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2011年11月 9日 (水)

意見陳述(4)都民による2つのスクープ!

オーストラリアではついに炭素税導入。首相がキュートなオーストラリアン・アクセントで発表。  

一方、日本は、費用対効果の資料を欲しいと言ったら、「開示請求をしろ」と言われる国。B/Cの水増し(会計検査院の指摘に反する被害想定の水増し)と、アンケート集計のインチキの話後半部分)があまりに凄まじいので、順序を入れ替えて、転載させていただきます。

八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)に対する 深澤洋子さん(八ッ場ダムをストップさせる東京の会)の意見です(2011.11..6さいたま会場)」↓

(後半部分) 次に、八ッ場ダムの費用便益計算、つまりコスト・ベネフィットのカラクリについてお話しします。私たちはこの資料を、パブコメを書くのに必要だから見せてほしいと関東地方整備局に頼んだのですが断られました。それで情報公開請求して、やっと先週入手し分析したところです。この資料をもとに計算すると、八ッ場ダムがないケースで、毎年の洪水から50年に1回の洪水までの氾濫被害額を累計した時、利根川流域の年平均氾濫被害額は均で6,788億円、八ッ場ダムがあるケースで5,693億円と想定されており、差し引き1000億円余りが(確率処理を経て)年平均被害軽減期待額という八ッ場ダムの便益になります(スライド2)。しかし現実には、「水害統計」によれば、利根川全体の1961~2007年の47年間における年平均被害額の実績値は181億円現在価値への換算額)であり、(ダムなし)想定被害の2,7%にすぎません。

ダムの過大な便益を生み出すこうした過大な被害想定について、国交省は会計検査院から2010年10月に次のように改善するよう指摘されています。「年平均被害軽減期待額の算定の基礎となる生起確率が高い降雨に伴う想定被害額については、過去における実際の水害の被害額を上回っているものが多く見受けられた。(中略)上記の状況を踏まえ、年平均被害軽減期待額の便益の算定方法をより合理的なものとするよう検討する必要があると認められる」という指摘です(スライド3、4)。

しかし今回の費用便益計算も、八ッ場ダムのB/Cを膨らますため、不遜にもこのまっとうな指摘を完全に無視しました。費用対効果を出すたびに、2,9→3,4→6,3と膨れ上がってきた八ッ場ダムのB/Cは、このようにデタラメなものなのです。

ではどうしてこんなに過大な被害想定になるのか。一つには、現実の洪水ではあり得ない、何カ所でも同時に破堤するという想定をしているからです。実際には上流ブロックで氾濫すれば、河川内の洪水の一部が外に逃げて水位が下がるため、下流ブロックでの氾濫は起きにくくなります。ところが、国交省は上流ブロックで氾濫しても、それとは無関係に下流ブロックでも氾濫するという前提で計算しているのです。しかもそれは、5年に1回の洪水でも2、3カ所、10年に1回の洪水では3、4カ所破堤するという計算です。もちろん現実には、利根川本川では1949年のキティ台風以来60年間、氾濫らしい氾濫が起きたことはありません。このように、現実と遊離した頻繁な同時多発的な氾濫を想定することで、氾濫被害額が大幅に水増しされているわけです。

この報告書の5章「費用対効果の検討」では、洪水の他に「流水の正常な機能の維持」が取り上げられています。そもそも、川を分断するダムによって「流水の正常な機能の維持」をはかるというのはブラックユーモアです。ダムを造って川の自然な流れを断ち切っておきながら、これだけの水はチョロチョロ流しますよ、ありがたいでしょう?と、ダムの便益に計上するペテンのような手法です。今、吾妻渓谷の流量が少ないのは、水力発電所に水を取られているからで、来年春の水利権更新にあたり「発電ガイドライン」で流量が増加すれば、本来の吾妻渓谷の姿が復活します。八ッ場ダムで「流水の正常な機能の維持」をはかるなどという口実は消し飛んでしまうのです。

