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2011年3月29日 (火)

机上の計算委員会(結論の一つ)

昨日、2011年3月28日、「日本学術会議 土木工学・建築学委員会河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会」が乃木坂で開催された。その前提をこちらで書いたが以下が本題。

この分科会のミッションは、八ツ場ダムの前提となる利根川の基本高水の計算手法に問題が見つかったので検証せよ、という元馬淵国土交通大臣の命令に対し、国交省河川局長が、第三者として検証を依頼した日本学術会議の命を受けて、その検証を行うこと。

昨日の分科会では、しかし、90%以上の時間とエネルギーが、その検証過程を議論することではないことに割かれた。(その検証はワーキンググループで少人数で行っており=非公開の場)

国交省は、その計算手法の問題を国交省自ら総括する責任を放棄して、新たな計算手法を出すので問題をすり替えようする策だと私は見ているが)、その手法についてのヒアリングを分科会として行ったのが昨日の会議の内容だった。

● 昨日の会議の結論の一つは、「国交省が新たに作ってきた基本高水の計算手法はおかしいので持ち帰って検討しなおせ」ということだ。

計算手法を従来のやり方と変えるのであれば、現行のやり方にどのような問題があって変えるのかを説明せよ。計算手法を変えるのなら、何故、通常の河川工学ではやらないやり方で計算手法(*)でやるのかの説明をせよ」という委員達のあらゆる角度からの質問に対して、国交省がまったく説明ができなかったからだ。

回答をするのはもっぱら関東地方整備局の柿崎河川調査官。

谷誠・京都大学教授、椎葉充晴・京都大学教授、田中丸治哉・神戸大学教授、窪田順平・大学共同利用機関法人人間文化研究機構准教授から異口同音で出た同種の疑問を、中盤で一端、小池俊雄東京大学教授(委員長)がまとめた。

そして、「持ち帰って検討していただく。そういうことでいいですね?」と委員長が国交省側に振ると、下っ端の柿崎氏が同関東地整の山田河川局長の顔をみて、局長も左右の人をキョロキョロと見て、結局、柿崎氏が答えた答えが(明らかに答えを持っていないので)またしても答えになっていないので、最終的に、「あ、俺かよ」というタイミングで、山田河川局長が、「私は頭が悪いので(笑)今すぐにはなんとも・・持ち帰って検討をします」と答えていた。

(*)パラメータであるK、P、TL、f1,Rsaの設定の仕方が通常では考えられない手法になっていた。

前のコマで述べたように、「基本高水」自体が「治水のための机上の計算論」である。計算が合い、計算式の理屈が通れば、科学的にはその解(最終的な結論となる基本高水)がなんであれ可能。それが科学であり、科学の限界はそこにある。このことがまず基本だ。

言い方を変えれば、出そうとする結論に合わせる計算手法を作ることが可能だということだ。

委員の皆さん達も質問をされていたが、パラメータを途中で変えて計算をするのでは意味がないのではないか?どういう理解をされていますか?と終了後のぶら下がり取材で質問をすると、「工夫をしているということだと思いますよ」と委員長。その「工夫」の仕方がおかしいよ、理屈に合わないよということで、差し戻されたのが昨日の国交省だ。

そもそもこの分科会が設置されることになったのも、国交省がその「出そうとする結論に合わせる計算」をする上で、本来は変化させてはいけないはずの「パラメータ(定数)」を、洪水のたびごとにバラバラと変えていたことをを馬淵元国交大臣が衆議院で答弁し、そのことを内緒にしていたまま「計算があっています」と結論していたことが明らかになったからだ(一般人は通常これを「隠蔽」と「鉛筆ナメ」=「嘘」という)。

昨日は、何人かの委員が、しきりと上品な言い方で、この点、分科会の意義を再確認していた。

●私が国交省と一般の普通の人々のために、勝手ながら、意訳をしてしまえば、こういうことだ。「鉛筆ナメがバレてこの分科会ができたんだから、どこで鉛筆をなめていたのかちゃんと白状しなさい。鉛筆ナメじゃないというなら、説明して疑いを晴らしなさい。また、新しい計算手法を発表するなら、鉛筆ナメをしていないことをしっかり証明しなさい。そうでなければまた鉛筆ナメと言われて禍根を残しますよ」ということである。(この翻訳に間違いを見つけた方はまさのあつこまでご連絡のほどヨロシクお願いします)

分科会は国交省が呈している問題の本質を突いたと思う。

●なお、この分科会を「治水の前提を問わない分科会」と称するのは、利根川の基本高水は時間の経過と共に大きくなってきており、この分科会ではそこは問わないという意味です。
前提にも書いたように実態として、「机上の計算」以外のミッションは持っていない委員会であるということを理解した上で取材や傍聴をすることが重要かなと思います。一方でしかし、分科会には、その前提を越えて、研究者の良心を見せて欲しい。

●利根川の基本高水は時間の経過と共に大きくなってきている件はこちらに↓
ダム見直しの失敗(その10)
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-643f.html

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