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2011年7月 9日 (土)

世界脱原発事情(ボツったけど)

日本学術会議「検証」の検証YouTube報告 を月曜日までトップに置いておきたいところだが、6月19日に(前日の海江田大臣と19日の菅直人首相コメントを聞いて大慌てで)、運がよければ直ちに掲載してもらえるオルタナ誌(ネット版)に送ってボツった記事を載せる。

突如、ストレステストで話題が沸騰しており、
首相が週明けに政府見解を出すと言っている現状では多少は人々の役に立つだろうと思うので。(こんなことなら、紙媒体でも間に合った(ため息)。)

~~~ボツ原稿の掲載~~~~

「今そこにある危機」は、第二第三の福島原発の方だ!
まさのあつこ(ジャーナリスト)

6月18日、海江田万里経済産業大臣は、定例会見の翌日である休日(土曜日)を選んで「原子力は、化石エネルギー、再生エネルギー、省エネルギーと並んで我が国の未来のエネルギーを担う重要な4つの柱の一つである」と始まる談話を発表した。

こともあろうか、談話の最後は、「我が国経済の今後の発展のためにも、原子力発電所の再起動を是非お願いしたい」との文言で締めくくられている。資源エネルギー庁と原子力安全・保安院は、談話と共に「産業空洞化は今そこにある危機」(P.3)であるとペーパーで訴えた。

しかし、実際の「今そこにある危機」とは、福島をはじめとする広範な周辺県民を不安に陥れ、高濃度汚染水を「低レベル」と称して海洋放出し、総放出量37万テラベクレルを3ヶ月過ぎて77万テラベクレルだったと上方修正し、「11万トン」と称する高濃度の染水浄化施設を稼働させた途端に5時間で停止した、放射能と収束の見通しのなさにまみれた福島第一原発の方だ。

現状への不信と不満と不安は、世論調査にも現れた。日本世論調査会が6月11、12日に実施した世論調査で、「直ちに全て廃炉にする」(9.4%)「定期検査に入ったものから廃炉にする」(18.7%)「電力需給に応じて廃炉を進める」(53.7%)の合計が82%となった。その国民感覚とは、まったくずれている。

この談話は、6月7日に原子力災害対策本部が過酷事故の防止策と対応策を整理して、各電気事業者に原子力安全・保安院による「シビアアクシデントへの対応に関する措置の確認に係る審査基準」 を示し、6月14日にその報告が上がってきたことを受け、「適切に実施されている」と評価して出したものだ。

しかし、その基準とはお粗末で小手先の基準である。(1)全交流電源喪失が発生しても、中央制御室で事故対応ができるよう、電源車や非常用発電機が確保されていること、(2)緊急時の通信手段が確保できていること 、(3)高線量に対応できる防護服や個人線量計を確保する、(4)メルトダウンにより生じる水素爆発による施設の破壊を防止するための措置を講じること、(5)がれき撤去用の重機を配備することの5点である。汚染水処理など福島第一原発で進行中の問題は網羅されていない。最低限以下の基準である。

6月19日、東京電力広報部は、筆者の問いに対し、「この談話は国民の皆様へ向けられたものであると受け止めており、柏崎刈羽原発については原子力安全・保安院から指示のあった点検を7月中旬まで行って、地元の了解を得た上で検討したい」と述べている。福島県での原発再稼働はあり得ず、新潟県の泉田裕彦知事は「論評に値しない」と猛反発しているが、当然である。

福島第一原発の事故は、世界のエネルギー政策を塗り替えた下表)。米国では、大手NRGエナジー社が東芝と合弁でテキサス州で進めていた原発建設事業から撤退した。欧州では、EU(27カ国)と欧州原子力安全規制局が、6月1日から域内143基に対して始める「リスク・安全再評価」は、「Fukushima」を踏まえた天災と人災を含めた包括的なものだ。天災には、地震、洪水、極寒、極熱、竜巻、豪雨などを含み、人災には飛行機事故や付近の爆発事故やテロ攻撃も含んでいる。これが先進諸国として当然の反応である。現在、産業を空洞化させているのは福島第一原発事故であり、今そこにある危機とは、第二、第三の福島原発となり得るその他の原発が抱えるリスクの方である

Photo

参照(6月19日時点のだからリンク切れしていたら失礼!) 
・WWFジャパン 
http://www.wwf.or.jp/activities/climate/cat1277/100/ 
・「ボリビア:原発のない南米に」, 開発と権利のための行動センター, 2011/04/26

http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2011/04/post-71f3.html 
・“Asselborn demands critical analysis of French nuclear plant”, NEWS35, 22/03/2011 
http://hello.news352.lu/index.php?p=edito&id=111495 
・”After Fukushima: EU Stress tests start on 1 June” 25/05/2011

http://ec.europa.eu/avservices/player/streaming.cfm?type=ebsvod&sid=180698 
・”Lithuania says official, decisive “no” to Belarusian Nuclear Power Plant”, 26/05/2011,

http://www.lithuaniatribune.com/2011/05/26/lithuania-not-happy-about-minsk%E2%80%99s-answer-about-belarusian-n-plant/