それなのにこの報告書本体の検証では、その代替案として空想的な事業をいろいろとひねり出しています。中でも傑作なのは、長野県の千曲川から導水管を作って水を引く案(スライド5)。地下水を掘削して渓谷に流す案というのもあります。本来ダムは治水や利水のために造られるもので、「流水の正常な機能の維持」は後づけの、付帯的「効用」なのに、その分のダムのコストと、それに代わる施設を一から建設するコストを比較するのが馬鹿げています。誰が、吾妻川の流量を増やすためだけに、わざわざ千曲川から水を引いてくるでしょうか? わざわざ井戸を掘るでしょうか? 地下水は飲み水としてこそ使ってほしいものですが、利水の検討ではまるで取り上げられていません。東京都が地下水を保有水源にカウントしていないことも見過ごされています。全く意味がない検討に紙幅を費やし、真実を隠そうとする検証です。

「費用対効果の検討」に話を戻しますと、その検討の一環として「流水の正常な機能の維持」のために、あなたならいくら払いますか、というアンケートが行われています(スライド6)。その際、八ッ場ダムができることで吾妻渓谷上流部の川原湯岩脈などの貴重な自然景観が水没すること、ダム下流で岩を洗う自然な増水がなくなることにより、下久保ダム下流の三波石峡のように草茫々の無惨な姿となることには全く触れていません。発電ガイドラインで、八ッ場ダムとは関係なく流量が増えることも説明していません。それらの八ッ場ダムのマイナス面を伝えていたら、回答者の支払い希望額は全然違っていたでしょう。偏向した作為的なアンケートと言えます。

情報公開請求で入手したアンケート内容と集計結果によれば、郵送で1500票送って648票回収、そのうち抵抗・無効回答が322票と約半数です。抵抗回答というのは、ダム事業に反対、アンケートに反対といった回答だそうですが、その場合は当然、支払い希望額はゼロでしょう。ところが集計では、有効回答280票のみを分析し、その平均に調査対象の52万世帯を掛け合わせ、8億5千万円という途方もない便益をたたき出しています。抵抗回答を書いた人も、ばかばかしいからアンケートを返送しなかった人も、全世帯が年間1632円払ってもよいことにされています。利根川流域の吾妻渓谷周辺50キロに住む全世帯が、八ッ場ダムの「流水の正常な機能の維持」のために、毎年8億5千万円払ってもよいことにされたのです。そしてこのアンケートは、発電ガイドラインによって自然な流量が「ただで」回復することから、全く無意味な税金の無駄遣いであったということになるのです。

 この「流水の正常な機能の維持」の総便益はダム完成後の50年間で139億円とされ、洪水調節の総便益、つまり八ッ場ダムによって防止できるとされる洪水被害額2兆1925億円と比べればちっぽけなものです。でも私は知っていただきたいのです。ダムのベネフィット、効果としてこんなブラックユーモアのような「機能」が計上されていること、そのばかばかしい代替案を考え、あやしいアンケートを実施するために、国民の税金が無駄遣いされていることを。

(前半部分)
 
この検証はばかばかしい検証です。なんでこんなにばかばかしいのかよく考えてみました。 まずはこれまでダムを造ってきた、造りたい人たちだけで検証しているという枠組みです。予断なく検証するというなら、ダムに批判的な有識者、流域住民も交えて議論しなくてはならない筈です。ダム推進側だけで9回も会議して、初めから決めていた結論を出す、これは全く検証の名に値しません。

  それから、これまでの前提を変えずに、あるいはより大きな洪水予測をたてて、残ったダム事業費と代替案をコスト比較するというこの検証の根幹に疑問があります。八ッ場ダムはいびつな公共事業で、本体工事は事業費4600億円のうちわずか9%です。それ以外の道路・鉄道などの関連工事は、この検証中も着々と進められ、報告書には残事業費が1300億円と書いてあります。この残事業費と、ダムに代わる施設を一から造る場合のコストを比べるというのが今回の検証です。しかし、地滑り対策、減電補償などで今後さらに事業費が膨らむことは確実なので、この額面上のダム事業費は少なすぎます。

