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2011年12月16日 (金)

八ツ場ダム政策決定者達への問題提示(治水)

こちらに続く第二報です。

国土交通大臣 前田武志様
民主党政調会長 前原誠司様
八ツ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟会長 川内博史様

2011年12月15日
まさのあつこ(ジャーナリスト)

国交省回答についての問題<第二報 治水について>

部門意見と議員連盟等意見に対する国土交通省の考え方(2011年12月12日)を拝見しましたが、その回答には大臣諮問および中間とりまとめと整合していない点が散見されます。すでに各方面からの指摘があることと思いますが、「部門意見(4、5、6)」「議連等意見(八ツ場ダムの治水効果)」に対する国交省の回答に見受けられる問題点を指摘させていただきます。

国交省は回答において部門意見については「河川整備計画相当目標流量は17000m3/s」としてその考え方を説明し、議連等意見には「コストを最も重視する」「時間的な観点から見た実現性を確認することが必要」「10年後に最も効果を発現していると想定される案は「ダム案」と評価している」等説明されています。この前提には、「中間とりまとめ」第一章において「河川整備基本方針と整合性のとれた中期的な整備目標を持つ河川整備計画が定められ、その目標に対する治水安全度の確保と災害軽減を図るための事業が実施される」ことが置かれています。

しかし、利根川水系では1997年河川法改正以来、河川整備計画が未策定なままです。関東地整は2006年11月に策定作業を始め、2007年1月10日から関係住民の意見募集を行い、公聴会を2,3月に行いましたが、募集意見に対する回答は2008年5月23日でした。その後、手続は止まったまま5年が経過しています。したがって、八ツ場ダムを検証するにあたっては、克服すべき問題が多々存在しています。

1. 八ツ場ダム事業の根拠となる河川法に基づく法定計画が存在していません。法定計画を定めるよりもまえに、「ダム検証」において先に「目標流量は17000m3/s」が提示され、もしも八ツ場ダム事業が推進されれば、ダムありきの目標流量が固定化することとなり、本末転倒です。河川整備計画があってのダム事業であり、この手続の転倒を行政手続として許容することは今後の河川行政に許されざる禍根を残します。なお、この点を関東地整局の有識者会議座長に指摘した際には、「関心がない」との回答でしたが、国土交通大臣、民主党政調会長、議連会長におかれましてはけして「関心がない」で済まされるべき問題ではありません。

2. 1997年改正法には「経過措置」として、河川整備計画が策定されるまでは、旧法に基づく「工事実施基本計画」を見なし河川整備計画と見なす規定がありますが、利根川水系の場合は、一度は整備計画策定作業が始まり、今回、突然提示された「河川整備計画相当目標流量は17000m3/s」とは違う「15000m3/s」が関係資料に提示されていました。その不整合についても説明がありません。

3. 当時の河川整備計画原案は、関係市町村への照会も行われています。当方の取材により、この案に含まれていたダム再編事業に伴う下久保ダムの水位低下に対し、観光などの観点から藤岡市が反対していたため、成立の見込みもなかったことが判明しています。今回の「河川整備計画相当目標流量17000m3/s」もしくは「15000m3/s」とダム再編成事業との関係も、自治体や流域住民に知らされていないのであれば、現行河川法に反しています。また、下久保ダム建設や運営に協力してきた自治体との合意形成を軽んじてきた関東地方整備局による不作為で、すでに法改正から14年、策定作業開始から5年が経過してなお河川整備計画が存在しない状態はいつまで続くのでしょうか。ダム事業を決定する以前に、河川整備計画を確定させることが先決ではないでしょうか。なしくずしで、国内最大級河川の河川整備計画が既成事実化されることは、河川法史の汚点となります。

4. 「時間的な観点から見た実現性を確認することが必要」とされていますが、法定計画策定における時間管理の実績を見ると、ダム建設に固執するあまり、時間管理を忘れ、住民の自助、共助といった新しい治水への発想転換が疎かになったと言わざるを得ません。今回のダム検証について第一報でお知らせした利水に関する問題でも後ろ向きであるのは同様にダム固執によるものではないでしょうか。

5. 実現性の観点からは、もう一つの問題があります。今後の治水対策のあり方に関する有識者会議(2011年12月1日開催)配付資料0「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書」(*P.149)では、八ツ場ダム事業の予定地では未買収地が1割以上あります。しかし、現地で聞き取り調査を行えば明白である買収の困難な共有地等があるという重要な情報が欠如しています。記載の欠如が作為であれ、不作為であれ、このことは重大な問題を引き起こすことが予見されます。特定多目的ダム法で定めた基本計画では工期は「2015年」となっており、この未買収地と本体着工の関係を考えただけでも、基本計画変更の必要性は明らかです。「10年後に最も効果を発現していると想定される案は「ダム案」と評価している」と回答したことを見ても、あと3年では完成しないことは国交省でも予見されていると考えられます。また工期遅延3年と増額が記され(*P.76)、事業費増額分も記されています。しかし、関係自治体はこぞって増額には反対をしており、その場合は、基本計画の変更は成立せず、八ツ場ダム事業の根拠は河川法にも特定多目的ダム法にも存在しなくなります。
*http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/dai20kai/dai20kai_siryou0.pdf (←重いです)

以上の点から、八ツ場ダム検証は、検証の前提が整っていないと言わざるを得ません。それは、1997年以来の関東地方整備局による怠慢と不作為によるものであり、ダムにたよらない新しい治水概念に到達する以前に、最低でも1997法に基づく手続を完了させることが必要であると考えます。

追伸 

国土交通大臣 前田武志様
公文書管理法第2条4項「この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう」に基づき、この文書を「取得した行政文書」として、組織として共有管理してくださいますようお願い致します。

民主党政調会長 前原誠司様
ご多用と存じますが、第一報と合わせて、政策調査会の部門会議において、この問題点についてのご議論をお願い致します。

八ツ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟会長 川内博史様
ご多用と存じますが、第一報と合わせて、議連等において、この問題点についてのご議論をお願い致します。

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