのも同然ではないか。
たった今、彼らの目の前で、分科会も誰からもそのプロセスを監視されない
「流出解析レビューのためのワーキンググループ」の設置を決めたばかりだった。

「学術会議としての説明責任を果たしたい」
「公開での専門家ヒアリング」、「公開説明会」という明言があったものの、
学術会議としての報告書は5月下旬を目処に出したい、

そのために、小池委員長いわく
「報告書ではレビューだけでなく、どのような流出解析手法を考えていくべきかに触れたい。ただし、これは研究ではなく、現実社会なので、運用できるよう位置づけたい。短時間でどうするのか。分科会の中でタスクフォースを作って分担してまとめていく作業をしたい。委員長、副委員長はかならずはいる。他は委員のボランティアで。短期決戦なので、このように会議を開くのは困難なので電話会議とメールでやりとりしたい」(私の取材メモより)

プロセスの見えない会議を行わざるをえない研究者に対する圧力を作り出しているのは河川局そのものだ。
国土交通大臣から自分たちが指示された「利根川の基本高水の見直し」を、
電話会議とメールで研究者にやらせるところまで持っていく。

この頭の良さをなぜ他のことに使えないのか、河川局。

そして、この無責任体制に歯止めをかけられない民主党政権への圧力をも
同時に作り出している河川局

誰も辿ることができない袋小路へ逃げていきながら高笑いをしている。

少なくとも50年前に済ませておくべき闘いを
今を生きている人間がやらなければならない意味を考えてしまう。

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 ダム問題を追及しているジャーナリストのまさのあつこさんの以下のブログ記事をご一 [続きを読む]

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