 一方、ダムの効果が過大に見積もられていることから、それに見合う代替施設も過大・高額となり、結果としてダムを造り続ける方が安上がりになるカラクリなのです。ちなみに、治水分に関して言えば、八ッ場ダムの全事業費は2,400億円であり、河川掘削などの代替案の費用はいずれもそれを下回っています。つまり着工前から八ッ場ダムと他の対策を比較していれば、ダムは造れなかったということです。

 今、八ッ場ダムを検証することの意味は何か、あらためて考えてみると、残事業費がどうのと言う前に、60年以上前に計画された八ッ場ダムが今も必要なのか、その前提をシビアに問うことだと思います。水余りでほとんど断水も起こらず、節水機器の普及で今後も水の使用量が減っていく、また地下水も地盤沈下がおさまり安定的に使える、そういう利水の現状があります。一方で、豪雨によってダムが洪水調節機能を失い堤防が壊れ甚大な被害が生じるという事態も生じています。つまり利水上、八ッ場ダムの必要性はすでに失われ、治水上はダムより緊急度の高い、優先すべき対策が考えられていない、ということです。利水の議論は他に譲り、治水について考えます。

 そもそも、ダムはその上流に降った雨しか貯めることができないギャンブル的な治水対策であり、また下流に行く程洪水を減らす効果、つまり川の水位を下げる効果は薄まります。そんな頼りにならない対策ではなく、弱い堤防を補修するという直接的な効果のある対策を優先すべきではないでしょうか。この報告書でも、堤防の安全性に問題があるとか、3月11日の災害を踏まえて、下流の高潮対策の重要性は高いとか書いておきながら、なぜ堤防を中心とする河川改修ではなく、ダムなのかが示されていません。脆弱な堤防のそばに住む人からすれば、ダムなんか造っている場合じゃない、早く堤防改修して人命・財産を守ってくれ、と叫びたくなるのではないでしょうか? 

 先ほど八ッ場ダムが必要だと話された方もいましたが、先に堤防の改修をするべきではないかと思いました。そうした中で、ダム事業費と反比例するように河川改修費は減り続けているのです(スライド1)。この報告書でも、「決壊しない堤防」、「決壊しづらい堤防」については、「利根川の長大な堤防については、経済的、社会的な課題を解決しなればならない」として代替案の検討対象からはずしています。本来重要な治水対策は、まずは堤防強化、それに河川掘削、この夏の新潟洪水でその有効性が確認された、水田を含む遊水池など、直接的な効果が見込めるものではないでしょうか。「なるべくダムに頼らない治水への政策転換」というこの検証の理念からは、あまりにかけ離れた検証の実態という他ありません。

(最後の締めくくり) 河川行政ではいつまで、このような不合理なことが続けられるのでしょうか。ダムを造り続け、河川改修を怠る河川行政の現状は、原発推進に巨費を投じ、自然エネルギーへの投資を阻んできた原子力行政と同じ構図です。ついに起こってしまった原発事故により、原子力ムラにはひびが入ったかもしれませんが、河川ムラは八ッ場ダムを造ってしまえば百年安泰と喜んでいるように見えます。ですが、造ってしまった後で、徳山ダムのようにやっぱり水は要らなかった、大滝ダムのようにやっぱり地滑りが起こってしまった、ということにならないでしょうか? 今引き返せなかったら、3.11の時のように、私たちは無念の自責の涙を流すことになるでしょう。議論を闘わせてこそ、真実が見えてきます。八ッ場ダムの反対派も加えた、議論する検証の場がどうしても必要です。この検証の一からの出直しを、あらためて求めます。

~~

深澤さんにスライド資料もいただきまいしたが、ちょっと大きすぎたのでカット!(まさの)

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