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コメント

8日と本日の合同記者会見を視聴し、まさのさんの質問をお聞きました。
「100ミリシーベルト以下では確率的影響は確実にあると科学的に言われている」
「被爆した放射線量が100mSv未満では放射線が癌を引き起こすという科学的な証拠はない、という枝野官房長官の発言は国際規準とは相容れない」
とおっしゃっていますね。
私はこれを聞いて、いささか絶望的な気分になりました。
原発事故から4ヶ月も経過しているのに、何故放射線に関するこれほどの根本的な認識まで理解されずに誤解されているのだろうかという疑問です。


政府あるいは科学者の説明力が不足しているのだろうか?
それとも、不信を抱いている人には、それを受け入れる心の余地が残されていないのだろうか?
あるいは、(失礼な言い方ではありますが)自然科学の基本的素養を持っていない人にはそれほどに伝達困難なことなのだろうか?


たぶん理解していただけないだろうとは思いますが、私の認識しているところを述べます。
確率的影響(癌の増加)が確実に証明されるのは100mSv以上であって、それ未満では枝野さんの言われるとおり、統計学では証明できないのです。
証明できているのであれば、その証明結果に基づく数値を用いて放射線防護に使えばいいのです。
ただ、証明できないからと行って100mSv未満を安全だとするのでなく、放射線防護に関しては比例相関があると仮定して確率的影響があるというふうに取り決めて対処しましょう、というのが行動規準です。
つまりICRPの「しきい値なし直線」仮説は、科学的に決めたのではなく、「約束」なのです。

投稿: LNT | 2011年7月12日 (火) 23時28分

ご指摘の「確率的影響(癌の増加)が確実に証明されるのは100mSv以上」は「癌の増加が優位に証明され、確定的に言えるのは100mSv以上」のお間違えかと思いますよ。逆に確定的とは言えないが、確率的に影響があるのが「100mSv以下」と考えることが被曝防護のために慎重であろうという考えであると取材者として理解しています(ところでアタナ様のお立場は?)。被曝線量が高くても低くても影響がないとは誰も否定できないと。

ご参考までに、私が参考にしている科学者の意見を、少し長いですが、衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会(平成23年05月20日)議事録から抜粋させていただきます。

●衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会(平成23年05月20日)における崎山比早子氏(高木学校)(元放射線医学総合研究所主任研究官)(医学博士)の陳述。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
 がんになるのは低線量ですけれども、たくさんの放射線を一度に全身に浴びると、例えば六千から七千ミリシーベルトを一度に浴びると、ほとんど一〇〇%の人が死亡します。五〇%の人が死亡するのは、大体三千から四千ミリシーベルト浴びると五〇%が死にます。
 こういう大量の放射線を一度に浴びた場合に、比較的短時間の間に、皮下出血とか脱毛とかいろいろな症状が出てきます。この症状は、時間的に急性なので、急性障害というふうにいいます。その急性障害は、放射線を浴びた人だれかれなしにあらわれるので、確定的影響とも呼ばれています。
 この急性障害のあらわれる一番軽い症状というのは、リンパ球や白血球の一時的減少です。これが起こる線量というのは、百から二百五十ミリシーベルト。
この線量以下ですと、直ちに健康に影響を与える量ではありませんという説明がよく出てきますけれども、そういう線量になるわけです。低線量域ですね。
 この低線量域が安全、安心でないということは、これが原因になって、数年から数十年後にがんになる、発がんが起こるということで、それで安心、安全ではないということなんです。この発がんというのは、だれかれなしではなくて確率的に出てくるので、遅く出てくるから晩発障害、確率的影響ということで、確率的に出てくるのでそういう影響だということになっています。
(略) 
それでは、どういう線量でどのぐらいの発がんが起こるかということなんですが、一ミリシーベルトを一万人の人が浴びると、その中で一人がんになる。十ミリシーベルトを浴びると十人ががんになる。百ミリだと百人。これは、これ以下の線量だと安全だ、がんが出ない、そういう閾値はないという閾値なし直線説です。
 このモデルは国際放射線防護委員会が出しているわけですけれども、もとになったのは広島、長崎の被爆者です。その被爆者のリスクに二分の一を掛けたのが、この防護委員会のモデルです。
 次、お願いします。
 今の発がんの閾値なし直線説を採用している機関というのは米国科学アカデミーで、これから出ているBEIR7という報告書があります。それにもはっきり書いてあります。それから国連科学委員会、UNSCEARに書いてありますし、今の国際放射線防護委員会、ICRP、それから欧州の放射線リスク委員会、ECRRも、こういうところの機関は閾値なし直線説を採用しています。
 ということは、放射線には安全量はないということが国際的な合意事項になっているということなんです。
~~抜粋以上~~~

投稿: まさの | 2011年7月13日 (水) 10時25分

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