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2011年6月14日 (火)

利根川の基本高水の検証 出口か振り出しか

利根川の基本高水の検証プロセスは難しくて、正直ついていくのが大変だったが、
科学は明解でもあり、検証結果が見えてきたところで
門前の小僧にも、自明になってきた争点(1.2.3)がある。

ところが、それとは逆で、
日本が誇る内閣府所管の日本学術会議の分科会は「解釈」は分かりにくい。

1.カスリーン台風(昭和22年9月)の最大流量

【従来】戦後最大級の洪水だが、堤防が決壊したため、当時の正確な記録がない
国交省の言ってきた2.2万トン/秒(基準点での流量)は過大であるとされてきた。

【今回】ところが、分科会は、国交省の大雑把な再推計(①内水と外水(*)を区別しない。②浸水面積×浸水最大深÷2で計算)をヨシとした。そのために、元々問題があった過大要因が排除できずに、そのまま大きな疑問符とともに残っている。科学者として、なぜ、この疑問点を放置したまま、過大な流量でヨシとするのか分からない。分科会では独自モデルも使ってそれが妥当であると判断すると案文を書いている。

★大熊孝参考人や先人の指摘が反映されず、振り出しに戻った。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/takamizu/pdf/haifusiryou04-3.pdf 

2.森林の保水力 森林の成長

【従来】森林の成長による軽減効果は大きな洪水ではない。

【今回】影響が陽にあるとは言えない、と分科会が案文を書いている。

ところが、新しく東京大学が作った計算モデルで見ると、年々、保水力が高まったことが、折れ線グラフでとてもよく分かる。さすが東大!しかし、何故か、解釈だけは従来通り。(おもわず「陰にはあるんですか?」と質問。「いや、陽にあるとは言えない」と回答)

3.地面の保水力 飽和雨量

【従来】インチキの検証(分科会の存在理由)のきっかけとなった、一律48ミリと裁判所に国交省が出した飽和雨量(雨がたくさん降るとこれ以上は水を吸い込まなくなる雨量)が、国会の質疑で、実は年に応じてバラバラな数値がはいっていたことが分かった。

【今回】結局、「一律48ミリ」と「バラバラ数値」比較はやっていないようだ。(下記取材テープ起こし(☆)参照)

つまるところ、

【従来】従来の国交省モデルでは、森林の土壌は、一度飽和するとその後は水を吸わずに川に流出することになっている。(貯留関数法モデル)

しかし、もし、土壌が水を吸う量がゼロになることはなく、一度降り止むと水を吸う力が回復する<★関良基参考人の指摘>なら、国交省モデルでは流量が過大になる。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/takamizu/pdf/haifusiryou04-2.pdf 

なお、【検証するにあたって】
インチキ騒動以後、吾妻流域は「飽和しない」地質であることになった
これですでに従来の国交省モデルは破綻しているのだが・・・・

【今回】新しい東京大学モデルでは、関良基参考人の仮定を証明する「二山洪水」(国交省モデルでは再現できない)を再現できている。さすが東大!(少なくとも私の目にはそのようにしか見えない)。しかし分科会は「侵入能・保留能の回復は見込めない」と何故か目に見える結果とは正反対の解釈で案文を書いている。

【感想】1.2.3の疑問はまだ解消されないので、もう少し資料を読み込むことにする。その一方で、私がこの分科会を高く評価するのは、とにもかくにも誰も排除することなくおおらかに取材・傍聴をさせてくれたこと、終了後の会見で委員長がどんな質問(分からないなりの質問や失礼な質問も含め)にも真摯に答えてくれたこと、そして、議論を通して、何が問題か、何が争点なのかを、今までに明確に浮き彫りにしてくれたことです。

昨日が最終回となるはずがあともう一回、20日に開催されることになりました。

 
~(☆)インチキに関するぶらさがり取材(抜粋再掲)~~~~~~~~~~~~
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-0ef0.html 

ま:以前、裁判の中で国交省が出していたいろいろなパラメータの一覧と、馬淵さんが大臣だったときに国会の中で答えた数値がバラバラだったわけなんですけれども、だからこれが始まったんですけれども、何故、元々だしていた国交省の数値と大臣が出した数値が違っていても、今日のような結果になったんでしょうか。違っていた数字が入っていたにもかかわらず同じようなところに落ち着いたんでしょうか。インチキはなかったんでしょうか。

小池委員長:私どもは前は知らないので、すみません。私どもは今あるモデル。それからCommonMP上で現行モデルと言われるパラメータとモデルを検証してそれで出したのに対して、私どもの結果と比較したということしか言えませんので。

ま:国交省が全然違う数値を出していたことは御存じなかったんですか。

小池委員長:私どもが言えるのは、存じていますけれども、なぜこういうことが起こったのかも。そりゃ、引き受けているから。

ま:え~え~。

小池委員長:知ってますけども、だけど、そこに違いがあるということは聞いておりますけれども、私どもがやるのは、最初出してこられたモデルは、私どもはいかがなものかと申し上げたわけです。それが間違っているということは言っていなくて分かり難いと、わかりにくさがあったと。始めからドキュメントで説明していただければそういう議論にはならなかかったかもしれませんが、そういう説明がなかったときに、本当に分からなかった。分かり難かったんです。

ま:どの辺が分からなかったんですか。

小池委員長:モデルの構成が分からなかったんです。それはあの非浸透域と浸透域というふうに、まぁ流出域と非浸透域とわけて、やられているということ、式も出ていないし、なかなか理解できなかった。私どももこうであろうと思って考えていたことと、国交省がお考えになっていたことが違っていたんです。それは3回目のご説明のときと、4回目は専門家をお呼びしたときでしたので、3回目と5回目ですね。この2回で、どうも何か考えていることが違っているなと、そこで明らかにしてくださいという要望書を出して、それをいただいて、私どもも検討した結果をお示しして「このモデルを推奨します」とうことをご提案したんです。その時点で国交省は考えられて、私どもが推奨するモデルをお使いになったわけですね。それが今現在出てきておりますので、それとその前の状況を私どもがこう物理的に比較するということはしておりませんので、分からないとしかお答えできない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(*)
内水:堤防で守られた内陸側に、川などに流入できずに溜まってしまう浸水。ダムでは解決できない。堤防が溢れたり決壊したりしていないのに浸水するこのような被害を「内水被害」と言う。
・外水:堤防の中、川を流れる水のこと。
一般的には「堤防の中」と言えば川側をイメージする、河川工学では守る側の町を「内」、川を「外」というのだ。

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