ハズされていた最安値の八ツ場ダム代替案
「八ツ場ダム検証」がいい加減だったことを表す分かりやすい例が登場したので紹介する。
東京都よ、水が足りないというなら川崎市から買え、という話、
(関東の地理に弱い人のために解説すると
神奈川県川崎市は多摩川を境に東京都と接している。)
大川隆司弁護士によるWinWin?の提案である。
YouTube映像(カワハラさん撮影)←13分なので全部見てください。
2011年9月13日に、「八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」 が開催された際、群馬県の大澤知事は「評価を見ますと八ッ場ダム案が最も有利であるということで、これは妥当な評価であると思っております」(P.8)と述べた。
大澤知事のいう「八ツ場ダム案が最も有利」が何を意味するかは、検証の報告書で記録されている。利水についてはダムを含む17もの代替案(PDF)が出された。
どれもバカバカしく非現実的で高価な代替案だった。たとえば
富士川からの導水(水単価500~1000円)(p.4-136)や
千曲川からの導水(水単価1500円)(p.4-137)と比較して
千曲川導水は高いから選択肢から落ちて、有力候補(~ ~;)として富士川導水が残った。静岡県から、神奈川県を飛び越えて、東京、埼玉、千葉、茨城、群馬に導水するという代替案(有識者会議のスキーム通り)だ。
しかし、そんなに水が本当に欲しいなら、Play Back!Play Back!(山口百恵風に!)静岡から野や都会を越えなくても、隣の川崎市から水を買えばいいという話。
つまり、すでに開発され、持っているだけで使われていない最安値の選択肢が、16もある代替案に入っていないという時点で、この検証はインチキだったということが分かる。
「要りもしないダムを作るツケは、毎日毎日水の消費者にかかっている。
30円、40円で使えるはずの水が(使いもしない水のために)120円払う。
東京が要るというんだから、川崎市は売りに行きなさい!」
というのが大川弁護士の話だ。
高くても120円で済む八ツ場ダムの代替案を、
なぜ千曲川1500円と比較したのか?これ以上は言わなくても皆分かるはずだ。
http://www.youtube.com/watch?v=DL2qGqZBEuY&feature=related
YouTube映像 13分なので全部見てください。
ちょっと頭を働かせれば、詭弁でしかない推進理由はすでに紹介したように他にもあった。
● 利水には参加していない栃木県の知事は、「特にこの八ッ場ダムにつきましては、昭和22年のカスリーン台風を契機に建設が進められてきたものであります。本県におきましても、352名の尊い人命を失っています」 (PDF p.11) とあたかも八ツ場ダムがあれば352名は亡くならずに済んだかのように発言したことはこちらで述べた。その発言は、将来同じような被害を出さないために重要な栃木県民の財産を無にする。水害の記録はソフトな治水対策として何よりも役に立つ。人々の記憶という無形財産を有形財産として止めた最も貴重な財産だ。大雨が降ったときにどこが危ないかを知らせてくれるハザードマップに等しい。(昭和二十二年の記憶を持っているご年輩の方々もまた地域社会の財産である。この半年でお二人、当時の記憶を持っている方のお話しを伺うことができて実感した)「昭和二十二年水害の概要」(栃木県) を編纂した当時の栃木県職員の労力や給与をも無にする行為だ。
● 八ツ場ダムがあればさも助かったという虚偽<が言いすぎなら本人も誤解している>発言をするのは東京都知事も同様だった。2010年8月6日(金)の東京都知事定例会見 では次のようなやり取りをした。
【知事】それは八ツ場の問題に当然関係あることですから。ただ、数年前に東京では、二百十何日ですか、取水制限したんです。それ1回のことで、それで済んで、当分ないだろうという予測で済むのか済まないのか。あの時は、学校のプールも使えなくなったし、東京のビール会社も生産を停止した。もし八ツ場が仮にあったとしたなら、17日で済んだ取水制限が、117日、続いたんです。こういうものも、1つの公の水路に対する大事な前提条件じゃないかと私は思いますけれども。
あなたはどういう立場なの。
【記者】ダム問題をずっと報道しているダムジャーナリストですが、いつもビールの工場が停止されたということをおっしゃるのですけれども、確認しましたところ、知事がおっしゃっていたその時期に、ビールで生産ができなくなったというところは、ほとんど見つからなかったということ……。
【知事】そう。僕は東京で2つの会社が、製造を停止じゃないけれども、生産量を従来よりも低めたという話は聞きましたけれど。
【記者】はい。あと、プールにしても、それで人命が失われるというようなことではなかった……。
【知事】もちろんそうです。
【記者】飲み水、あるいは生きていくための最低限のものという、ナショナルミニマム(最低限度の生活水準)、あるいはローカルミニマム(極小値)というものは、見直し……。
【知事】ただ、八ツ場の場合、行ってみて分かるでしょうけれど、あそこまで事業が進んでいるわけです。しかも、利水の問題だけじゃない。治水の問題もあって、埼玉(県知事)の上田(清司)君の話なんか聞いたらいいと思うけれども、堤防が非常に老朽化して、どうどうと浸水してきて・・・・(後略)
と、東京の水の話をしていたら、埼玉の堤防の話にすり替わってしまったくらい本当は根拠薄弱な話である。そしてもちろん、知事が言った数年前に取水制限が117日続いた記憶を持っている都民もほとんどいないだろう。あったとしても気づかない程度に水圧を少し下げる程度の取水制限なのである。
だから、大川弁護士も言ったように、「もし、本当に必要なら」という仮定の話であり、二十三重に、ひどい比較、ひどい検証である。「妥当な評価である」と大澤知事が今後も言うなら、その前に、何故、川崎市の水と比較しなかったのか、自分の頭に手を当てて自分の胸に問うて欲しい。
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